小学校 図画工作

小学校 図画工作

○○なシーサーをつくる。(第4学年)
2013.03.11
小学校 図画工作 <No.019>
○○なシーサーをつくる。(第4学年)
提示型デジタル教材『みる美術』を使って
神奈川県茅ヶ崎市立小和田小学校 小野範子

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

○○なシーサーをつくる。
シーサーは守り神である。○○から自分を守ってくれるなど主題を決めてつくる。

時間数

5時間

題材・単元の
特徴

・主題をもつことによって、自分や身近な人のことを考える。
・「シーサー」や「狛犬」といった古来から日本各地にある身近な立体を鑑賞することによって自分の見方を広げる。
・粘土の可塑性を活用して、手でつくるよさを味わい、立体を工夫して表す。

授業環境

活動環境

美術室

教材や用具

粘土

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

『みる美術』
日本美術 名品コレクション 編

OSバージョン

Windows XP

使用周辺機器

プロジェクタ

その他

できれば、電子黒板やデジタルテレビの方が望ましい。

2.活用事例及び展開

①ねらい
 手の感覚を十分働かせて粘土による立体をつくる。今回は、材料から発想するのではなく、「○○なシーサーをつくる」といった主題を決め、シーサーに限定することでそれに向かってどのように試行錯誤をすることができるかをねらいとする。

②本デジタル教材利用の意図
 導入の段階で児童の発想が生まれてくるように、写真による鑑賞をして興味をもたせる。
 なお、鑑賞するために使う写真であるが、自分が撮りためているコレクションを活用する。
 また、美術にかかわりのある者は、日頃から一般的にはゴミになりそうなものでも授業に役に立つかもしれないと集めたり、興味があるものについて写真をとっておいたり、新しい素材を試してみたりと収集癖が少なからずある。しかし、ためておいた写真等は、的を絞り込んで扱わないと焦点がぼけてしまい有効に活用できないことが多い。
 そこで、今回は『みる美術』の「マイコレクション機能」を活用して授業を組み立ててみた。

③評価について
◆造形への関心・意欲・態度
身近な場所に立体作品があることを知り、自分らしい見方や感じ方で味わおうとしている。○○から守ってくれるといった主題を考え、自分の考えたイメージを粘土で形にすることを楽しもうとしている。
◆発想や構想の能力
自分の表したいことを、粘土でどのような形にするかを考えている。
◆創造的な技能
粘土の特徴を捉え、つくる順番を考えながら工夫してつくっている。
◆鑑賞の能力
感じたことを話すなどよさや面白さなどを感じ取っている。

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点、評価方法※

<鑑賞> 30分

日本の建造物には、災いから建物を守るために獅子や狛犬などが置かれている。
多くは、木や石が材料になっている。一方、沖縄でたくさん見られるシーサーは粘土でつくられているものが多い。ルーツは同じであることから、獅子や狛犬やシーサーなどを味わいながら、自分のシーサーの発想する。

まず、先生が興味をもち、日頃からアンテナを広げておくことが必要。
ただし、先生の興味の一方的な押し売りではなく、児童が「見つける」ための授業展開にする。
※対話をしている中での観察。

<構想をねるためのスケッチ> 60分

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自分の主題を決める。
「○○にしてくれるシーサー」
「○○から守ってくれるシーサー」など。

立体であるため、見通しをもってつくれるように構想を練る。

※スケッチの中で、様々な表し方のよさを見る。

<粘土で工夫しながらつくる> 90分

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焼成しない粘土であるため、土粘土のような手応えでないのが残念。特に接着については、「どべ」で細かい部分を接着するだけでは弱いため、粘土をなじませせるような技術面についてアドバイスをする。

※大まかなパーツをつくっておいてからはりあわせたり、胴体が長くなりすぎて、短く切ってつなげたり、先のとがったもので毛並のような筋をつけたりしている工夫の過程を見る。

<教室前の廊下に展示する。>

3.本時の展開

①目標
 児童が形のイメージを広げられるようにするため、様々なことを見つけられるようにする。

②本デジタル教材を活用した授業の展開

主な学習活動・内容
(●教師 ○児童)

指導の工夫や
教師の支援・評価の留意点

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準備
「みる美術」のマイコレクションに作品を入れ、必要なものにブックマークを付けておく。

導入
●今日は「見つける」ことがねらいです。
●まず先生の写真コレクションから見ましょう。これは、愛知県の日間島で撮った狛犬です。狛犬ってみんな見たことあるかな。

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○近くの熊野神社にもあるよ。
●そうだね。神社で見るよね。

写真を撮ったときの、季節や場所の光、風の感じなどを交えて紹介する。

●なにか見つけたことがあったら教えて。

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○なにか頭の毛がカールしている。
●毛に注目したんだね。拡大して毛を見てみよう。 

児童は、自分の思考の回路に写真をつなぎ、自分の経験の中から「○○で見た」などの事実や「○○のように見える」などの見立てをしながらイメージをふくらませていく。

mirubi_kuraberuを押し、右側にも同じ写真を出す。左側には、写真の全体像を出しておき、右側は、mirubi_kakudaiを使って拡大し、見たい場所には、mirubi_idoを使って移動させる。

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○カールの形が波みたい。
●どうして、波みたいって思ったの?

全体像の写真が左側にあるために、児童が見つけた箇所がどこなのか、児童全員と「もうちょっと右」などと言いながら具体的に共有することができる。

自分が感じたイメージの発言が見られたら、そこから「どうしてそう思ったか?」などと対話を深めていく。

mirubi_modoruを押して、次の写真をだす。

●次を見ましょう。実は、狛犬はもう一頭いて、向かい合って建っているのね。さあ、似ているけど、ちょっと違うところを見つけられるかな。

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一対の写真を比べることにより、今度は違いを見つける。

○左側は口を開けていて、右側は口を閉じている。
●口に注目したんだね。両方の口を見てみよう。

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※左右の両方にmirubi_kakudaiのアイコンがついているので、両方いっぺんに拡大し、くらべることができる。

●何で口を開けているのと閉じているのがあるのでしょう。
○片方が話して、片方が聞いているんじゃないかな。
○なんか、叫んでいる感じがして、右側は我慢している感じがする。

具体的に「なんて言っているのか。」を聞くと、「あー」じゃないかと言葉がでるので、場合には阿吽の話などを取り混ぜる。

●次に口を両方開けているのを見てね。これは、東京大学の東洋文庫の前で見つけたものです。

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○鼻が豚みたい。
○ライオンみたいなたてがみがある。
○吠えている感じがする。
○ドラえもんみたいな鈴がある。
○筋肉がある感じで強そう。
○玉みたいなのを押さえている。

●次は、出雲で見つけたものです。

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○耳がたれているからかわいい。
○鼻が豚みたいなのは同じに見える。
○おしりを上げている。
○しっぽが大きくてかっこいい。

●次は、沖縄の首里城の入り口で見つけたものです。

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※沖縄では、シーサーと呼ばれている。
○ベロを出している
○牙がある。
○眉毛が濃い感じがする。
○体の横が平らになっている。

●最後に沖縄の博物館・美術館で見つけたものです。

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※沖縄の一番古いシーサーで「シーシ」という。風化してぼろぼろだが、大切に博物館の庭に保存されていることも伝えたい。

※日本各地にある狛犬やシーサーについて、いろいろな形があること知ってほしい。

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mirubi_sizeのアイコンを使って、大きさをくらべる。

※大きさをくらべたいときは、おおよその実物の大きさを「高さ(比較用)」に入れておくとくらべることができる。

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●いろいろ見つけられましたね。日本中にあるのも分かったよね。それでは、何のためにあるのでしょう。
○霊とか悪いものから守ってくれるんじゃないかな。
○門とかにあるから、番犬みたいな感じ。

●そこで、これから、自分のシーサーを粘土でつくります。
●アイデアを練りましょう。

<評価>
・自分らしい見方や感じ方で味わおうとしている。【関】
・感じたことを話しながら,よさや面白さなどを感じ取っている。【鑑】

※対話をしている中で、参加していればおおむね満足と捉える。大事なことは、児童の関心を引き出し意欲をもたせられたかどうかという教師側の問題。見せる作品等の選び方や、間合い、順番はどうだったか反省する。

③指導のポイント
 「シーサーをつくりましょう」といっても、見たことがない子もいる。たいてい教師は過去の作品をもってきたり、教師が沖縄でシーサーつくりの体験をし、そのスキルを児童に教えたりして、出来映えを重視してしまうことが多い。ここで大事なのは、児童の関心をどう引き出すかであると考える。日頃、教師自身が収集したコレクションは、片寄った見方を押しつけるのではないかと思われそうだが、様々な視点から足を運んで集めたものは魅力的なものであるとも言える。児童の発想を膨らまし引き出すためには、教師の柔軟なものの見方や考え方が必要である。また、児童の日常にも面白い立体がたくさんあることを知り、自分の見方を通して感じることの大切さを育てたい。

4.感想

 『みる美術』の「マイコレクション機能」は、操作がシンプルなだけに使いやすい。今回のように有名な作家の作品ではなく、日頃見つけたコレクションを生かしたり、児童の作品をコレクションして鑑賞できるようにしたりするのも有効であると考える。