小学校 図画工作

小学校 図画工作

グラグラ ゆらゆら
2011.09.06
小学校 図画工作 <No.014>
グラグラ ゆらゆら
新潟市立亀田小学校 磯部征尊

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

指  導  計  画

題材名

グラグラ ゆらゆら

学年

総時数

領域

A表現(2)

題材の価値とねらい

 近年では、「動き」を取り入れたアートが注目されている。例えば、英国のロンドンでは、2009年に動くアートの展覧会「キネティカ・アート・フェア(Kinetica Art Fair)」が開幕した1)。また、テレビ番組でも何度か放送された「ビーチアニマル」は、大きいものでは体長12メートルにも及ぶ。プラスチックチューブやペットボトル、木材などで構成され、風を受けるとまるで生き物のように動き出す。そんな人工生命体のような作品を通して、生命の本質や未来の生命の可能性を考えるのが動くアートである。
 このように、動くアートは、「形・色」と、「動き」からの発想や構想に着目した点が特徴的である。幼児や低学年の子どもの場合、箱でつくった車を手で押したり、引いたりしている姿を見かけることがある。子どもは、止まっているものの面白さよりも、動いているものの楽しさの方を好むからである。
 本題材の価値は、お椀やデザート容器など、コップ型や円筒型の身近な材料を二つまたは、三つ合わせて色々な転がり方を見付けさせ、それぞれの転がり方の面白さに気付かせることができることである。
 子どもに家庭から転がりそうな材料を集めさせる。そして、「この材料同士を使ったら、どうなるだろうか」、「大きさや形を変えたら、どうなるだろうか」など、材料やつくり方によって、色々な動きをすることを理解させる。

題材の観点別評価内容

  1. 関心・意欲・態度
    転がり方を変える面白さに気付き、進んで身の周りから材料を集めたり、転がるおもちゃをつくることを楽しんだりすることができる。
  2. 発想や構想の能力
    転がり方を変えながらイメージを膨らませて、つくりたい作品に仕上げる工夫を考えることができる。
  3. 創造的な技能
    色や形、大きさなどを考えて、自分の思いを表現できる身辺材料を効果的に使って作品をつくることができる。
  4. 鑑賞の能力
    転がして遊ぶ活動を通して、転がり方を生かした面白さやよさを分かることができる。

用具・材料

教師:紙コップ(小・大)、絶縁テープ、粘土、梱包用ビニール紐、ビニールテープ(赤・橙・青・黄・桃・黒・茶・灰)、マーカーペン
児童:コップ型の材料(アイスカップ,プリンカップなど、はさみで切り込みを入れることのできる材料)、円筒型の材料(トイレットペーパーの芯や、お菓子の入った円筒など)、粘土のように動きを変えるための小物(石やブロック、キャップなど)

学習の流れ

<導入時の工夫>

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コロコロ(左) ゴロゴロ(右)

 導入時には、「転がり方を変えると面白いな!」と子どもに思わせることが必要である。最初に、教師が簡単な仕組みを提示し、その仕組みを使って自由に遊ばせる。簡単な仕組みとは、紙コップの底の部分を合わせたものである。大小の紙コップでつくったものを事前に用意しておく。簡単な仕組みを転がす活動を通じて、「コロコロ(小さな紙コップでつくった仕組み)」、「ゴロゴロ(大きな紙コップでつくった仕組み)」というように、子どもと「見立て言葉(擬態語または、擬音語)」のネーミングを付けておく。
 T:先生がつくった見立て言葉、コロコロ・ゴロゴロの外に、どんなメニューができそうか、みんなもやってみましょう。はさみや粘土を使ってもいいです。
 C:はさみで切ったらどうなるかな。
 C:粘土を付けたら、おもしろい見立て言葉が見付かるかもしれないぞ。
 T:見立て言葉が見付かったら、一つ一つにネームペンで書いておきましょう。
 「見立て言葉」を考えさせることで、子どもは色々な転がる様子に着目し、自分だけの見立て言葉を考えようとする。複数の見立て言葉を見付けた子どもは、「転がり方を変えると面白いね。紙コップ以外の材料でも、違う見立て言葉を見付けてみたいな。」という状態になる。

切ってみよう

切ってみよう

メニューを思い付いたよ

メニューを思い付いたよ

<活動の広がり>

 紙コップ以外の材料に興味を持った子どもに、複数の材料を集めさせておく。
 C:ペットボトルとプリンカップを合わせたら、グラグラしたよ。
 C:トイレットペーパーの芯と紙のお皿をくっつけて転がしたら、ゆらゆらゆれたよ。
 C:お母さんからもらった化粧品とアイスのカップを付けたら、みんなと違って、ゴロンゴロンになったよ。
 C:私は、お家から持ってきたアクセサリーをカップの中に入れて転がしたら、シャラシャラという音がでたよ。

どんな転がり方をするかな?

どんな転がり方をするかな?

 子どもは、自分が持ってきた材料を組み合わせながら、面白い見立て言葉を考えていく。複数の見立て言葉を見付けた子どもに、さらにイメージを膨らませるために、次のように働き掛けを行う。
 T:みんなが見付けた見立て言葉にトッピング(~が・・・しているみたい)してみよう。
 C:グラグラだから、おばけがグラグラしているみたい。
 C:ゆらゆらしているから、ゆらゆらする観覧車にしたいな。
 C:カエルが山からゴロンゴロンと落ちてきたよ。
 C:おもしろいね。私は、たぬきがゴロンゴロンと転がっているみたいに見えるよ。
 子どもが考えた見立て言葉にトッピングを加えさせることで、子どもは、つくりたいイメージを膨らませて、つくりたい作品をつくることができた。

ジェットコースターがシャコシャコと音を鳴らして走っている

ジェットコースターがシャコシャコと音を鳴らして走っている

ゴロゴロと走るゴーカート

ゴロゴロと走るゴーカート

<評価>

 学習過程の児童のつぶやきや様子などを踏まえて、一人ひとりのつくりたい思いを継続させる評価を心がける。

  • 転がり方を変えることに関心をもち、意欲的に材料を集める。
  • 材料の組み合わせを変えて、色々な転がり方をするおもちゃを考える。
  • つくりたいものを表現する。
  • 友だちのつくった転がるおもちゃのよさや工夫に気付く。


参考文献
1)奇想天外!ロンドンで動くアートの展覧会

【磯部 征尊】