教育情報

教育情報

若い先生たちに言いたいこと
2012.11.07
教育情報 <日文の教育情報 No.119>
若い先生たちに言いたいこと
大阪教育大学 監事 野口 克海

■ その1 パソコンではなく先輩に相談しよう

 小学校の女性教頭さんが言いました。
 「先生、この頃の若い先生はパソコンから指導案を引っぱり出してきてスマートにまとめる人が多いんです。先輩に聞こうとしないんですよ。」「授業というのは生き物だから、子どもたちのことを知っている先輩と相談して、きっとこんな反応が返ってくるよ、とか、これはあの子はわかってくれるかな? とか想像しながら指導案って作るものですよね。」「パソコンの通りにいかなくなって、授業がうまくいかない若い先生が多いんです。」
 そこで私は、「あんたの学校には、若い先生たちが相談したくなるような先輩がおらんのと違うか?」とは言わずに、「この頃の若い先生は、すぐ情報機器に頼るよね。人とつながるコミュニケーションをとるのが面倒くさいのか、パソコンと相談するのが気楽でいいと思っているんやろね。」と答えました。
 そこで一言 「若い先生たち、パソコンでなく先輩から学べよ!」

■ その2 名刺ぐらい持っとけ!

 大阪のある幼・小・中連携に取り組んでいる中学校区の先生たち5人が、大学の私の部屋に講演の打ち合わせに来てくれました。
 「一中の○○です。」「××小の○○です。」「△△小の□□です。」「○○幼稚園の××です。」「××幼の○○です。」
 一人ずつ立ったまま自己紹介してくれました。
 私は自分の名刺をそれぞれに渡したあと、「5人もいっぺんにおぼえられへんなあ、名刺ぐらい持っとけ!」と言ったあと、「どうぞ、まあ座って…。先生というのは名刺持ってない人多いなあ、社会人になったらたいていの人は名刺持ってるやろ、これは先生という立場の人たちのう・ぬ・ぼ・れ・と思うで。
 “どうぞよろしくお願いします”という気持ちで名刺を出してご挨拶する習慣がないからなあ。“先生である俺の名前ぐらいおぼえとけ”と思ってるから名刺作らんのかねえ。『教師の常識は世間の非常識』と言われることのひとつやろ。それでは地域の人たちと謙虚につながって開かれた学校づくりなんて、できっこないよ。」
 「幼小中連携の一番大切なこと何か知ってる? 幼小中連携と言えば、①段差の解消、②学力向上、③地域とのつながり、とか普通は言うやろ? そんなの立て前や。一番大事なことは先生どうしが仲良くなることやで。小学校の先生が道で中学校の先生に出会った時、
“○○ちゃん、この頃ちゃんと学校に行ってますか?”
“大丈夫ですよ、元気に来てますよ!”
“よかったあ。よろしくお願いします。”
というような、気になる子どもの話がいつでもできる先生どうしの関係をつくることが連携やで。教育は人なりって言うやろ、一度幼小中の5校園の先生が集まって、名刺の交換会から始めたらどうですか。」と言いました。
 そこで一言 「若い先生たち、名刺ぐらい持っとけ!」

■ その3 教育は「熱と涙」

 若い先生たちの感度は良好です。
 この夏休みの終わり頃、若い先生たちに講演する機会がありました。私は以下のような話をしました。

・教育は「熱と涙」学校なんて「教師次第」。
・子どもは環境によってつくられる。人は環境を変えることができる。
・受け身でなく、攻めの仕事を。
・子どもが心から血を流しているかどうかは心でしか見えない。教師がそれを感じとれる人権感覚を。
・たくさんの人が集まる行事やセレモニーよりも、一人の困っている子どもを支える家庭・学校・地域の取り組みが大事。

 真面目だけど言われたことだけ、受け身、無理しない内向きな若者が増えていると言われている。
 学校の先生たちも例外ではない。目の前の仕事をこなすのに精一杯の多忙な生活を送っている人も多い。
 若い先生たちが、前向きに熱い思いをもって、子どもたちと一緒に涙できるように、必死で取り組んで欲しいと願って語った。
 後日、先生たちが一枚のポスターを持って来てくれた。
 「先生の言われたフレーズを、写真入りのポスターにして、皆が目につく場所、印刷室の壁に貼っています。」
 「やる気をだして、頑張ってます。ありがとうございました。」
 そこで一言 「教育は熱と涙やで!」

著者経歴
元 大阪府堺市教育長
元 大阪府教育委員会理事 兼教育センター所長
元 文部省教育課程審議会委員

日文の教育情報ロゴ