小学校 図画工作
小学校 図画工作

~粘土で自分の気持ちを表そう!~
※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
図画工作・札幌発信シリーズ<5>
指 導 計 画 |
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題材名 |
きもちをかたちに ~粘土で自分の気持ちを表そう!~ |
学年 |
5 |
総時数 |
4 |
準備 |
☆鑑賞 ☆作品づくり |
学習目標 |
自分の表したい「きもちのかたち」をブロンズ粘土を用いてつくることができる。 |
主な学習内容 |
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主な評価の観点 |
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1.<感じたままに~抽象彫刻の鑑賞~>
『本校の玄関前には「大いなる希望」と題された抽象彫刻がある。
子ども達にとってなじみの深い、この彫刻を取り上げることで、「難しそう」「よくわからない」という既成概念を持たせず、抽象表現に親しむことができると考えた。その他、鑑賞で用いた5つの作品は、全て札幌市内で見ることができる作品である。子ども達が何気なく道を歩いていて、美術作品に出会った時に「あ」と目を留め感性の素地を養いたいと考え、子ども達にとってなるべく身近に感じられる作品を選んだ。それらの作品の画像を、大画面テレビに映し「どんな感じがする?」と問いかけた。
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最初は「○○の形に見える」と見立てを行っている子が多かったが、ある子の「喜んでいる感じに見える。」という発言をきっかけに、鑑賞は深まり、彫刻作品から受ける感じを話す子どもが増えていった。作品を見て感じたことを互いに伝え「わかる!」と共感しあったり「私は逆に…」と自分とは違う感じ方に触れたりしながら、子ども達は、抽象のイメージをつかんでいった。鑑賞の授業後、ある子どもの振り返りには『今日見た作品は全部、はっきりした形ではないけれど、色々な見方ができて、つくった人には表したいことがあるということがわかった』と書かれていた。抽象的な表現を子ども達なりの言葉で理解していった。
2.<きもちをかたちに ~自分の気持ちを表そう~>
①油粘土でおためしタイム
まず「おためしタイム」と称して、油粘土で色々なことを試してみた。この「おためしタイム」には3つのねらいがある。
- 自分のつくる作品のイメージを膨らませる。
- 指先でひねり出したり、丸めたり、手のひらで伸ばしたりしながら粘土の感触や技法を確かめる。
- 用具の使い方を確かめる。
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鑑賞の学習の印象が強く残っていたため、子ども達の意識は、自然と抽象的な形に向いていった。気に入った形ができた子は「これ、とっておいてもいい?」とそれをエスキースとして作品づくりを行っていた。
②ブロンズ粘土ってどんな粘土?
作品の製作には、ブロンズ粘土を用いた。子どもたちにとっては初めて出会う材料である。ブロンズ粘土は彫塑性に優れており、磨くことによって光沢が出る。その特徴を子ども達と確かめ、いよいよ作品づくりである。
③自分の気持ちを立体に表そう
きもち、という言葉から「喜び」や「怒り」などの「感情」をテーマに選ぶ子、「夢をテーマに…」「仲の良い友達とのつながりを表したい」など、自分が表したいことのイメージを形にしようとする子、様々な方向に子ども達の発想と活動は広がっていった。
子ども達は、指先や手のひら全体を使い、ブロンズ粘土の感触を楽しみながら作品づくりを進めていった。
自分自身や友達と会話をしながら、子どもの手は止まることがなかった。そこには、自分の思いを表現しようと模索し続ける子どもたちの姿があった。作業が進むにつれ「芯を入れたい」「空中に浮かせたい」など、ブロンズ粘土以外の材料を必要とする子が増えてきた。
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次の時間には鑑賞コーナー(ミニ美術館)を設置した。作品をここに置き、照明を当て、「見て感じる」ことと「つくる」ことを繰り返していった。客観的な目で作品を見つめることで、作品の形がどんどん豊かなものになっていった。
さらに次の時間には、実物投影機とプロジェクターを用意して、作品をスクリーンに映し出せるようにした。作品が映されると、子ども達の中から歓声があがり「本物みたい」「ひび割れをなくしたほうがいいね」など自然な関わりが生まれた。
仕上げの方法は、作品をどんな風合いにしたいのかによって選択させた。屋外に置いてある彫刻のように仕上げたい時には、彫塑作品用の「さびカラー」(いぶし銀)を用いるように、つるりとした光沢を出したい時には、メッキスプレーを使用するように指導した。
さびカラーを塗り、布で磨いたり、スプレーをしたりすることで、更に金属らしい光沢や重厚感が生まれた。
完成作品 ~子どもたちの作品カードから~
自分の内面を抽象的な形で表すという難しいテーマに、子ども達は抵抗なく取り組むことができた。それは、最初に鑑賞を行ったことが大きかったように思う。抽象彫刻から感じることを互いに言葉で伝えあう活動を通して、子どもたちは抽象の面白さを感じ取り、それを自分の表現に生かすことができた。
作品を展示すると、真剣でありながらも、あたたかな眼差しで互いの作品を見合っていた。自分の作品について語る子どもの顔は自信に満ちており、友達が「わかる!そんな感じがする!」と共感してくれたり「でも私は○○な感じがする」と別の感じ方を伝えてくれたりすると、ますます満足した様子だった。
この実践を通して、子ども達は抽象表現という新たな表現方法を知り、自分の表現を見つけることができた。鑑賞活動と表現活動をつなぐ実践を今度も研究していきたい。
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作品名 「つながり」 |
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作品名 「そだっていく心と不安の花」 |
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作品名 「心の波」 |
【監修者 北海道教育大学岩見沢校 准教授 阿部宏行】