中学校 社会 地理

中学校 社会 地理

世界の諸地域/アフリカ州(第1学年)
2023.10.03
中学校 社会 地理 <No.004>
世界の諸地域/アフリカ州(第1学年)
兵庫県加古川市立中部中学校 安田紫織

1.単元名・教材名

単元名:アフリカ州-自立のための開発と国際協力をテーマに-
教材名:アフリカ州と日本の未来を考える

2.単元の目標

 「最後の経済フロンティア」と呼ばれるアフリカ州の潜在的可能性について考えることを通して、「アフリカ=支援対象国」という一面的な捉え方から脱却し、アフリカ諸国が抱える諸問題の解決に日本がどのように関わっていくべきか探ることで、双方の持続可能な発展に必要な視点を見出す。

3.評価規準

【知識・技能】

  • アフリカ州について、自然環境や人口、産業などの特色を理解し、その知識を身に付けている。
  • モノカルチャー経済や都市問題などのアフリカ州が抱える問題と、その解決のためにどのようなことが行われているか理解している。

【思考・判断・表現】

  • 輸出品が特定の農産物や鉱産資源に偏るようになった原因を追究し、その問題点を多面的・多角的に考察している。
  • 複数の資料を読み取り、アフリカ州の持つ潜在的可能性について多面的・多角的に捉えている。

【主体的に学習に取り組む態度】

  • 「双方の持続可能な発展」という視点から、アフリカ州が抱える課題を解決していくためには何が必要か、日本はどのように関わっていくべきか考え、アフリカ州が抱える問題の解決策を具体的に述べている。

4.単元の指導にあたって

 この単元では、モノカルチャー経済によってアフリカ州の国々が国家の低成長、国民の格差拡大などの問題に直面していることを理解することが肝要である。しかし、外から押し付けられたモノカルチャー経済からの脱却はアフリカ諸国の自助努力のみで成し遂げることは難しく、国際社会全体で考えなければならない。その際、アフリカ州が抱える諸問題を安易に「経済的・物質的に援助する」という方策で解決しようとするだけでは、アフリカ州の国々の経済的な自立にはつながらない。かくいう日本もこれから人口減少時代を迎え、内需の縮小が予想される中、現在の経済規模を維持することが困難な状況にあり、いつまで支援・援助を行えるのかは不透明である。アフリカ州が抱える課題の解決に、日本としてどのようなことができるかを考えることは、アフリカの経済発展に活かせるだけでなく、日本のビジネスチャンスにもなるという視点で捉え、双方の持続可能な発展について考察させたい。様々な資料を読み取り、多面的に考えることで、国際社会と協力し合ってお互いに持続可能な社会をつくることが重要であることを実感し、自らの生き方にも応用させていこうとする姿勢を養いたい。

5.単元の指導計画

時間

主な学習内容

学習の目標

評価規準

導入

アフリカ州
-自立のための開発と国際協力をテーマに-
(P.72~73)

単元を貫く問い
日本はアフリカ州の国々とどのように関わっていけばよいでしょうか。

・教科書の資料を通して、アフリカ州の特色と日本との関わりについてとらえる。

・気候や人々の生活など、複数の視点からアフリカ州の特色について捉えている。
・身のまわりの生活を想起しながら、アフリカ州と日本との関わりについて考えている。

1

1 アフリカの自然環境と人々のかかわり
(P.74~75)

学習課題
アフリカの自然環境や人々の生活には、どのような特色がみられるのでしょうか。

・アフリカ州の気候の特色を、雨温図などから考察する。
・アフリカ州の地形や人口、産業について、基礎的・基本的な知識を身に付ける。
・アフリカ州の国々が植民地支配されていた歴史を理解し、植民地時代の宗主国との結びつきについて図表などから理解する。

・アフリカ州の自然環境や気候の特色を、地図や主題図、雨温図等の読み取りを通して理解している。
・アフリカ州の産業の特色を、自然条件と関連付けて理解している。
・植民地支配されていた歴史的背景が、現在でもアフリカの人々の生活や民族問題など、様々な面で影響を及ぼしていることを理解している。

2

2 農産物や鉱産資源の輸出にたよる経済
(P.76~77)

学習課題
アフリカの国々の経済には、どのような特色や課題があるのでしょうか。

・アフリカ州では輸出用作物の栽培や鉱産資源の開発が盛んであることを、資料の読み取りから理解する。
・モノカルチャー経済の原因について理解し、特定の農産物や鉱産資源の輸出に頼った経済の問題点を考察する。

・アフリカ州で生産されているものを身のまわりの生活と関連付けて理解している。
・モノカルチャー経済の解決策について、教科書等の資料を活用しながら、自分の意見をまとめている。

3

3 社会・経済の開発や発展と国際協力
(P.78~79)

学習課題
アフリカの国々の自立や発展のために、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

・アフリカ州の社会・経済の発展、歴史的背景が、社会や人々の生活にどのような影響を及ぼしているかを理解する。
・さまざまな国際協力について知る。

・アフリカ州が抱える課題の多面性について理解している。
・インターネット等を使って国際協力の具体例について調べ、説明している。

4
本時

アフリカ州と日本の未来を考える

複数の資料を通してアフリカ州の潜在的可能性を探り、アフリカ州と日本の持続可能な発展について考える。

アフリカ州が抱える課題を解決していくためには何が必要か、日本はどのように関わっていくべきか考え、課題の解決策を具体的に述べている。

6.本時の学習(本時4時間/全4時間)

①目標
 複数の資料を読み取り、既習事項を活用しながらアフリカ州の持続可能な発展と日本との関わりについて考え、自分の言葉で表現する。

②学習展開

学習活動と予想される反応

指導のポイント

○アフリカ州が抱える問題についてふり返る。

導 入 問 題
【アフリカ州にはどのような可能性があるのだろうか。】

個別探究
○自分の意見をワークシートに記入する。
 ※根拠となる資料を必ず提示する。

協同探究
○全体で意見交流を行う。
《予想される生徒の反応例》
・若者が学ぶことで、ITなど新しい産業が発展する。(資料1)
・耕作可能な土地が残っているので、農業が発展する余地がある。(資料2)
・品種改良により、農産物の増産が見込める。(資料3)
・日本企業がアフリカで製品を生産することで、現地の雇用が拡大したり、産業が発展したりする。(資料4)
・観光業に発展の余地がある。(資料5)
・電力供給の伸び→生活の改善や産業の発展に活かすことができる。(資料6)
・インターネットを活用することで教育環境が拡大し、人々の未来が広がる。(資料7)
・若年層が多いため、働き手がたくさんいる。(既習)
・綿花の生産が盛んな地域があり、日本でもその品質が認められている。(既習)

〔関連付け発問〕
○アフリカの可能性を一言でまとめると?
 →若年層が多い(労働者・消費者)
 様々な産業に発展の余地がある
〔追究型発問(設定型)〕
○アフリカに足りないものは何だろう。
 →技術、知識、国民の統合(国家として)
○アフリカの足りない部分に、日本が協力できることは何だろう。
 →技術供与、ものづくりの伝統、教育(人材)

導入問題のポイント(よさ)
○「貧困」「未開の地」「国際社会からの支援に依存している」というステレオタイプなアフリカ観を見直し、アフリカに対する多面的な見方を引き出すことができる。

考えやすい工夫
○順番通りではなく、自分が興味を持った資料から見てもよい。
○教科書的な語句だけではなく、自分自身の言葉で表現してもよい。
○複数の資料を提示することで、アフリカが抱える問題を多面的に理解しやすい。

協同探究の進め方、工夫
○アフリカの可能性にはどのような側面があるかを関連付けることで、展開問題の解決策の足がかりとさせる。
○追究型発問により、アフリカと日本の違いをとらえさせる。

展 開 問 題
【アフリカ州の問題を解決するために、アフリカと日本はこれからどのような関係を築いていけばいいだろうか。】
《予想される生徒の反応例》
・一方的な支援ではなく、日本企業が積極的に投資や技術供与などを行ってアフリカの産業の育成に貢献し、購買力をつけたアフリカの人々に日本の商品を買ってもらうことで、双方の発展を目指す。(A評価)
・綿花などアフリカでつくられた質のいいものを外国へ輸出し利益を得て、経済発展を目指す。(B評価)

展開問題のポイント(よさ)
○新学習指導要領の理念である「持続可能な社会の創り手」としての姿勢を養うことができる。
○「支援の対象」という旧来のアフリカ観を超え、「持続可能な発展を共に目指すパートナー」としてアフリカを捉えることで、内需の縮小が予想される日本が経済発展を維持していくための重要な視点に気付くことができる。

【評価】
A:「持続可能な発展」という視点から、日本の関わり方を明確にして、アフリカ州が抱える問題の解決策を具体的に述べている。
B:アフリカが抱える問題の解決のための具体的な自分の意見を述べている。

ワークシート

資料1~7