高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

釈迦十大弟子
2013.09.02
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.050>
釈迦十大弟子
新版「高校美術1」 P.34掲載 棟方志功記念館蔵

 「釈迦十大弟子」は釈迦の十人の弟子に普賢菩薩、文殊菩薩を加えた12の人物を六曲一双屏風に貼り込んだ作品です。1939年に制作し翌年国画会展に出品、1941年に洋画の新進画家に与えられる佐分賞を受賞しました。
 「わだば(私は)ゴッホになる」と、油絵画家を目指して、1924年に青森から上京した棟方は、展覧会で見た川上澄生(1895-1972)の版画にひかれ、やがて自らも版画の制作を始めます。1936年、長編詩を彫り込んだ板画絵巻「大和し美し」で頭角を現し、1938年には第2回文部省美術展覧会(新文展)に「勝鬘譜善知鳥版画曼荼羅(しょうまんふうとうはんがまんだら)」を出品、版画として初の特選を受賞しました。「釈迦十大弟子」も同時期のものです。白と黒の面の対比によって構成された切り絵のような作風で、美しさと力強さを兼ね備えています。
 板木には朴の木を用いており、上から下まで、また横幅もいっぱいに使って制作しています。両面を使用しているので板木は全部で6枚あります。普賢菩薩、文殊菩薩を彫り込んだ一枚は戦火で焼失してしまい1948年に作り直されました。
 戦後、新たに摺った作品を1955年、第3回サンパウロ・ビエンナーレに出品し最高賞を受賞、さらに翌1956年の第28回ヴェネツィア・ビエンナーレでは国際版画大賞を獲得、いずれも日本人初の受賞という快挙を成し遂げました。
 棟方は板の持つ性質を大事にしたい、板の魂を彫り起こすのだという想いから1942年以降、自らの版画を「板画」と呼び表しました。釈迦十大弟子も「板木のもっている力を無駄にせず、むきでるような方法をたてよう」と想いを込めて制作した力作です。

(棟方志功記念館 学芸員 天内敬子)

 

棟方志功記念館ico_link

  • 所在地 青森市松原2丁目1番2号
  • TEL 017-777-4567
  • 休館日 月曜日(祝日及びねぶた期間の8/2~8/7は開館)

<展覧会情報>

  • 秋の展示-「四季の彩り-花鳥風月を描く」
  • 2013年9月10日(火)~12月8日(日)

展覧会概要

  • 棟方の手掛けた四季折々の風物の板画を紹介。「柳緑花紅頌」「大原頌」、倭画「青森頌春夏秋冬図」をはじめ、十二ヶ月の四季の風物、四季を詠んだ短歌を題材に描いた作品を展示します。

<次回展覧会予定>

  • 冬の展示-「海の旅、山の旅-東海道棟方板画と信州油絵シリーズ」
  • 2013年12月10日(火)~2014年3月16 日(日)

その他、詳細は棟方志功記念館Webサイトico_linkでご覧ください。