小学校 図画工作

小学校 図画工作

世界の絵画を楽しもう!(第5学年)
2013.05.20
小学校 図画工作 <No.022>
世界の絵画を楽しもう!(第5学年)
提示型デジタル教材『みる美術』を使って
府中市立若松小学校 大杉健

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

世界の絵画を楽しもう!
1次:二つの作品から
2次:○○さんに紹介したい一枚

時間数

3時間

題材・単元の
特徴

デジタル画像を使用することにより、クラス全員が同じ作品に触れ、自分の感じたことや思ったことを話したり友達の考えを聞いたりしながら鑑賞活動を広げ深めていくことができる。

授業環境 

活動環境

ランチルーム、1クラス分が座って集まれる広さの教室。
書くなどの活動ができる机がある環境

人数

児童35人 指導者1名

教材や用具

ワークカード、キーワードカード、鑑賞カード、画用紙(マップ用)、カラーマーカー

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
日本美術 名品コレクション編
西洋美術 フランス国立美術館連合編

OSバージョン

Windows XP

使用周辺機器

パソコン、大型モニター

2.活用事例及び展開

①ねらい
 世界の美術作品を身近に感じ、よさや面白さ、作家の意図などについて友達と感じたことや思ったことを話し合いながら楽しく作品を見る。

②提示型デジタル教材『みる美術』の利用の意図
 世界の名作がデジタル画像になっていることにより、クラス全員で同じものを見て話し合うことができる(美術館と同様な隊形がとれる)ことや拡大縮小が容易にできて、見たいところにフォーカスしやすい。また、鑑賞する作品を自由に組合わせることができたり、子ども自身でセレクトしたりすることができる点などから使用を考えた。

③評価について
◆美術への関心・意欲・態度
・いろいろな視点から作品や作家のよさや面白さを感じて、友達と話したり意見を発表したりしながら、楽しく見ようとしている。
◆鑑賞の能力
・作品のよさや面白さ、作家のこと、作品のテーマなどについて、友達と話し合いながら楽しく鑑賞している。

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点 ◇評価方法

第1次
日本と世界の二つの作品を見て、それぞれのよさや文化などを感じながら鑑賞する。

・子どもたちの実態から、興味をもちそうな作品、よさなどの共通点があり、また、それぞれの特徴の違いがあるような作品を予め教師側でセレクトとしておき、教師側でファシリテーションしながら、鑑賞を広げ深めていく。
◇発言や児童の鑑賞の様子
ワークカード

第2次
自分の気になる作品などから、友達と一つの作品を選び鑑賞し、そのよさや面白さ、自分の意見などを身近な人に伝える。

・児童が自由に作品をセレクトできるように、パソコンや大型モニター、プリント資料などを準備しておく。
◇発言、グループ活動の様子、メッセージを伝えるためのキーワードカード

一次、二次は5年生、6年生の2回に分けた授業展開、一次、二次の順番を変えて取り組むことも可能。

3.本時の展開<1次>

『二つの作品から』

①目標
 二つの作品(日本とヨーロッパ)を鑑賞し、そのよさや違いなどを話しながら楽しく鑑賞する。

②提示型デジタル教材『みる美術』を活用した授業の展開

主な学習活動・内容

教師の指導 ◇評価

導入

・今までの鑑賞の様子を先生の話や友達の話から、振り返り、本時の活動のめあてを知る。

・いろいろな鑑賞活動のうち、本時はデジタル画像を使っての鑑賞であること、日本とヨーロッパの作品を見ることなどを伝える。

展開1

日本の作品を鑑賞しよう。
『金魚づくし百ものがたり』
歌川國芳
まず、描かれているものについて話してもらう。
「なにが」だけでなく「どんな風に」について、話す。
作品のおもしろさや滑稽さ、よさ、不思議さなどについて、友達と話す。
「吹き出しをつけるとしたら…」
「どんな物語があるのだろう?」など、考えたことをみんなに話す。

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・作家名とその時代のみ、基礎知識として伝える。
・発言者だけの意見にしないように、全体に向けて「どうですか?」の問いかけをしたり、「なるほど」などの共感をもってそれぞれの意見を受け止めたりする。

◇発言(その内容)、共感の様子、鑑賞の様子

展開2

ヨーロッパの作品を鑑賞しよう。
「蛇つかいの女」または「戦争:駆け抜ける不和の女神」アンリ・ルソー
「なにが」「どのように」
・どんなことを感じましたか
・どんな状況なのだろう

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両者の作品が同時に見られるように、場の設定をするが、はじめはルソーの作品のみに焦点をあてて、鑑賞活動を展開する。
・自分と違うとらえ方についても、話し合い、イメージを広げさせる。

二つの作品をみて、気がついたこと考えたことなどを話す。
「なにか、不思議」
「変だけどなにか気になる」

気になる作品の前に集まり、自由に友達と話す。

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・「具体的にはどんなところから、そのように思ったのですか?」など問いかけをしたり、キーになる言葉から、他の子ども達にも新たな視点を提示したりしながら鑑賞を展開する。
◇二つの共通なこと、イメージやテーマ、作者の伝えたいことなどを友達と話している内容と様子

まとめ

鑑賞カードに自分の印象や考えたこと、友達と話したことなどをまとめる。

・同じ作家の他の作品などを見せながら、本時のまとめをする。

③指導のポイント
・日本とヨーロッパの二つの作品をそれぞれ鑑賞し、その後に両者を結びつけたりしながら、作家の意図などにも触れ、鑑賞を深めること、
・大型モニターなどを2台準備する。
・子どもの興味を惹く作品をセレクトすること。

3.本時の展開<2次>

『○○さんに紹介したい一枚』

①目標
 自分の知っている作家の作品、興味を惹かれた作品などを、マップにまとめ、自分の感じたよさや面白さを身近な人に紹介する。

②提示型デジタル教材『みる美術』を活用した授業の展開

主な学習活動・内容

教師の指導 ◇評価

導入

・今までの鑑賞の様子を先生の話や友達の話から、振り返り、本時の活動のめあてを知る。

・いろいろな鑑賞活動のうち、本時はデジタル画像を使っての鑑賞であること、自分のお気に入りの作品をセレクトして、身近な人に紹介することなどを伝える。

展開1

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・みんながよく知っている作品をみんなで見てみよう。
知っている作家、作品について話してもらう。
「レオナルド」「ゴッホ」「ムンク」そのうちの一枚を選んで、全員で鑑賞する。
まず、描かれているものについて話す。

さらに、「なにが」だけでなく「どんな風に」について、話す。
作品の特徴、面白さや滑稽さ、よさ、不思議さ、作家についてなど、出された意見をクラス全体でマップにまとめる。

・作家名を出してもらいながら、提示型デジタル教材『みる美術』の操作方法も伝える。
・発言者だけの意見にしないように、全体に向けて「どうですか?」の問いかけをしたり、「なるほど」などの共感をもってそれぞれの意見を受け止めたりする。
◇発言(その内容)、共感の様子、鑑賞の様子

・子どもたちから出された意見をマップにまとめながら鑑賞を展開する。
◇発言(その内容)、友達との話している様子、作品を見ている様子
<例>
二人の人―男女―話している、
ぐるぐるの空―青と濃い青―空ではないみたい

展開2

班ごとに、提示型デジタル教材『みる美術』を操作しながら、○○さんに紹介したい一枚を相談して、選び出す。
・選び出す過程で、キーワードをマップにためていく。
・出された意見をつなげて、具体的な相手を想像しながら、紹介メッセージを作成する。

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・グループで操作できるようにパソコンを準備する。
・よい視点や発言、グループのみんなが共感した発言、だれも気がつかなかった発言などをフォローしながら、グループを巡る。

◇話し合いの様子、マップメモ、作品を見ている様子

まとめ

・グループで自分たちの選んだ作品を①または②の方法で紹介する。
① 作品を見ずに、マップを見せながらクイズ形式で紹介し、実際の作品を見る。

なぜ、自分たちがこの作品を選んだのか、紹介したい人がこの作品を見たときの様子なども話す。

② マップをよりどころに、実際の作品を見せながら作品のよさを紹介する。
いくつかのグループが発表し、自分の感想なども発表する。

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・発表の仕方だけの感想にならないように、作品のよさなどについて、話し合いを展開する。

③指導のポイント
・キーワードをつなげて、マップをつくることにより、より深い鑑賞活動を導き出すことができる。
・グループで鑑賞をすることにより、友達のいろいろな見方や感じ方、考え方を知ることができる。
・デジタル画像のズーム機能を活用して、みんなが同じところを見ながら話を進めることができる。
・身近な人への作品の紹介を想定することで、自分の(自分たち)の感じたこと、考えたことを無理なく、整理まとめることができる。

4.感想

 美術館へ行ったり、作家を招いたり、実際の作品や鑑賞の対象を教室に持ち込んだりといろいろな鑑賞活動のひとつとして、本時の活動がある。つまり、小学校の鑑賞活動のすべてをこのデジタル画像で行うのではなく、デジタルの利点を生かした授業として、本時を構成することが大切である。
 また、1次2次については、特に順番があるわけではなく、高学年カリキュラム2年間の中で実施するとよいと考える。
 1次の比較鑑賞については、表面的な『描かれているものが同じ』作品という視点より、よさや面白さ、不思議さなどに共通感があるという視点からセレクションしたほうが、子どもたちの鑑賞の深まりや広がりが生まれやすいように感じている。
 また、2次の活動のように自分の(自分たちの)意見や思いを身近な周りの人に発信していくことも、「なんとなくいい」から一歩深めた鑑賞に展開することが、無理なくできると活動になる。このように、他者に自分の見たこと、感じたこと、考えたことを積極的に伝えることも意味があると考えている。