中学校 道徳

中学校 道徳

場面絵の活用で、目標に向けた強い意志について考える道徳授業(第2学年)
2023.09.27
中学校 道徳 <No.005>
場面絵の活用で、目標に向けた強い意志について考える道徳授業(第2学年)
筑波大学附属中学校 教諭 多田義男

1 はじめに

 文部科学省が、全国の小中学校を対象に「私たちの道徳」の活用状況を調査した結果によると(H26年)、各都道府県教育委員会より寄せられた意見には、「イラストや写真等も発達段階を意識してあり、生徒が自然とページをめくっていく配慮ある」「名言・格言などの充実により、授業の構想に一定の方向性が見出せる」との学校現場からの声が記載されている。そこで、この調査の結果から道徳の授業でコラムや場面絵を活用した授業実践を行なった。

2 授業展開について

 長い読み物教材は話の構成が複雑であり、内容整理だけでも時間がかかる場合がある。事実に基づいたグラフ、生徒の多くが知っている漫画の場面絵やコラムの活用等は、短い時間で生徒への道徳的諸価値に関わる問題提起をすることができると考えた。

導入でグラフを活用する。
 『私たちの道徳』p.19のグラフで人間の目標について考えさせる。
展開で場面絵を活用する。
 『私たちの道徳』p.18宇宙兄弟「内なる敵」左側の吹き出しを空欄にしたものを黒板に掲示し、目標を達成させるためには何が自分の阻害要因になっているかを考えさせる。ペアトークを行い、それぞれの「敵」について考える。
グループトークをさせる。
 中心場面で「理想通りにいかない現実もある」を音読し、自ら決めた目標を達成させるために大切なことは何かをグループトークで深めていく。

3 実践事例

(1)主題名
目標の実現(内容項目:A-(4) 希望と勇気、克己と強い意志)

(2)教材名
「目標を目指しやり抜く強い意志を」(『私たちの道徳 中学校』文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/detail/1344255.htm

(3)本時のねらい
 場面絵やグラフを使い、それぞれの目標実現のためには、さまざまな困難があることを共感させ、目標や理想を達成させようとする強い意志を育てる。

(4)展開例

学習活動(◎中心発問、○主な発問、・予想される生徒の反応)

◇指導上の留意点 ◆発問の意図


1 p.19「人生の目標について」のグラフを提示する。

○「これからどんな目標をもって生きたいか」の質問に対してどの国も「お金持ちになる」や、「高い社会的地位につく」ことが低いのはなぜだろう。
・幸せはお金や地位ではない。
・どんなに地位やお金があっても幸せになるとは限らない。
・地位があってもやりたいことができるわけではない。

◆幅広い視点からの生徒の意見を聞き、受け取り方は人それぞれであることを押さえる。


2 p.18「理想通りにいかない現実もある」「内なる敵」を音読する。
○理想通りにいかない現実が起きたとき、吹き出しにはどんな言葉が入るのだろう。(ペアトーク)

・だいたい俺です。 ・自分の甘え
・時間 ・兄弟 ・友人 ・自分自身

◇「内なる敵」の最後の2行「自分の夢を……」は読まない。
◇数名の生徒を指名し、吹き出しに言葉を入れて、その意図をそれぞれ聞く。

◎自ら決めた目標を達成させたいときに大切にしなければならないことはどんなことだろう(グループトーク)
・誘惑に負けない自分。
・達成できたときの自分を思い描く。

◇グループトークは4人1組で話し合いを行い、発表させて全体で共有していく。
◇目標を達成するためには強い意志が大切であることに気がついたか。

3 p.16を読んで考える。
○「壁の向こうに向かって帽子を投げる」とはどのようなことなのだろう。(グループトーク)

・目標に向かって進むしかない。
・意欲をもって進もう。
・希望を持とうとする意志のあらわれ。
・既成事実を作って迷いを断ち切る行為。
○帽子を投げる行為にはどのような意味があるだろう。その先で見たいものは何だろう。(補助発問)
・壁の向こうには生まれ変わった自分がいるから、その自分に会うためにあえて投げる。
・帽子は自分の気持ちではないだろうか。


◆壁の向こうに帽子を投げる行為は、強く意志を持つことにつながることを押さえる。


4 本時の感想をワークシートへ記入し、気づいたことや学んだことについて、挙手または指名で発表をする。

◆互いの発表に共感し考える。

4 板書例

5 まとめ

 宇宙兄弟は多くの生徒がその内容を知っており、生徒にとって身近なものとして考えることができた。また、問題なく学校生活を送っているとみられていた生徒でも「『欲』が邪魔をしている。」と発言をしたことから、誰にでも目標を達成させるためにはその人なりの課題があることを認識させることができた。
 「自分を信じて進む。」「物事から逃げずに取り組む。」また、「そのような環境を与えられていることにも感謝する。」などの発言を生徒たちから引き出すことができた。生徒の感想からは「みんなも内なる敵とたたかっていることがわかった。壁を乗り越え、目標を達成することに逃げずに取り組んでいきたい」など具体的に自分の置かれている状況に照らし合わせ考え、どのように行動していくかを考える授業となった。

※この実践事例は、『どうとくのひろば19号』(2018.01.31)に掲載されていたものです。