小学校 図画工作
小学校 図画工作

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
図画工作・札幌発信シリーズ<8>
指 導 計 画 |
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題材名 |
ここには、きっといるよ【A表現(1)・B鑑賞】 |
学年 |
4 |
総時数 |
5 |
題材概要 |
身近な場所の雰囲気から、そこにいそうな想像上の生き物(○○)をつくり、その○○が住んでいる様子を写真にとってお互いに見合い、面白さを感じ取る活動である。題材を構成するにあたって、場所を校庭に限定し、材料はよりその場所になじむようにと考え、その場にある身辺材を使うことにした。校庭には、彼らがこれまで理科や生活科の授業の時間、休み時間などで関わってきたアジサイやミニトマト、桜の木など自然が豊富にある。それらの形や色、においなどを感じながら、「そこに実際いるんじゃないかな?」「いたらいいな。」「きっといるよ。」というように、「場所」からイメージを膨らませていくことができると考えたからである。 |
題材のねらい |
場所の雰囲気から想像上の生き物を発想し、場所と○○を組み合わせてつくる。『きっといるよ図鑑』を作成するために、住んでいる様子を写真に撮って見合い、面白さを感じ取る。 |
主な評価の観点 |
造形への関心・意欲・態度 発想や構想の能力 創造的な技能 鑑賞の能力 |
材料・用具 |
どんぐりなどの木の実、果実や野菜の種、石、コルク、木の枝、くぎ、針金、プリンカップ、ストローなど身辺材、かなづち、きり、ホットボンド、ニッパー、ラジオペンチなど |
指導計画 |
題材との出会い(1時間) 造形活動(2時間) 鑑賞(2時間) |
〈授業の流れ〉
1.材料集め
「次の図工の時間に、こんなものを使うんだけど…。」と子どもに投げかけ、木の枝やどんぐりなどの材料を子どもと集めた。持ってきた材料を入れる箱を用意すると、集まった材料を休み時間に友だちと一緒に触ってみたり、違うもの同士を組み合わせて「魚みたい」と見立て遊びをしたりしていた。これによって、活動前に子どもたちはたくさん材料とふれ合うことができた。
2.「みんなで何かいそうなところを探しに行こう!」
テレビのモニターに学校の前庭の写真を映し、「ここに何かいたんだよね。写真撮ってみたんだけど、写っているかな?」と話した。子どもたちは画面を食い入るように見つめ、「先生が見つけた何かはきっと小さいだろうから、少し画面を拡大してみようよ。」と言われ拡大したが、写真の解像度を低く設定していたため、余計見えなくなっていった。画面の中では探すことが出来ず、「実際に見に行こうよ!」と子どもから声があがり、外へ移動することにした。何か(○○)がいそうな場所を探して、「ここだ!」と思うところに旗をさした。アジサイの下にさして「ジメジメしていて暗くて隠れやすいから。」と話す子や、竹馬置場にさし「くもの巣と竹馬と落ち葉があって、そこで○○は一緒に遊んでいる気がする。」と話す子もいた。いろいろな場所を見て、一度選んだけど、やっぱりこっちじゃないかなと場所を変える子もいた。そのとき感じた気持ちや場所の様子、選んだ理由をワークシートに書いていった。
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3.「“ここ”にいる○○をつくろう!」
活動に入ると、「場所に草がボーボー生えていたから体の色も同じ緑色にするんだよ。」「敵から身を守るために、大きな角を持っているんだ。」「木に似ているから体を木のようなコルクにしたよ。」など、場所のイメージをしっかりと捉え、材料のイメージを組み合わせて自分の○○のイメージを思い浮かべながらつくっていた。一生懸命つくりながらも友だちのつくっている○○にも興味を示していた。「これは足??」と聞いて、「そういう使い方もあるかぁ。」と友だちの工夫に驚いたり、「これどうやってくっつけたの?」と接着方法を聞いて、参考にしたりしていた。このような友だちとの自然な交流から、自分○○のイメージをさらに膨らませ、もっともっとつくりたいという想いをもつことができた。
4.「○○を場所にもどして写真をとろう!」
選んだ場所が近くの友だちと相談して、いろいろな角度からレンズを覗いて考えていた。「~くんの○○、その場所で獲物を狙ってそうだね。」と友だちに言われ、よりその雰囲気が伝わるようにカメラを近づけて撮り方を工夫していた。
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初めは同じ向きに2つ並べていたが、「仲良しの友だちだから楽しそうに写す方法はないかな?」と考え、友だちとの対話を通して向かい合わせになるように並べ方を変えた子がいた。そして置き方を少し変えるだけで、作品を見え方が違うということに気がついた。この活動で場所からイメージして○○をつくったということを改めて感じていた。
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また、どの子も自分の作品だけでなく、「その置き方いいね~!」など友だちの作品のよさも味わいながら、写真に写すことができた。
5.「きっといるよ図鑑をつくろう!」
最後に作品に名前やプロフィールを書き込んで図鑑をつくった。○○の名前をつけるとき、「たくさん候補があって選べない!」「こいつにピッタリの名前をつけてあげたいんだ。」などと話し、じっくり考えていた子がたくさんいた。このことから、この子たちが自分の作品に対して、これまでたくさんの想いを注いできたことがわかった。
ここでは「きっといるよ図鑑」の中から、「小人のトマトン」(左の写真)と「アフリカむらさきガラフ」(右の写真)の2作品を紹介します。
ミニトマト畑からトマトが大好きな「トマトン」が生まれたんだね。上からトマトを狙っている表情がとても真剣で、今にも飛びかかりそうだね!(先生からの言葉) |
暗い場所で獲物がいないか目を光らせてそうな○○だね!赤と青のセロハンで作った体の色が、暗い軒下のイメージとマッチしているね。(先生からの言葉) |
6.「きっといるよ図鑑の発表会をしよう!」
作品の発表会では、友だちの説明を聞いて「だからかー!」「なるほどー!」と使われている材料と場所の関連について、納得を示していた。発表も後半になると、説明を聞く前から材料と場所のイメージを結びつけて頷いている子がたくさんいた。
「ミニトマトが大好物」ということから、体の特徴を捉えていることに気がついた。手の数を増やしたり、食べ物の近くに置いたりすることで、食いしん坊のイメージを明確にしていた。このことから、子どもたちは作品の出来栄えではなく、場所のイメージと材料の組み合わせに目を向けて作品を見ていることや、つくっていたことがわかった。また「すごーい!」「どうやったの?」と感動を声に出す子もいて、教室が温かい雰囲気に包まれた。
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【授業を終えて】
造形活動を行う際、それぞれの材料に合う接着方法の提示や接着剤の用意などの手立てを考えておくべきであった。材料の接着に苦しんで、自分のイメージした○○から離れてしまった子がいた。せっかく「こうしたい!」「こんな姿なんだ!」という想いがあるにもかかわらず、私自身うまくアドバイスできず彼らの想いを膨らませることができなかった。改めて教材研究の大切さを痛感した。
しかし子どもたちは友だちとかかわり合いながら、自分の作品に対する想いを伝え合いながら活動することができた。そのような姿をたくさん見ることのできたすてきな5時間であった。
その後の図工では、それまで作品をつくることを一番の楽しみにしていた子が、「早くみんなの作品も見たい!」と話すようになった。また、「作品を展示する際、「この向きがいいな。」「ここから見てほしいな。」など置き方を工夫しようとする子が増えた。今後も作品の出来栄えでなく、(今回で言えば)イメージと作品がどのように結びついているのかといった作品に込められた想いを読みとる力を子どもたちに一層身につけさせていきたい。
【監修者:北海道教育大学岩見沢校 准教授 阿部宏行】