小学校 図画工作

小学校 図画工作

「あちこちクリエイター」(第5学年)
2021.04.14
小学校 図画工作 <No.044>
「あちこちクリエイター」(第5学年)
兵庫県尼崎市立上坂部小学校教諭 河野愉平

1.題材名

「あちこちクリエイター ~サーボモーターの仕組みから~」工作に表す

2.目標

Micro:bitでプログラミングしたサーボモーターの動く仕組みを使って,表したいものを考え,材料や用具の使い方を工夫して表す。

3.評価規準

【知識及び技能】
・あちこち動くサーボモーターの仕組みを使い,楽しく動くものをつくることを通して,動き,バランスなどを理解している。
・表したいことに応じて身辺材などを活用するとともに,前学年までの材料や用具についての経験や技能を生かして,表し方を工夫して表している。

【思考,判断,表現】
・動き,バランスなどを基に,自分のイメージをもち,仕組みを動かして感じたことなどから,表したいことを見付け,形や色,材料の特徴,構成の美しさなどを捉え,どのように主題を表すかについて考えている。
・自他の作品の造形的なよさや美しさ,表現の意図や特徴,表し方の変化などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を深めている。

【主体的に学習に取り組む態度】
・つくりだす喜びを味わい主体的にサーボモーターの仕組みを使って,楽しく動くものをつくったり鑑賞したりする学習活動に取り組もうとしている。

4.題材について

(1)題材設定の理由
 プログラミング学習が必修化され,1人1端末が整備される中,子どもがコンピューターを学習に用いる場面が多くなってきた。また,国際的にみてもSTEAM教育の重要性も指摘されている。しかし,プログラミングをするだけで終わってしまい,教科の見方・考え方に迫るような実践は多くないと考えている。そのような状況の中で,プログラミングと図画工作科がお互いを高め合うような学びをねらった。工作に表す領域には,動きを生かして表現する機構工作がある。サーボモーターのプログラミングと合わせれば,そのような学びに迫れるのではないかと考え,この題材を設定した。

(2)児童について
 高学年の子どもたちは,今までにたくさんの材料や用具と出会い,多様な造形活動を経験してきている。その経験の中から,表したいことに合わせて表現方法を選ぶことができるようになっている。論理的に考える力も身についてきており,仕組みをうまくいかして表現することにも意欲的なことが多い。また,社会的な話題や他教科等で学習したことを作品に取り入れる表現等も表れてくる。このような要素から,子どもたちの多様な表現が予想されるので,思いついたことができるように支えたい。

(3)指導に当たって
 子どもたちはプログラミングしサーボモーターを動かすことが初めてなので,機器やアプリの扱いについては丁寧に指導するようにした。動かせるようになってからは,十分に考える時間を確保したり,手を動かして考えたりできるような環境を設定した。また,友人とのやり取りの中での,表現の深まりを期待するため,自然な交流が生まれるように動線を工夫した。今まで経験してきた材料や用具が思い出されるように声かけしたり,思い描いた動きになるようにプログラムを整理したりと,1人1人にあった柔軟な指導を心掛けた。

5.準備物

教師:Micro:bit,サーボモーター,ストロー(φ4mm),マスキングテープ,紙コップ,小さめの箱,紙皿,色画用紙,カラーペン,はさみ,カッターナイフなど
児童:個人用PC,筆記用具

6.指導計画(全4時間)

(1)Micro:bitをプログラミングして,サーボモーターを動かしながら表したいことを考えよう。(1時間)
(2)材料の使い方やサーボモーターの動かし方を工夫しながら,思いついたことを表そう。(3時間)

7.活動の様子

(1)Micro:bitをプログラミングして,サーボモーターを動かしながら表したいことを考えよう。(1時間)

①Micro:bitを用いたプログラミングのやり方を知り、サーボモーターを動かす。

子どもたちは初めてのプログラミングだったので,やり方をまとめた資料やその他必要な情報をPCに送って共有した。また、プログラムのダウンロードや各機器の接続といった作業も必要なので,ゆっくり確実に進めることを大切にした。サーボモーターが動いたときは「やった。動いた。」と喜び,表現への意欲の高まりがみられた。

②サーボモーターの動きから表したいことを考える。

「ええ~と、どうしようかな…」
じっと,サーボモーターの動きを見つめる子,とりあえず動く部分に色画用紙を貼ってみる子,土台の種類や土台の貼り付け方をいろいろ試す子。それぞれがそれぞれの考え方をしていた。そのうちに、「これ、○○みたいだな」と考えが浮かんできたようだ。

③友人と考えを共有し,自分の考えを深める。

「私はこういう感じで表そうと思ってる」「なるほど、とってもいいね!」
しばらくすると,友人の考えが気になってきた様子で自然と交流が始まったので、「もっと交流していいよ」と全体に声をかけた。自分の言葉で説明したり,友人の考えを聞いたりすることで,さらに考えを深めていった。

(2)材料の使い方やサーボモーターの動かし方を工夫しながら,思いついたことを表そう。(3時間)

①表したいことに合わせて、材料や用具を工夫してつくる。

今回は電子機器が作品に使われるので,接着は粘着力の低いマスキングテープを用いた。
「こうしたいんだけど……どんな材料を使おうかな」「割りばしとか使えるかも」。
基本は色画用紙を使うが,子どもたちは今まで積み上げてきた材料の経験を生かしながら活動していた。材料の形や色を工夫して,自分の表したいことに迫っていった。

②製作途中の作品の動画を撮って共有し,鑑賞する。

この題材は動きを生かした表現が重要なので,学習支援アプリを使い,動画を撮って共有し,鑑賞した。製作途中で鑑賞することで,他の表現から刺激を受け,自分の考えが広がったり深まったりすることをねらった。ICT環境がないときは,鑑賞するのに手間取ったり時間がかかったりしていたが,この方法によって,スムーズに鑑賞することができた。副次的な効果として,自ら動画を撮ることで,自分の作品を客観的に見ることにもつながった。

③材料やサーボモーターの動かし方を工夫しながら,思いに合わせてさらにつくる。

「みてみて~。こんなのできた!」
表したいことが形になってくると,モーターのプログラムを工夫する。そのプログラムを試しながら,表したいことをさらにつくっていく。図工のいい所とプログラミングのいい所がうまく響き合って,子どもの表現を深めていた。

「ホームランって,文字が出るようにしたよ。」
Micro:bitはサーボモーターの制御以外にも,LEDを光らせて絵や文字を表示したり,音楽を流したりするなどいろいろなことができる。モーターを動かすプログラムしか伝えていなかったが,いつの間にか作品にそのような表現を取り入れる子も表れ始める。ただそのようなプログラムに熱中しすぎて,モーターの動きを作品にいかすことがおろそかにならないように,「へぇ!文字も表示できるんだね」など,個別に価値づけるようにした。

④できた作品を鑑賞し,学習活動をふりかえる。

自分の考えた通りにモーターの動きをプログラムできるので,作品に多様性があったと感じる。また動画を撮って共有もしたが,最後は,実際の作品を見て回った。画面ではなく,実物を見ることで,立体的な感覚が働き,作品の迫力やかわいらしさをより感じることができたようだ。

8.作品

島に取り残された人。SOS!助けて~

出動!ドクターヘリ

アウト!ワニがおそってくる!(Micro:bitでプログラムしたゲームでアウトになるとワニに襲われる。)

打つ!ウツ!リアルな野球場。(野球場の音楽が流れて,ボールを打つ。その後,ヒットという文字が表示される。)