ROOT(算数・中学校 数学)

ROOT(算数・中学校 数学)

これからの算数・数学教育
2012.08.02
ROOT(算数・中学校 数学) <No.08>
これからの算数・数学教育
中原 忠男(環太平洋大学 学長)

冊子表紙

 今年度から、中学校で新しい教科書の使用が始まり、改訂された学習指導要領に基づく算数・数学教育が本格的な時代を迎えています。こうした折を踏まえ、今一度これからの算数・数学教育の課題について、3つのことを強調したいと思います。

1.重要性に応える算数・数学教育

 今回の改訂は終始一貫して、「算数・数学教育は重要であり、重視する」という方向のもとで進められました。こうした方向が打ち出された背景として、次の諸点を挙げることができます。

①知識基盤社会が到来したこと
②算数・数学が生活や学習の基盤となること
③算数・数学が論理的に考える力を培うこと

 知識基盤社会の時代を迎え、国民生活の向上を図るために科学技術開発に力を入れ、国際競争力を一層高めていくことは非常に重要な国家的課題です。その基盤として算数・数学教育の重視が打ち出されました。②、③は不易な重要性ですが、今回こうした点が中央教育審議会等で広く認知された意義は大きいといえます。今日、算数・数学教育がかつてないほど国民から大きな期待を寄せられ、非常に重い役割を担っていることは銘記しておくべきです。

2.「生きる力」を培う算数・数学教育

 「生きる力」は、前回の学習指導要領改訂において重要な教育目的として打ち出されました。その内容を端的に言えば「①自己教育力 ②豊かな人間性 ③健康と体力」の育成ということになります。今回の改訂では、その重要性が再確認され、内容の充実が図られました。とりわけ、前回は「何のための生きる力」かが見えにくかったのですが、今回は「自立的に生きる」「自己実現」「社会全体の発展の原動力」のためであることが明確化されました。これからは、算数・数学教育においても「生きる力」を培っていくことが重要となります。

3.学力の向上を図る算数・数学教育

 今回の改訂においては、学力の向上も非常に重要な課題とされました。幸い、平成21年に行われたPISA調査において「数学的リテラシー」は、前回と比較してわずかですが向上がみられました。しかし、国際的な点数も順位も平成12年の第1回調査結果には達していません。また、国内の全国学力調査の結果は活用力に課題があることを示しています。したがって、学力の向上を図ることは引き続き重要な課題です。世界トップレベルではなく、再び世界のトップに位置づく算数・数学教育をぜひ実現していきたいものです。