小学校 図画工作
小学校 図画工作

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
指 導 計 画 |
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題材名 |
つないで つないで |
総時数 |
2 |
題材概要 |
素材と方法から始まる造形遊びの題材である。大量の白色の短冊用紙とそれらをつなぐ造形行為(教師が示す)を出合わせ、教師が始めに示した造形行為を越える「だったら~してみたい」「もっと~できるよ」といった発想を子どもから引き出していく。こうした発想を基に、子どもたちは、短冊を重ねたり、丸めたり、折ったりしながら道のようにどんどん短冊をつないでいき、つなぎながら自分なりのお話をつくって取り組んでいく。 |
題材ではぐくみたい資質や能力 |
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題材を構成するもの |
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授業の実際
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●「ななめにもつなげるよ」
導入時に、教師が白色の短冊を数本のりで接着してつなぐ造形行為を示しながら、子どもたちに活動を投げかけた。
教師:今日の図工は、長い紙をのりでこうしてくっつけて、ようしできたぞ。
子1:横にもつないだらいいんじゃない。
子2:だったら、斜めもあるんじゃない。
子3:それいいねえ。おもしろそう。
子4:ぼくだったら、長くつなぎたいな。ずうっと向こうまで。
子どもたちの中に、「やってみたい」「試したい」「表してみたい」という想いが生まれたのを、教師は見取って、子どもたちの造形活動をスタートさせた。
●「いっしょにつなげよう」

短冊をまっすぐつなぐ子ども。交差させてつなぐ子ども。ジグザグにつなぐ子どもなど。始めは一人ひとりでつなぐことを楽しんで取り組んでいた。しかし、短冊がつながり出すと、近くの友だちの表現と重なりや近接が生まれてきた。そして、友だちとのかかわりが生まれ、発想の広がりや、廊下への造形活動範囲の広がりへとつながっていった。つなぐ造形行為の面白さやつながって表れる世界の面白さを感じ取っている子どもどうし、自然と互いの想いや表現をつなぎ始めた。
●「トンネルのビルができたよ」

教師:うわあ、面白いね、この丸まった形。どんなお話になっていくのかな。
教師は、子どもに思い描いている想像の世界と、見通しについて問いかけた。すると、
子4:ええとね。これがトンネルでね。トンネルのビルがあってね。ここを道路がくぐっていくんだよ。車もくぐれるよ、すぐにね。
教師:そうかあ。楽しみだなあ。
一人の子どもの短冊を丸める造形行為や表現から、折りたたむ、階段のように折る、高く積んでつなぐなど、次々に発想が広がっていくのを見取ることができた。
●「くぐって通れるんだよ」
短冊をアーチ状に曲げたものを何かに見立てる発想は、男の子に限ったことではなかった。女の子にも波及し、遊園地のゲートやデパートの入り口に見立て始めた。
また、アーチの形を繰り返し使って、模様づくりを楽しむ女の子も現れた。トンネルを設けるとそこには、目には見えないがくぐって通っている道路や車、人、動物たちがいるのであった。
●「いっぱい並べて橋に…」
教師:ここでは、どんなことをしてるのかな。
子5:いっぱい並べて、橋にするの。
子6:あっちとこっちの道をつなぐんだよ。
教師:なるほど。この橋を渡って行くと近道になりそうでいいね。
子6:そうだよ。
細い短冊を隙間無く並べて敷き詰め、つなぐことで橋を表すといった造形行為も現れた。この子どもの姿からは、1年生であっても、見通しや想像の世界を友だちと共有しながら取り組んでいることを見取ることができた。
●「もっともっと長~くしたいな」

後半になってくると、教室では狭くなり、廊下を使っての活動へと広がりが見られた。写真の子どもたちは、道としてつなぐばかりではなく、道に隣接された駐車場やレース場、店や家などを配しながら、どんどん想像の世界を広げて表していった。中には、短冊を加工して車や人をつくる子どもの姿もあった。
授業の最後には、子どもたちの「みんなのを見てみたい」想いを見取り、相互鑑賞を行った。一生懸命工夫してつくった箇所を説明する子ども。つくり始めた所から終わりまでお話をつなぐように話す子ども。友だちの長くつながった表現に興奮し、コースを行ったり来たりして走り回る子どもなど、様々な感じ方で互いの違いをよさとして感じ取っていた。
終わりに
材料や方法を限定してスタートしているが、子どもたちは、限定されたからこそ短冊の新しいつなぎ方を試したり、用い方を思い付いたりしたのである。題材構想の段階で「子どもは教師の想定を越える」ことをふまえつつ、どれだけ子どもに寄り添った構想ができるかが教師にとっての勝負となる。多種多様な材料だからよいわけでもなく、斬新な方法を取り入れるからよいのでもなく、ちょうどよく子どもの「もっと」が生まれる題材構想をこれからもしていきたい。
そのために、図画工作科の授業のみならず、他教科等の授業での子どもの見取りや給食中の子どもとの対話から子どもの興味・関心や発達の特性をとらえていく必要があると考える。