学び!とPBL
学び!とPBL
1.「生徒国際イノベーションフォーラム2020」に向けて
2017年に開催した第1期の「フォーラム」(Vol.28 生徒国際イノベーションフォーラム① を参照)は、生徒自身による「生徒共同宣言 Our Voice in 2017」(Vol.30 生徒国際イノベーションフォーラム③ を参照)を最終目標に設定して、学びを展開しました。それに対して、第2期は、加盟高校が増えたものの、ここまでの取組で「プロジェクト学習の学校への拡大」をめざして、高校生と大人とで研究会を重ねてきましたが、何のための「プロジェクト学習」なのか、全体として何をめざすのか、拡散していました。よって成果発表の中身らしき中身が見当たらず、この「フォーラム」を組み立てながら、中身をつくっていくしかありませんでした。震災からの復興を目的とした「OECD東北スクール」、そこからの学びを全国に広げようとした「地方創生イノベーションスクール2030(第1期)」、そしてその学びをさらに学校に落とし込もうと始めた「地方創生イノベーションスクール2030(第2期)」でしたが、震災からすでに8年も経っており、プロジェクト全体が目的を見失っていたと言わざるを得ません。
2.OECD東北スクールのスピリット
協力をいただいているOECDの教育スキル局からアナリストが来ており、その場で、大人のコアメンバーで意見交換をしました。「プロジェクトを通して、生徒がどのように成長したのかわからない」「プロジェクトとは無関係に、立派な実践をしている有名高校を集めても意味がない」「本当に必要なのは、地方の、様々な課題を抱えている当たり前の高校が参考になるような実践」「立派な実践のショーケースのようなものだったら、OECDは興味がない」、そして「東北スクールのスピリットがなくなってしまったのではないか?」と、これまで計画通りに進めてきたプロジェクトの、根底を揺さぶるような鋭い意見が出されました。確かに、知らず知らずのうちに、最終的に立派なものを並べればいいという、成果主義・形式主義に陥っていたことを痛感しました。
「どんな小さな実践でもいい、本当に困っている生徒や教師が一緒になって、課題を解決し、それによって双方が成長した、そんな実践を期待している」と言われ、教育実践の原点に返った思いがしました。私たちの代表の鈴木寬先生は、よく「大人はすぐに立派な形にしたがる、その実はみんな「板挟み」にあい「想定外」で苦労している。その苦労そのものが21世紀の学習だ」と言います。まさにその「板挟み」や「想定外」を乗り越える体験と知恵が必要だったのです。OECDラーニングコンパス(Vol.23 Education 2030と新しいコンピテンシーの定義② 参照)で言えば「変革を起こす力」の中の「対立やジレンマに対処する力(Reconciling tensions & dilemmas)」「責任ある行動をとる力(Taking responsibility)」に該当します。
3.「未来の学校」を考える
未来の教育、それも行政や大人ではない、生徒自らが学校や教育のあり方を考えることがとても新鮮で、本質的です。
終わりの挨拶で次のように述べました。「これから、来年の8月に向けて生徒国際イノベーションフォーラム2020をつくっていきます。世界の学校は様々な問題を抱えており、生徒も先生も苦労しています。OECD東北スクールが大震災からの復興をめざして、生徒と大人が協力して進めたように、これから学校や教育の問題をどうしたら解決できるのか、みんなで考え、どんな小さなことでもいいから実践してみましょう。8月までに立派な実践などしなくてもいい、中途半端でも、問題解決の糸口になればそれで構いません。ここから再起動です!」
しかしちょうど同じ頃、海の彼方中国から始まった「暗い影」が見る見るうちに世界を覆い始め、私たちのプロジェクトも大きな影響を受けることになるのです。