学び!とPBL

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台風19号、こんな時だからこそ!
2022.05.20
学び!とPBL <Vol.50>
台風19号、こんな時だからこそ!
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.進化する高フェス

図1 実行委員募集のポスター 昨年の高校生フェスティバル(高フェス)の成功体験を過信して、スタート段階で大きく出遅れてしまいましたが、遅ればせながらも動き出せば、前年の反省などを活かしたFCN(福島市を創る高校生ネットワーク)チームの動きには目を見張るものがありました。
●コアメンバーたちは、自分の高校の先生方と交渉して、実行委員募集のポスターを貼らせてもらったり、ビラを配布したりしました。「前年度の高校生フェスティバルを見て、こんなこと自分でもやりたいと思っていた」といった高校生が実行委員をやりたいと、あちこちの高校から集まってきました。特にコアメンバーの所属する高校からはまとまった数の希望者が集まり、頼もしい限りでした。
●市内高校からの参加演目も増え、高校生たちの探究活動のブースも新たに加わりました。中でも市内のラーメン店をインタビューして回ったポスター発表は圧巻でした。

図2 探究活動ブースのポスター

●昨年同様、札幌新陽高校から参加してもらうことになり、台湾の立人高級中學の生徒からメッセージももらい、外国語のできる帰国子女の実行委員が日本語に訳してポスターを作りました。
図3 FCNロゴのオブジェ●工業高校の生徒たちは、こんなオブジェを作って会場に飾りたいと、設計図を書いてきました。予算や手間や飾り方などを総合的に考え、「FCN」のロゴを立体的なイルミネーションとして制作することになりました。前年の球体のイルミネーションを一歩前に進めた形となりました。
●市内300人の高校生に独自にアンケート調査を行い、どうして大学に進学するときに福島県を離れてしまうのか、その理由を明らかにしました。
●前年、東京の高校生たちと一緒に行ったワークショップ「高校生の社会参加についての熟議」は、今年は「10のFを実現するための作戦会議」に発展させ、すべて生徒の考えで進めることになりました。「10のF」とは、昨年ロゴを作るときに考えた、理想の福島市を形容したFから始まる10のキーワードのことです。これを実現するために、高校生は何ができるのか、というその「アクションプラン」を考える、というものです。これはかなり困難が予想されるため、事前に何度かメンバー内でリハーサルを行いました。

図4 高校生300人のアンケート図5 アクションプランづくりのリハ

2.台風19号直撃!

 そのようなときでした。フェスティバル直前の10月12日に上陸した台風19号が猛威を振るい、福島県内で30人の死者も出るほどの被害がもたらされました。福島市の中央部を流れる阿武隈川も氾濫し、市内でも大きな被害が出ました。
図6 洪水に飲み込まれた近隣の町 フェスティバルを開催するかどうかの判断が迫られ、急遽コアメンバーが集まり議論しました。その結果、このようなときだからこそむしろ若者ががんばっている姿を市民に見せることが大切、実行委員から復旧ボランティアを派遣し、募金活動も行うことで理解してもらうということになりました。「できない理由を並べ立てるのではなく、どうしたらできるようになるか知恵を絞る」という東北スクールの教訓がここでも活かされました。高フェスの会場には次のようなメッセージを掲げることになりました。

台風19号で被災された方への募金のお願い
 この度台風19号によって被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
 10月12日に関東・東北地方を中心に、台風19号が多大なる被害を及ぼしました。この台風で亡くなった人は、福島県で30人、宮城県で19人、神奈川県で14人、栃木県と群馬県でそれぞれ4人、長野県で3人、岩手県、茨城県、埼玉県でそれぞれ2人、東京都、千葉県、静岡県、兵庫県でそれぞれ1人となっています。(……)

こんな状況下でなぜ「高フェス」を開催したか
 いまだ完全に復旧しているところは少なく、ライフラインや住宅浸水や交通機関に被害が残っているところは多いです。そんな中でこの「福島市高校生フェスティバル」を開いていいのかどうか、私たちは真剣に議論しました。その結果、むしろこんな時だからこそ、私たち高校生の若く、力強いパワーで1人でも多くの人に元気を与えたい!という強い思いで、開催を決断しました。

私たちの力でできること──災害ボランティアに参加して
図7 高フェス中止か、決行か 今月20日、私たちのメンバーが福島市でも被害があった、郷野目に災害ボランティアに行きました。1週間以上経つ今でも、川から流れてきた泥が残っているところ、浸水した家がそのままのところがたくさん残っていました。
 ボランティアには、なんといっても体力が必要だということを実感しました。何度はいてもなくならない泥には本当に心が折れそうでした。
 このボランティアを通し3つのことを学びました。
 ①他人事ではなく自分事に捉えるべきということ。(……)自分には何ができるか考え、行動に移すことが大切です。年齢に関係なく、今ここにいるあなたが動き出すことで、同時に動かされる人が必ずいることでしょう。その小さな輪が広がればやがて大きな輪となり、それは大きなパワーとなります。
 ②備えあれば憂いなしであるということ。(……)きっと今回の災害は、3.11の経験から、各家庭で非常持ち出し袋の準備など長期的な準備、お風呂に水を貯めるなどの短期間でできた準備ができた人は多かったのではないでしょうか。(……)
 ③1人1人が回りでどのような被害を受けているのか知るということ。(……)