学び!と社会

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こんなときどうしよう?④ コロナ禍でどうやって話し合い活動をおこなえばいいの?
2022.02.28
学び!と社会 <Vol.06>
こんなときどうしよう?④ コロナ禍でどうやって話し合い活動をおこなえばいいの?
東京都中野区立緑野小学校副校長 横山明

1 コロナ禍での話し合い活動の模索

 2020年度、新型コロナウイルス感染症による感染拡大を防止するため、全国の公立小中学校が一斉に休校しました。それが明けてしばらくしたある日、区教育委員会から問い合わせがありました。
 「今年度研究指定校の2年目ですが、研究発表を行いますか?それとも、来年度に回しますか?」と。私は、今年度のメンバー(教職員)で発表までもっていかないと、研究の内容がまとまらなくなる可能性があることを懸念して、校長に相談し、「今年度行います」と回答しました。研究主題は「未来社会を見据えた『協調的な学び』の創造」です。話し合い活動の活発化による「深い学び」への到達をねらいとしており、話し合い活動をすることが前提です。しかし、グループでの話し合い活動は当時のガイドラインではあまり好まれない状況でした。どうすればよいか。私たちは大変悩みました。
 指導主事から、「濃厚接触にあたらなければ、活動できます」とのご助言がありました。そこで、マスクを着用して、15分未満の話し合い活動を計画しました。
 また、全校児童に一人一台ずつのタブレット端末が配布される前ですが、80台のタブレット端末と各担任に指導者用タブレット端末がありました。それらを活用した新しい形の話し合い活動ができないか。つまり、情報共有を可能とするアプリを駆使してまるで模造紙にみんなで書き込むようにして、話し合い活動にあたる情報の交流ができないかと考えました。

2 濃厚接触にさせない話し合い活動の工夫

1.話し合い活動の意義は

・「周りの人たちと共に考え、学び、新しい発見や豊かな発想が生まれる授業に」
どのように授業改善を図るかを述べた文部科学省の「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」より

・「子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める『対話的な学び』が実現できているか。」
『対話的な学び』について説明した文部科学省資料「新しい学習指導要領の考え方―中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ―」より

 対話的な学びとは、友達と話し合ったり、協働作業をしたりすることで、自分の考えを広げ、深めていくための教育活動を指しています。
 グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境が大きく変化する、予測困難な時代を生きる児童にとって、「何を学ぶか」だけではなく、「どのように学ぶか」が必要となります。そして、一つひとつの学びを大切にし、各教科等を通じて得た力が将来にもつながるように、学ばせなくてはいけません。これからの時代を生きる上で、児童にとって必要なものの一つが話し合い活動なのです。

2.従来の話し合い活動をする際の工夫

 コロナ禍において、どのようにすれば話し合い活動ができるのでしょうか。指導主事からの助言を踏まえ考えました。濃厚接触者を作らなければ、話し合い活動は実施できるので、次のように校内での取り決めを行い、話し合い活動を増やしました。

<図1 従来の話し合い活動をする際の工夫>

①話し合い活動は15分未満とする。

・指導計画に表した。

②少人数のグループ活動の際、机(イス)の配置を工夫する。
※右図のように飛沫が相手にかからないように机の配置を工夫する。原則、机の幅の分を離れるようにした。

③ノートでの交流

・付箋を用いて、感想を伝え合ったり、助言したりした。

④思考を可視化するツールの活用(話し合う際などに、効率よく意見を交流し、考え等を整理する際に活用した。)

・イメージマップ→意見や考えを広げる際に有効
・ピラミッドチャート→具体化、構造化
・Yチャート→多角的に見る、分類  など
※これらについては、https://www.nichibun-g.co.jp/tools/c-sha_thinking/もあわせてご覧ください。

⑤知識構成型ジグソー法(*1)の活用

・本校の研究の肝となる学習方法だった。
(時間の制限のある中、より深い学びにつなぐため)

3.ICT機器の活用

 その当時の本校の環境としては、全校で2クラス分(80台)のタブレット端末がありました。また、各学級に指導者用タブレット端末や電子黒板、実物投影機が配られていました。そこで、情報教育推進リーダーを中心に、できそうなものを情報共有し、できる人から挑戦し、それを校内研究会の実証授業の際に報告しました。ここで活用したのが、図2①のJamboardでした。

<図2 本校で情報共有を可能とするアプリ(ソフト)>

ソフト

概要・特徴

操作ロック
・一覧表示

料金

URL

①Google Jamboard

デジタルホワイトボード。描画や付箋、図形、Google画像貼付等の機能。50名まで共同編集可能。
※50名まで可能な場合もあるが、動作不安定になる可能性がある。

×

無料

https://jamboard.google.com

②スカイメニュークラウド

学習活動端末支援Webシステム。発表ノートやグループワーク、ポジショニング(※1)、QRコード、教材・作品共有、シングルサインオン(※2)、健康観察等の機能。
※1:自分の意見がどこにあるかを色の点などで表現し、意見の分布などを一覧可能。
※2:Googleアカウントなどでログイン情報を連携。

有料

https://www.skymenu.net

③コラボノートEX

協同学習支援ツール。個別学習・共同学習切り替えやシングルサインオン等の機能。思考ツール等のテンプレート多数。

有料

https://www.collabonote.com

④ロイロノート

クラウド型授業支援アプリ。カードの共有・蓄積やテスト・アンケート、Webフィルタリング等の機能。思考ツール等のテンプレート多数。

有料

https://n.loilo.tv

⑤Googleスライド

プレゼンテーション作成ツール。オフィスのパワーポイント同じように使用できる。100名まで共同編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/presentation

⑥Googleドキュメント

文書作成ツール。オフィスのワードと同じように使用できる。100名まで同時編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/document

⑦Googleスプレッドシート

表計算作成ツール。オフィスのエクセルと同じように使用できる。100名まで同時編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/spreadsheets

2021年11月1日現在

 4年生は、社会科の水の学習を終えた後、総合的な学習の時間「わたしたちの水~水からつながる世界」の学習で、世界では水が得がたい存在であることなど、水自体についてや、世界の水事情などの各自が調べたい内容について調べました。その後、調べる内容が同じメンバーで集まりグループを構成しました。そのグループでJamboardにまとめました。最後は、探究したことをGoogleスライドで作品を作成し、電子黒板に投影して発表しました。教員は、指導用タブレット端末で、Googleドライブに格納してある作品を点検し、指導内容があれば、付箋の機能を用いて修正をさせました。この単元を校内研究会の実証授業で情報共有し、他の学年にも広がっていきました。

3 一人一台タブレット端末が配布された以降の取り組み

 4月以降、区教育委員会よりiPadが全校児童に貸与されました。情報教育推進リーダーは校内のiPadの活用事例を、「iPadを活用した校内事例」としてまとめ、活用の推進を図りました。その中で、情報共有を可能とするアプリ(校内事例では「コラボレーションツール」としている)として、①や②、④などを挙げています。下図はその一例です。

アプリ

内容

①Jamboard

4年生 総合的な学習の時間「わたしたちの水」

②コラボノートEX

2年生 生活科 野菜の観察記録
・児童が写真を撮り、教員が用意したシートに貼って、一般化を図る際の資料とした。

④Googleスライド

2年生 図画工作「おおきく そだて、びっくりやさい」作品ポートフォリオ
・児童が撮った写真を貼り付け、ポートフォリオとしてまとめた。

 まとめた事例には社会科がありませんが、4年生で「自然災害からくらしを守る」において、妙正寺川の普段の様子と台風時の濁流となっている様子をGoogleスライドに貼り付け、学習問題作りに活用したり、6年生「長く続いた戦争と人々のくらし」で、焼け野原の東京と復興した東京を比べる際に用いたりする予定です。また、知識構成型ジグソー法(*1)を行うため、三つの内容に合わせた資料をGoogle Classroomに貼り付け、エキスパート活動(*2)で、Jamboardやコラボノートで情報を整理し、それを基にジグソー活動(*3)で情報を交流させて、クロストーク(*4)で学習問題に対する考えを話し合うこともできます。
 一人一台のタブレット端末を活用すれば、手元で、カラーで、必要に応じて拡大もできることから資料提示にはとても有効だと思います。また、話し合いの時間を十二分に取りたいときは、話し合いの様子を教員が板書にまとめ、それを撮影し、印刷・配布したものを貼らせることも可能です。
 一方で、学習に見合う情報共有を可能とするアプリの適切な使用場面や使用方法がイメージできていないと、無駄な時間が生まれたり、ICT機器を活用することが目的化してしまったりすることがあります。

4 最後に

 教員の仕事は、終わりがなく、いくらでも仕事が見つかります。まじめな教員ほどそうです。特に、若手教員は、学級事務や校務分掌、生活指導などやることが多く、教材研究を行うので精一杯かもしれません。本校の教員もよく頑張るなという場面を見かけます。しかし、多少余裕のある長期休業日や計画的に仕事を行うことで生み出した時間を使って、<図2 情報共有を可能とするアプリ(ソフト)>などを研究し、トライアンドエラーを繰り返しつつ、習熟を図れたら、授業が充実してくると思います。そして、情報共有を可能とするアプリのよりよい活用場面を見いだし、「深い学び」に到達できるよう授業改善を支えていきたいと考えています。

*1:本校の昨年度の研究の内容、その手だての一つである学習方法である。「人に伝えたい状況」や「自分の考えが相手に受け入れられる状況」、「友達と考え、自分の考えが良くなる状況」が設定されるため、「協調的な学び」(*5)を教員が引き出すために有効な方法。
*2:元々のグループからテーマを選択して、専門的に個々に学ぶ。その後、同じテーマで学んだ人同士で情報を共有、詳しく説明できるようにする活動のこと。
*3:エキスパート活動で詳しくなった学びについて元々のグループで交換、統合する活動。
*4:3の段階で得た内容を学級などの全体で情報共有、学習問題に対する考えを出し合う活動。
*5:互いに考えを伝え合うことで、グループだけでなく、一人ひとりの考えが、よりよい考えになっていく学習のこと。「主体的・対話的で深い学び」につながるものと捉えている。

令和元・2年度 中野区教育委員会「学校教育向上事業」研究指定校 研究主題「未来社会を見据えた『協調的な学び』の創造」リーフレットより