社会科FAX情報
(小学校 社会)

社会科FAX情報
(小学校 社会)

畜産と酪農 ほか
2009.12.10
社会科FAX情報(小学校 社会) <No.76>
畜産と酪農 ほか

 まだまだ残暑の厳しい季節ですが,空の色はさすがに秋らしく,透明になって参りました。勉学の秋,読書の秋,食欲の秋,スポーツの秋と,秋を形容する言葉はさまざまですが,教育に関わる私どもとしては,勉学の秋を強調したいものです。
 FAX情報76号をお届けいたします。社会科学習指導の参考としてご活用いただけたら幸いです。

■畜産と酪農

 先般,5年上巻の「3 食料生産のさかんなところは,どこに広がっているの」のうち,「ちく産のさかんなところ」のページについて,用語の使い方についてのお問い合わせをいただきました。調べましたところ,誠に申し訳ないことに,教師用指導書『実践編』(p.45)で,「畜産」と記すべきところを「酪農」と記しておりました。
 そこで,改めて「畜産」「酪農」「牧畜」「放牧」といった,混同しやすそうな語について使い分けを調べましたので,お知らせいたします。
 まず,「畜産」は,食用(乳・肉・卵),衣用(毛・皮),作業用(引用・乗用・駄用)を目的に,牛・馬・鶏・羊・豚などの家畜を,おもに農作物や野生植物を飼料として飼養する生産行為または産業を言います。農業の一部であり,飼料供給を通して,農作物栽培と結びついています。
 なお広義には,愛玩用動物の生産や養蜂を含める場合がありますが,これらは農業統計には含まれません。
 ついで「酪農」ですが,これは,乳牛や羊・山羊などを飼育して(飼育形態は問いません),乳や乳製品を生産する農業を言います。広義には,生産・加工から販売・配達までを含めて用いることもあります。
 「牧畜」とは,有蹄類の草食性家畜を群れとして管理することによって得られる生産物に,衣・食といった生活の必需品を依存する比率が高い生活様式を言います。したがって,家禽や豚を飼育しても牧畜とは言わず,牛馬を一家族で数頭飼養して役畜として利用する生活形態も牧畜とは言いません。
 「放牧」は,家畜を草地に放し飼いして生草を自由に摂取させる飼育方法を言います。草の生育期間である春から秋にかけてのみ行われます。低緯度の,一年じゅう草が生育するような暖地では,周年放牧が行われます。

(「小学館「日本大百科全書」,牛の博物館Webページico_linkなどより)

■ハイブリッド自動車

 近ごろ,政府のエコカー普及政策により,ハイブリッド自動車の売れ行きがたいへん好調なようです。5年上巻教科書で,ハイブリッド自動車を紹介していますが,これがなぜ環境にやさしいのか,日本自動車研究所のWebページico_linkをもとに,お伝えします。

●ハイブリッド自動車はどうして燃費がいいの?
 ハイブリッド自動車は,発進時には主にモーターを使用しています。加速,定速時には,エンジンを使用しますが,エンジンは効率の高い条件で運転を行います。減速時にはエンジンを停止し,モーターを発電機として使い,バッテリに充電し,次の発進および加速時に使用します。停車時にもエンジンを停止し,燃料は使用しません。

●ハイブリッド自動車の利点は?
 通常のエンジンを搭載した自動車の利点は,全国数万か所にあるガソリンスタンドで燃料を補給でき,充電の必要がないことです。電気自動車の利点は,排ガスが出ないことです。しかし,充電に時間がかかり,走行距離が短いなどの欠点があります。そこで,電気自動車の利点(排ガスが出ない・低負荷でも効率が高い)とガソリン自動車の利点(通常の燃料を使用できる・充電の必要がない)を利用しようというのがハイブリッド自動車なのです。

◆いいことづくめの自動車のようだけれど…
 ハイブリッド自動車についてインターネットで調べていた際,こんな指摘を見つけました。こうした問題がクリアされることを望みたいものです。

  1. 都市圏に住み,通勤などにハイブリッド自動車を利用する場合は,市街地などで停車と発進を繰り返すので,相対的に燃費が良くなるが,郊外に住み,長い距離をある程度以上の速度で走行する場合は,ガソリン車と比べて燃費が悪くなる。
  2. 冬にハイブリッド自動車に乗ってみたら,寒かった。だからといって,ヒーターを入れるとどうなるか。室内の温度が設定温度になるまではエンジンが回るため,最初の10分間ぐらいの燃費が普通の車並になる。もしも目的地まで10分ほどの距離であれば,エコ的メリットは無いことになってしまう。

■「蘭学事始」の出版は明治になってから

 6年生,江戸時代の小単元では,「解体新書」以降,蘭学がさかんになったことを学習します。教科書のこのあたりの記述は,杉田玄白が著した「蘭学事始」を原典としています。この本は,蘭学の創始と発達の過程,「解体新書」の原書「ターヘル・アナトミア」の入手や翻訳,訳本たる「解体新書」の出版の経緯を事細かに語ったものです。この本について,江戸東京博物館の学芸員の方が書かれた記事の一部を紹介致します。
 「しかし,意外に知られていないのは,この書は当時出版されず『蘭東事始』あるいは『和蘭事始』とも呼ばれて,写本で伝わったことである。杉田家の原本は1855年の地震の際に火事で焼失したが,幸いなことに,玄白自身の筆になる写本が後に発見された。
 これが初めて出版されるのは,1868年(明治元年)に福沢諭吉が玄白の曾孫の杉田廉卿を訪問し,書物の保存上出版をすすめ,費用の一助として私費を投じたことによる。刊行は翌1869年であった。」

(2007年6月1日「読売新聞」-江戸博蔵めぐり-より)