高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展
2013.07.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.049特別号 教科書の作品に出会える展覧会>
現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展
「グラン・ビア」アントニオ・ロペス作 「Art and You」P.19掲載

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アントニオ・ロペス「グラン・ビア」 油彩/キャンヴァス/93.5×90.5㎝/1974-81
(C)VEGAP, Madrid & JASPAR, Tokyo, 2013
B0274

 アントニオ・ロペスは1960年頃からマドリードという都市そのものを絵画におさめるようになります。それらの絵画は、13歳の時に故郷を離れ首都に住み着いてから、長年日常生活を送る中で生まれた、マドリードに対するロペスの深い愛情が反映されたものでしょう。ある時は高層ビルの屋上からの俯瞰視点であったり、ある時は地上からの低い視点であったりと、さまざまな角度から見た都市景観作品を生み出していきました。
 本作はマドリードの目抜き通りであるグラン・ビアを描いた作品です。1974年夏のある日、ロペスは友人とともにこの地点を訪れ、早朝の太陽の光がビル群に反射して輝く光景に深く魅了されました。その美しい光を捉えるために、毎年夏になると朝6:30には現地へと向かい、同じ場所にイーゼルを立て、約20分間の制作を7年もの間続けました。刻々と移り変わる光はロペスに約20分間の制作しか許さなかったのです。
 本作はあまり大きい作品でないにも関わらず、画面左奥の消失点から通りに沿って建つビル群、そして手前のアスファルト道路まで、曲線を描きながらこちらに迫り来るようなダイナミックな展開を見せます。現実を描写したにも関わらず、そうとは思えないほど硬質で冷たい世界を創造したロペス芸術の金字塔と言える作品です。
 本展では、美術学校時代の初期作品から近作までの64点の作品により、ロペス芸術を包括的に紹介します。日本では細密描写を基にしたリアリズム作家と目されがちですが、彼の作品はそれに留まらない壮大な芸術観を秘めています。写真とは全く異なる人間の眼に忠実なリアリズムを体現することのできるアントニオ・ロペスは、スペインのみならず現存する作家の中でも最大の巨匠と言えるでしょう。

(長崎県美術館学芸員 森園 敦)

<展覧会情報>

■長崎県美術館ico_link

  • 所在地 長崎市出島町2-1
  • TEL 095-833-2110
  • 休館日 第2、第4月曜日(休日・祝日の場合は翌火曜日)

展覧会概要

  • スペイン現代美術の最重要作家アントニオ・ロペス(1936- )の日本初となる回顧展を開催します。彼が制作する油彩、素描、彫刻の各ジャンルから代表作64点を、「家族」「故郷」など7つの章に分け、わかりやすく紹介します。
  • 巡回:岩手県立美術館 2013年9月7日(土)~10月27日(日)

<次回展覧会予定>

  • 京都清水寺成就院奉納襖絵 中島潔「生命の無常と輝き」展
  • 2013年10月5日(土)~11月17日(日)

その他、詳細は長崎県美術館公式Webサイトico_linkでご覧ください。