小学校 図画工作
小学校 図画工作

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
図画工作・札幌発信シリーズ<4>
指 導 計 画 |
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題材名 |
雪ぞうさんとあそぼう |
学年 |
2 |
総時数 |
5 |
評価規準 |
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材料用具 |
絵の具、クレヨン、色画用紙 |
子どものイメージを広げる「さっぽろ雪まつり」
『さっぽろ雪まつり』は62回を数え、世界中から観光客を集めるイベントとなっている。札幌の中心部を東西に延びる大通公園など数か所で開催され、大雪像の迫力と完成度の高さは見る人の心を打つ。それは、大人でも子どもでも同じである。特に子どもにとっては、空から舞い降りる柔らかい雪が雪像に姿を変えた、その圧倒的な存在感に心を奪われる。
伏見小学校の2年生は生活科の『さっぽろ雪まつり』を探検する学習がある。子どもは雪像を見ると、「すごく大きい」「かっこいい」「きれい」といった感動体験をする。その感動体験と自由にイメージを広げることができる低学年の発達特性を生かし、雪像と自分を描く題材を設定する。
5時間の題材とし、はじめの1・2時間目はイメージを膨らませ、願いをもち、自分の表現に浸る。3・4時間目は願いの質を高め、表現を広げる。5時間目は全体で鑑賞活動を行う。
雪像との距離を縮める全体交流
生活科の『雪まつりたんけん』では、探検に出かけることを目標としているため、雪像との心の距離は遠く、ただ眺めている関係にある。雪像と子どもの心の距離を縮めるために、全体での交流を設ける。
「どんな雪像があったかな」と問いかける。子どもからは、
「お寺があったよ」
「おおきな恐竜もいたね」
「大きなジャンプ台もあった」と返ってくる。
ここで、雪像と子どもたちの距離を近付けていく。
「みんなは、ジャンプ台で滑ってみたい?」と聞くと
「え~。こわいな」
「スキーが苦手だからなあ」
「でも楽しいかも。滑ってみたい」などと、子どもは雪像と自分の距離を近付け始める。
「ジャンプ台のほかにも、お寺があったよね」
「あった。お寺の中はどうなっているのかな」
「雪のお寺の中に入ってみたい」
「じゃあ、ぼくは恐竜にのってみたいよ」と、教師や友達との対話を通して、自分のお気に入りの雪像とのイメージを広げ、距離を縮めていく。
『ジャンプ台でかっこよくジャンプしている自分』『大きな恐竜に乗って、町を眺めている自分』イメージをもつことができた子どもは、「描きたい」と願いをもつ。
ここでは、子どものイメージを十分に生かすためにも、色画用紙を使用する。画用紙の色は自分で選ばせるようにする。夜の雪像を描きたい子は黒、青天の下の雪像を描きたい子は青など、具体的なイメージから色を選ぶ子もいれば、オレンジを選んだ子に意図を聞くと、「オレンジって楽しい感じがするから」と抽象的なイメージに合う色を探す子もいる。
描画材は絵の具とクレヨンを使用する。クレヨンは絵の具をはじくことや、絵の具の上からクレヨンで描けることを前題材までに学習しておくと、どちらから使用するかも自分で選ぶことができ、表現を広げることができる。
1・2時間目は自分の机で表現に向かい、自分のイメージした世界に浸る。
「ぼくはスノーボードでジャンプ台を滑っているところにしよう」「ぼくは、ふくろうに乗って遠くまで飛んで行くんだ」とイメージした子は、絵の具でジャンプ台や雪像を描き始めた。ジャンプ台や雪像が完成すると、その上からクレヨンで自分を描く。描画材の特性を押さえておくことで、より自分のイメージにあった表現に近付くのである。
教師は机間指導を行う。絵の具の水の量やクレヨンとの併用など、描画の仕方については随時指導していくが、子どもと対話をしながら、どんな思いでかこうとしているかを見取ることに努める。また、対話をしていくことによって、子ども自身がさらにイメージを膨らませることにもつながっていく。
T「何をかくの?」
S「ジャンプ台だよ」
T「ジャンプ台で何をしているの」
S「お友達と一緒にそりで滑るんだ」
T「どんなそり?一人で乗るの?」
S「二人で乗るそりにしようかな」
T「二人乗りは楽しいね。お友達とたくさんすべりたいね」
S「5人で乗れるそりもつくってみようかな」
願いの質を高める環境の変化
3・4時間目は、よりイメージを膨らませながら、新しい願いへとつなげていくことをねらい、教室環境を変える手立てを取る。
自分のイメージが表現でき、満足感が得られた子どもは「友達はどんなことを描いたのかな」と他者の表現に興味をもつ。そこで、3間目からは教室から図工室に場所を変える。4人掛けの机になり、必然的に友達の作品が見合えるようにする。座席は同じ雪像の子にしたり、色が単色の子と多色の子にしたりするなど、表現に刺激を受けるようにする。
教師は机間指導を行う。1・2時間目は子どもの思いを見取ることに努めたが、教室環境の変化を生かし、子ども同士がお互いの作品を形や色に焦点化して交流するように声かけをしていく。
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互いの表現に刺激を受け合う |
T「4人とも雪像さんと楽しそうにしているね。雪像さんの色が違うね」
S「本当だ。○○ちゃんの雪像に色が付いてる」
S「探検のとき寒かっただでしょ。だから洋服を着せてあげたの」
T「同じジャンプ台だね。二人の絵の顔の形が違うね」
S「うん。ぼくはすごく楽しいから笑っているの」
S「え~。わたしこわいから目をつむっているの」
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絵を通して交流 |
形や色に焦点化することで、「どうしてその色にしたの?」「同じ雪像なのに形が違っておもしろいね」と交流していく。そして、「もっと、自分も描き足したいな」と新しい願いをもつ。
鑑賞を通した相互評価
5時間目には鑑賞活動を行う。お互いの作品をよく見るために、どのように掲示するかを問う。色画用紙で並び方を考える子もいれば、雪像の仲間で並べてみたいと考える子もいる。それぞれの作品の形や色を見ながら、友達のイメージに浸っていく。
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同じ雪像でも |
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雪像との距離が縮まり、 |
授業を終えて
どのような題材であっても、子どもが自分自身で世界で一つの作品を生むために、自分のイメージをもつことが重要であると考える。今回の題材では、全体交流を設定することで、イメージが膨らんでいったと考える。これからも子供の自由な発想を大切にし、授業の導入を考えていきたい。
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自分の好きなキャラクターの雪像と遊んでいる作品。 |
【監修者 北海道教育大学岩見沢校 准教授 阿部宏行】