中学校 道徳
中学校 道徳

1 はじめに
文部科学省が、全国の小中学校を対象に「私たちの道徳」の活用状況を調査した結果によると(H26年)、各都道府県教育委員会より寄せられた意見には、「イラストや写真等も発達段階を意識してあり、生徒が自然とページをめくっていく配慮ある」「名言・格言などの充実により、授業の構想に一定の方向性が見出せる」との学校現場からの声が記載されている。そこで、この調査の結果から道徳の授業でコラムや場面絵を活用した授業実践を行なった。
2 授業展開について
長い読み物教材は話の構成が複雑であり、内容整理だけでも時間がかかる場合がある。事実に基づいたグラフ、生徒の多くが知っている漫画の場面絵やコラムの活用等は、短い時間で生徒への道徳的諸価値に関わる問題提起をすることができると考えた。
①導入でグラフを活用する。
『私たちの道徳』p.19のグラフで人間の目標について考えさせる。
②展開で場面絵を活用する。
『私たちの道徳』p.18宇宙兄弟「内なる敵」左側の吹き出しを空欄にしたものを黒板に掲示し、目標を達成させるためには何が自分の阻害要因になっているかを考えさせる。ペアトークを行い、それぞれの「敵」について考える。
③グループトークをさせる。
中心場面で「理想通りにいかない現実もある」を音読し、自ら決めた目標を達成させるために大切なことは何かをグループトークで深めていく。
3 実践事例
目標の実現(内容項目:A-(4) 希望と勇気、克己と強い意志)
「目標を目指しやり抜く強い意志を」(『私たちの道徳 中学校』文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/detail/1344255.htm
場面絵やグラフを使い、それぞれの目標実現のためには、さまざまな困難があることを共感させ、目標や理想を達成させようとする強い意志を育てる。
学習活動(◎中心発問、○主な発問、・予想される生徒の反応) |
◇指導上の留意点 ◆発問の意図 |
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導 |
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◆幅広い視点からの生徒の意見を聞き、受け取り方は人それぞれであることを押さえる。 |
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展 |
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◇「内なる敵」の最後の2行「自分の夢を……」は読まない。 |
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◇グループトークは4人1組で話し合いを行い、発表させて全体で共有していく。 |
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終 |
◆互いの発表に共感し考える。 |
5 まとめ
宇宙兄弟は多くの生徒がその内容を知っており、生徒にとって身近なものとして考えることができた。また、問題なく学校生活を送っているとみられていた生徒でも「『欲』が邪魔をしている。」と発言をしたことから、誰にでも目標を達成させるためにはその人なりの課題があることを認識させることができた。
「自分を信じて進む。」「物事から逃げずに取り組む。」また、「そのような環境を与えられていることにも感謝する。」などの発言を生徒たちから引き出すことができた。生徒の感想からは「みんなも内なる敵とたたかっていることがわかった。壁を乗り越え、目標を達成することに逃げずに取り組んでいきたい」など具体的に自分の置かれている状況に照らし合わせ考え、どのように行動していくかを考える授業となった。
※この実践事例は、『どうとくのひろば19号』(2018.01.31)に掲載されていたものです。