小学校 社会
小学校 社会

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名
「きょう土を開く」 ~最上堰をつくった人々の思いを考えよう~
2.目 標
○最上堰開削に力を尽くした先人の働きについて理解できるようにし,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。
○最上堰開削に力を尽くした先人の具体的事例を調べることを通して,地図や各種の具体的資料を効果的に活用し,社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。
3.評価規準
○社会的事象への関心・意欲・態度
最上堰開削に力を尽くした柏倉文四郎と安孫子兼治郎の働きに関心をもち,意欲的に調べようとする。
○社会的な思考・判断・表現
柏倉文四郎と安孫子兼治郎の働きを,地理的環境や歴史的背景,地域の人々の生活の向上と関連づけて考え,自分の言葉で表現している。
○観察・資料活用の技能
課題を解決するために,最上堰を見学したり,開削の目的や方法等について資料をつぶさに見たりして必要な情報を集めて読み取るとともに,わかったことや考えたことを新聞にわかりやすくまとめることができる。
○社会的事象についての知識・理解
中山町の人々の生活の向上が,柏倉文四郎や安孫子兼治郎の働きや苦心によるものであることがわかる。
4.本単元の指導にあたって
最上堰は,今から124年前,明治21年の4月2日に起工し,8ヵ月後に完成した。大江町の最上川から取水し,中郷と平塩,さらに中山町の岡・土橋・柳沢・金沢・向新田を貫流し,落合で須川に注ぐ。全長23kmで,約710ヘクタール余りを灌漑する堰である。
最上堰が完成する前は水不足で悩んでおり,長崎村の柏倉文四郎は,17歳の時から最上堰開削を思い立ち,その信念を持ち続けていた。文四郎が30歳の時に記録的な旱魃があり,雨のない日が100日を過ぎた。未曾有の惨状を見て最上川分水工事を力説したが,先人の失敗から,賛同する者はいなかった。一方,中郷生まれの安孫子兼治郎も県へ工事着手を要請し,工事実施の費用を捻出した。これによりようやく県議会も動き出し,郡長が管理者となり水利土功会を発足,二人は工事係を命じられた。最上堰の完成により,天水依存でなく200年間万人が望んでいたこの地に命の水をもたらし,荒廃地が美田と変わった。最上堰は,先人の開削に対する願いや開削の際の苦労や努力などをとらえさせ,地域社会の発展を願う態度を育成する上で適切な学習材であると考える。
本単元では,子どもが抱いた疑問をもとに単元を展開していく。「どうしてこんなに遠い大江町から取水したのか?」の疑問については,最上堰の経路となる中山町や寒河江市,大江町の地図をつぶさに見せ,土地の高さを最上堰の経路と関連づけて考えさせることで,高低差に気づかせる。また,「どのようにしてつくったのか?」の疑問については,当時使った道具などで実際に体験する活動を仕組み,その体験をトンネルで見たことと関連づけて考えさせることで,実感を伴った理解を図る。さらに,「だれが,どんな目的でつくったのか?」の疑問については,昔の人々の生活を,ため池や旱魃の様子と関連づけて考えさせる。
単元の終末では,先人の生き方から学んだことや,今後の自分の生き方について考えたことをまとめさせる。先人の努力が今の自分のくらしにつながっていることを学んだ上で,自分の生き方について振り返るきっかけにする。
5.単元の指導計画
時 |
学習のねらい |
子どもの活動と内容 |
評価規準の具体例 |
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1 |
・用水路の水がどこから流れて来るのか関心を持たせる。 |
田んぼの水は,どこから来るのだろう。 |
・田んぼの水がどこから来るのか,進んで予想しようとする。(関心・意欲・態度) |
・自分の生活経験をもとに,田んぼの水がどこから来るのか,自分の考えを書く。 |
|||
2 |
・用水路を途中まで逆に辿らせることで,水がどこから来ているのか,疑問を持たせる。 |
田んぼの水は,どこから来るのだろう。 |
・里芋畑の隣の田んぼの水がどこから来るのか,進んで調べようとする。(関心・意欲・態度) |
・用水路を逆に辿っていく。 |
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5 |
・用水路(最上堰)を逆に辿り,取水口まで行くことで,新たな疑問を持たせる。 |
田んぼの水は,どこから来るのだろう。 |
・最上堰を進んで見学し,自分なりの疑問を考えようとする。(関心・意欲・態度) |
・町のバスに乗り,用水路(最上堰)を逆に辿っていく。 |
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8 |
・わざわざ遠くの大江町から取水したのは,土地の高低差が関係していたことに気づかせる。 |
なぜ,わざわざ大江町の最上川から取水したのか考えよう。 |
・土地の高さを,最上堰の経路と関連づけて考えることで,高低差を利用して最上堰を作るために,わざわざ大江町の最上川から取水しなければならなかったことに気づき,考えたことを自分の言葉で表現している。(思考・判断・表現) |
・最上堰の経路と土地の高さが載っている地図を見て考える。 |
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9 |
・もっこで砂を運ぶ体験を通して,昔の人達が手作業で堰を作ることが,いかに大変であったかを実感させる。 |
昔の人達は,最上堰をつくる時に,どんな苦労をしたのだろう。 |
・体験を,トンネルで見たことと関連づけて考えることで,最上堰をつくった人々の苦労に気づき,考えたことを自分の言葉で表現している。(思考・判断・表現) |
・昔の人達が使った道具(のみ,木槌,もっこ,つるはし,くわ,じょれん)を実際に持ったり使ったりする。 |
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10 |
・昔の人達が生きていくためには,水が欠かせなかったことに気づかせる。 |
昔の人達は,機械がなくて大変なのに,なぜ最上堰を作ろうと思ったのだろう。 |
・昔の人達の生活を,ため池やかんばつの様子と関連づけて考えることで,生きるためには水が欠かせなかったことに気づき,考えたことを自分の言葉で表現している。(思考・判断・表現) |
・かんばつが江戸時代から何度も繰り返しあったことがわかる年表と,当時のため池と田んぼの様子がわかる地図をもとに考える。 |
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11 |
・多くの困難にぶつかりながらも,なんとか村人のために最上堰を作ろうと努力した2人の強い思いに気づかせる。 |
文四郎さんと兼治郎さんは,どんな思いで最上堰を作ったのだろう。 |
・年表から文四郎と兼治郎が多くの困難にぶつかりながらも,村人のために最上堰を作ろうと努力した2人の強い思いに気づくことができる。(観察・資料活用の技能) |
・17歳の時に最上堰開削を思い立ち,約30年後に完成させた文四郎のことや,飢えに苦しむ中郷村の人々を見てきた兼治郎こと,大かんばつの様子等がわかる年表をもとに,文四郎と兼治郎の苦労と強い思いについて考える。 |
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12 |
・最上堰が完成したことで村人(中山町)の生活が向上したことに気づかせる。 |
最上堰ができてから,人々の生活はどのように変わったのだろう。 |
・資料から,最上堰完成後の様子を読み取り,人々の生活が向上したことに気づくことができる。(観察・資料活用の技能) |
・最上堰完成前と完成後の田んぼの面積,米の取れ高がわかる資料をもとに考える。 |
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13 |
・2人の生き方から学んだことをもとに,自分自身の生き方について考えさせる。 |
文四郎さんと兼治郎さんの生き方から学んだことを考えよう。 |
・先人の生き方から学んだこと,今後の自分の生き方について考えたこと等をわかりやすくまとめることができる。(観察・資料活用の技能) |
・文四郎や兼治郎さんの,「みんなの役に立ちたい」という考えや,自分が思ったことを最後まであきらめないでやり遂げる姿などから,自分の生き方について考えたことを書く。 |
6.本時の学習
①目 標
昔の人々の生活を,ため池やかんばつの様子と関連づけて考えることで,人々が水不足によって米が取れず生活が苦しかったことや,生きるためには水が欠かせなかったことに気づき,考えたことを自分の言葉で表現している。(社会的な思考・判断・表現)
②学習展開
主な学習活動・内容 |
指導の工夫と教師の支援 |
資料 |
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1.前時の友達の振り返りを聞き,課題をつかむ。 |
・前時のK子の振り返りを取り上げ,今日はその疑問を解決していくことを告げる。 |
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昔の人達は,機械がなくて大変なのに,なぜ最上堰を作ろうと思ったのだろう。 |
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2.自分の考えを書く。 |
・考えの根拠にさせるため,はじめに資料を提示する。 |
〔資料1〕 |
3.話し合う。 |
・子どもの思考が深まるように,目標に向かうような第一発話者を選んで指名する。 |
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4.課題についてもう一度自分の考えを書いて,振り返りをする。 |
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昔の人達にとっては,生きていくために水がとても大切なものであることがわかった。昔はため池の水に頼っていたから,雨が降らない日が続くと干上がってしまい,田んぼに水を引くことができず,米が取れなかったのだと思う。そうなると食べ物がなくなって生きていけなくなるから,必死で水を田んぼに引こうとして水あらそいが起きたのだと思う。「毎年米が取れて安心して生活できるようになりたい。」という願いから,最上堰を作ろうと思ったのだと思う。 |