小学校 道徳
小学校 道徳

1.主題名
心が心を動かす D[感動、畏敬の念]
2.教材名
青の洞門(東京書籍)
3.主題設定の理由
人は、相手が精一杯取り組む場面や自分の可能性に挑戦する姿を見た時に心を打たれることがある。また相手を思いやる心や優しさに触れた時、素直に感動する心をもっている。
高学年になると、人間の力を超えるようなことに挑戦する姿勢や人の心の美しさに目を向けられるようになる。人の心や行為の素晴らしさを素直に受け止め、尊敬や畏敬の念を深めることで、自分の在り方を見つめるきっかけとなる。
今回の学習を通して人のために尽くす心や姿に、素直に感動したり尊敬したりする心を育てたい。さらに自分の在り方を考える機会としたい。
「手品師」の学習では、「どんなにうれしい話でも最初の約束を守った主人公を見て、自分も最初の約束を大切にしていきたいと思った。」と人の心がもつ誠実さに気づき、自分の生活と結び付けて考える姿が見られた。また、「主人公が男の子を優先することが優しくて、すごいと思った。」という記述が多く見られた。他の道徳の授業でも、登場人物の心の優しさや思いやりに目を向けて考える児童が多い。
今回の学習を通して、人のために尽くす心に加えて、人の力では達成が難しいと感じる目標にも立ち向かう気持ちや最後まで諦めない心などの、人間がもっている様々な心に触れさせたい。そして、その思いが偉業を成し遂げることに繋がり、人の心を大きく動かすことがあることに気づかせたい。
菊池寛の「恩讐の彼方に」を原作とする教材である。罪を償う旅をしていた了海は、多くの人が命を落とさないように絶壁に道を通すことを目指す。そこに了海が殺した主人の息子、実之助が敵討ちに来る。しかし石工達に止められる。実之助は隙を狙って了海の命を狙うが、一心に槌ふるう了海の姿を見て完成まで敵討ちを待つ決心をする。1年以上かけて完成した時、実之助は了海の手を握りしめ、二人は感激の涙にむせびあう。
21年の歳月を、道を通すために費やす了海の気高い心に触れ、復讐心を忘れて感激する実之助の気持ちを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心を育てたい。
4.研究主題~確かな学力を培い、たくましく生きる力を育む道徳授業の創造~との関連
教材の時代背景を先に説明して登場人物の関係を理解することで、心情を考えやすくする。また、出てくる言葉の意味を確認したり、道具の実物を示したりして教材理解の一助としたい。教材提示はBGMを用いながら語り聞かせることで、教材の世界に浸れるようにする。
児童の発言を予想して、あらかじめ価値項目に合わせた分類を考えておく。児童の思考が深まるように補助発問を用意して、ねらいに迫れるようにする。また、板書計画に児童の発言を記録しながら整理して、児童が理解しやすい板書を目指す。
感動した経験を振り返りやすくするために、ワークシートの発問に登場人物の「実之助のように」という言葉を入れて、児童が今日の授業を思い出しながら、自分の経験を記入できるように工夫した。また、感動した時の心情を「心がじーんとした」という言葉でも表現することで、児童が経験した心の動きを感じられるようにした。
【ふり返り】の4項目は毎時間同じ内容で、児童に授業の振り返りをさせている。書くことが苦手な児童もこの欄は記入することができている。さらに、授業によって児童が描く顔の表情が変わるため、教師自身が授業を振り返るときにも生かすことができている。
※本実践は、町田市内小学校在籍時、同市の道徳教育研究会における研究をベースに取り組んだものである。
5.教材分析
場面 |
登場人物の心情 |
関連する価値 |
---|---|---|
①1~14行目 |
村人 |
D[生命の尊さ] |
②15~32行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
③33~35行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
④36~39行目 |
了海 |
A[希望と勇気、努力と強い意志] |
⑤40~48行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑥49~53行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑦54~61行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑧62~64行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑨65~74行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑩75~85行目 |
実之助 |
D[生命の尊さ] |
⑪85~96行目 |
実之助 |
D[生命の尊さ] |
⑫97~100行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑬100~106行目 |
石工 |
D[生命の尊さ] |
⑭107~124行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑮125~131行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑯132~141行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑰142~146行目 |
実之助 |
A[希望と勇気、努力と強い意志] |
⑱147~151行目 |
了海 |
D[生命の尊さ] |
⑲152~166行目 |
実之助 |
D[生命の尊さ] |
6.本時の学習
実之助が、了海の長い年月をかけて道を通した姿を見て、復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心情を育てる。
学習活動 |
◇指導上の留意点 ●評価 |
|
---|---|---|
導 |
1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。 |
◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。 |
展 |
2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。 |
◇BGMを用いた語り聞かせを行う。 |
○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。 |
◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。 |
|
◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。 |
◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度) |
|
3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。 |
◇ワークシートを活用する。 |
|
終 |
4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。 |
◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。 |
学習活動 |
◇指導上の留意点 ●評価 |
|
---|---|---|
導 |
1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。 |
◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。 |
展 |
2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。 |
◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書は見ずに) |
○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。 |
◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。 |
|
◎再び喜びを分かち合いながら了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。 |
◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度) |
|
3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。 |
◇ワークシートを活用する。 |
|
終 |
4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。 |
◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。 |
学習活動 |
◇指導上の留意点 ●評価 |
|
---|---|---|
導 |
1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。 |
◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。 |
展 |
2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。 |
◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書を見ながら) |
○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。 |
◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。 |
|
◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。 |
◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度) |
|
3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。 |
◇ワークシートを活用する。 |
|
終 |
4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。 |
◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。 |
<参考>
○事前におさえたい内容
①実之助の父が了海に殺されたことについて
主人殺しの罪
…江戸時代では、親殺し以上の凶悪な犯罪であった。のこぎり引きの上、磔の刑となる。また殺された家も家事不取締(自分の家の名を汚した)として、所領が没収される。つまり家が亡くなることになる。中川家が亡くなった実之介は縁者(親戚)に育てられた。
②江戸時代の敵討ちについて
敵討ち
…原作は「恩讐の彼方に」という題名で、恩讐には「情けや恩と恨み」という意味がある。原作では仇討ちという表現を用いていて、親を殺した者を打ち取ることで、家の汚名を返上したことになる。敵討ちには一家再興(再構)の期待が込められている。
③青の洞門と洞門を掘るための道具について
槌とのみ
…人の手で成し遂げられた偉業だと感じさせるために、実物を示し、音を聞かせる。太いのみを用いると、良い音が出る。
④理解が難しいと考えられる言葉
むせぶ
…息を詰まらせて泣くこと。今回は喜びや感動で胸がいっぱいになって涙する。
敵討ち
…人物の関係と江戸時代の背景を説明する時に伝える。