学び!とPBL

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福島市高校生フェスティバル2019
2022.06.21
学び!とPBL <Vol.51>
福島市高校生フェスティバル2019
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.3人からのスタート

図1 前夜祭 イルミネーションに集まる人々 高校生フェスティバル2019を、高校生の言葉でふり返ってみましょう。まずは、副実行委員長の言葉です。この年の実行委員は3人からスタートしました。

 目的が明確になるほど、本当に3人では何もできないと実感し、どうしたら仲間が集まるか本格的に考えました。普段高校生が使うSNS、特にInstagram、LINEに目をつけたところ、最初はとても手こずりましたが、コツをつかんでからはあっという間に3人から8月には40人に、10月には60人以上の規模に増やすことができました。
 8月中旬には企画が大まかに決まってきたのですが、中身をよく見ると目的にフィットしていない企画になっていて8月後半に目的を再確認した後、新しくまた1から企画案を組み立てることになってしまいました。そのために、改めて目的の大切さや、私たちが高校生フェスティバルで何を伝えたいのかをメンバー全員で確認することができました。

2.それぞれの特技を活かして

図2 自分たちで設計し作り上げたロゴ 次は、初参加の工業高校の生徒の言葉です。作図やものづくりが得意な高校生です。

 当初は「材料さえ揃えばすぐにできる」と楽観視していました。ですが実際に作業に移ると、材料が変形しやすい素材で寸法通り行かなかったり、構造上組み立てが難しかったりとなかなか一筋縄では行かず苦戦をすることも多く、その都度先生や大学生の方々からアドバイスや協力を頂き何とか完成にこぎつけることができました。
 高校生フェスティバル前日の試験点灯の際、通りかかった人々がイルミネーションにカメラやスマートフォンを向けている姿を目にし、大きな達成感と喜びを感じました。
 今回は限られた期間の中で0から形にする創造力そして実行力、問題に取り組む解決力、1つのことに対して皆で取り組む団結力、突然のことにも臨機応変に対処できる対応力などオブジェを通して様々な力を身につけることができたと実感しています。また、ものづくりを学ぶ者として作り上げることの難しさだけでなく出来上がった“もの”が人々に与える感動や喜びといった学校の授業だけでは学べない本質的な部分についても大きな学びとなりました。

3.高校生がまちづくりを考える

図3 クラウドファンディングで作ったTシャツ 「高フェス2019」の目玉に位置づけていた「福島市を盛り上げる作戦会議」の責任者の言葉です。彼の本気度には目を見張るものがありました。

 この会議はどのように行っていくかの全体共有がうまくいかず、当日ギリギリまで話し合う状態でした。前日には、当日スムーズに進めることができるように北海道の高校生と一緒に10のFを一つ一つグループ分かれて土台の部分を考えました。ですが、なかなか意見が出ずうまく進みませんでした。しかし、北海道の高校生が福島市に住んでいる私たちにはあまり気づかないことを出してくれて、客観的に物事を考えることが重要だと感じました。「福島市民は優しい」や「過ごしやすい」など、普段当たり前のように生活している私たちには分からないことを教えてもらえた良い機会になりました。
図4 福島市を盛り上げる作戦会議の様子 そうして迎えた当日、実行委員の高校生だけではなく来場していただいた方々にも参加していただき一緒に考えてもらいました。最初は初対面ということや年齢の差のために、話すことを躊躇ってしまうこともありました。しかし、時間が経ち、話が盛り上がってくると、意見の交換も活発になり、とても中身の深い話し合いとなりました。その中で出た意見をいくつか紹介します。
Future…若者が自信や誇りを持てる街
Fun…自分も相手も楽しめるようなイベントがある街
Favorites…「田舎っぽさ」と「都会っぽさ」のバランスが取れた街
Fresh…残すベき考え方と若者の新しい考えを融合させた街

4.実行委員長の総括

図5 台風19号と大震災を関連付ける 最後が、実行委員長の総括です。このプロジェクトに中学生の時から参加し、5年間もこのチームを支えてきました。

 今年も「福島市高校生フェスティバル2019」が無事に開催されました。今回は、台風19号によって被害を受けた地域も多く、開催自体が危ぶまれましたが、こんな状況だからこそ高校生のみなぎるパワーを福島に届けたいという思いから開催に踏み切りました。フェスティバル開催に際して、当日に「あなたたちが福島を担ってくれれば未来は明るいね!」と言われたり、今年から始めたクラウドファンディングで「ネット環境がないのだが、どうにかしてあなたたちを応援したい」と言われたりととても感動し温かい気持ちでいっぱいになりました。あの1日は本当にあっという間でした。あれほどに長い時間を費やして考えた企画も、惜しいと思うほどに一瞬で過ぎ去っていきました。たとえ外から見てそれが「未完成」であっても、私たち自身が最後まで本気(ガチ)でやり遂げられたことは、私たち一人ひとりにとって大きな自信になりました。
図6 高校生のパフォーマンスに大きな期待 この活動で得られる経験は、机に向かって一生懸命に勉強したことと同じくらい、あるいはそれより大事なものだと私は感じています。未だにこの活動を自分の言葉で一言で相手に伝えられないのは難点ですが、私がこれまで約5年間にわたって携わってきた、続けてきた意味がここにあります。たしかに、みんな同じ授業をみんな同じように受けて、テストを受けて学力を身につけ、進学して、順調に人生を歩んでいくことも立派なことかもしれません。しかしその中で、自分が本当にやりたいと思って受ける授業、やりたいと思ってやったこと、自分で考えて失敗を恐れることなく挑戦すること、そのための仲間と出会うことができる機会はどれほどあるでしょうか。自分から進んでその機会を見つけなければ、それに出会うことは、私を含め現代の高校生にとってそれほど多くはないのかもしれません。私はこの活動を通して、自分のやりたいことを見つけ、仲間と出会い、それに挑戦し、大きく成長しました。この活動が本当に素晴らしいからこそ、より多くの人が携わり私たちを超える感動を味わってくれる人が増えることを願っています。

図7 今年も札幌の高校生がラストを飾る 実行委員の中には、不登校でずっと学校に行っていない生徒も何人かいます。彼らは、ここでなら自分らしさを発揮できると、終始がんばってくれました。それを学校側も理解し応援し、高校生フェスティバルの活動が少しずつ市民や行政にも受け入れられた証だと思います。