教育情報

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教育長の資質能力
2013.06.10
教育情報 <日文の教育情報 No.126>
教育長の資質能力
兵庫教育大学大学院教授 日渡 円

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■ 教育再生実行会議

 教育委員会制度の見直しについてはこれまでもいろいろと話題になってきたところであるが、昨年8月の中央教育審議会答申「教職生活全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」において、教員の資質能力向上に関しては大学における教員養成もさることながら、採用・任用・研修等々と採用後40年近くにわたって責任を負う教育委員会の責任の大きさが改めて指摘された。
 さて、教育再生実行会議であるが、先頃4月15日の「教育委員会制度等の在り方について」(第二次提言)において注目することに次のことがある。

①教育行政の責任体制を明確にするため、教育長を首長が直接任免すること。
②教育長に専門的識見とマネジメント能力に優れた者を充てることができるよう、現職の教育長や教育長候補者の研修など、「学び続ける教育長」の育成に国が一定の責任を果たす。
③県費負担教職員の人事権について、小規模市町村を含む一定規模の区域や都道府県において人事交流の調整を行うようにする仕組みを構築することを前提とした上で、小規模市町村等の理解を得て、市町村に移譲することを検討すること。
④指定都市の教職員の人事権者と給与負担者を一致させることを検討する。
⑤教職員の人事についての校長の権限を強化するため、市町村の教育行政部局は、校長の意向の反映に努めることとする。

 県費負担教職員の人事権の市町村への移譲については、平成19年の地方分権推進会議の勧告以来5年越しの課題であるが、教育委員会や教育長自身の反対で実現にはこぎ着けていない。すでに国民は5年も前から市町村教育委員会の自立を期待しているのである。人事権の移譲とは、言葉を換えれば、教育行政をそれぞれの自治体で責任を持つということである。何故進まないのか、何故反対なのか、そろそろ教育委員会や教育長自身が国民に説明すべきである。しびれを切らした地域が、学校支援地域本部やコミュニティ・スクールという方法で形を変えて教育委員会の自立や学校の自立を通して促しているといっても過言ではない。

■ 教育長調査

 さて、その教育長であるが、つい先日の調査で次のような結果が出た。
 一定の成果は一定の行動によってもたらされる。その行動は知識やスキルによって促される。その知識やスキルは特定の経験から得られる。その教育長にとって最も重要な行動は、課題に対し、対策を練る過程において、情報収集や分析などを行い、新たな施策を進めようとする行動をさす「対課題行動」と、教育行政を展開する上で、事務局等へのはたらきかけを行ったり、組織内外の調整を図りながら施策を進めようとする行動をさす「対人行動」から成り立つと言われていたが、「対課題行動」には変革から維持までの幅があり、「対人行動」にも統率から調整までの幅があることが分かった。
 「対課題行動」を横軸に、「対人行動」を縦軸にして現在の教育長のタイプを調べたら、変革・統率タイプが24%、変革・調整タイプが22%、維持・調整タイプが44%、維持・統率タイプが10%という結果が出た。
 この調査から分かったことは、まず人材タイプの多様性があることである。言い換えれば教育長の人材はかように豊かなのである。問題は、各自治体の教育長のタイプがどのようなタイプであるかでなく、各自治体の抱える教育課題と教育長のタイプがマッチしているかということである。変革の必要な自治体にマッチした教育長のタイプであるか、維持の必要な自治体にマッチした教育長のタイプであるかということである。このことは、教育長候補者への研修ということと考え方やイメージが一致する。また、長く教育長を続ける人は、その時々に自治体が抱えている教育課題に対して解決に必要な能力を獲得すべく研修や学びをしなければならない。このことは、現職教育長への研修ということと考え方やイメージが一致する。
 それにしても、第3の教育改革の時代と言われる現在に、維持・調整タイプが教育長の半数近くであることは注目したい。

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