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「つながり」から学ぶもの
2011.02.14
生活&総合navi(生活・総合) <生活&総合教室 Vol.60>
「つながり」から学ぶもの
い~め~る より
あんびるえつこ

生活&総合教室No.60 表紙

 娘の通っていた同仁美登里幼稚園(東京都文京区)は、都会の真ん中にありながら自然に溢れていました。ビオトープの池に、カエルのタマゴが溢れるようになると春の到来を、トンボが飛ぶようになると秋の訪れを知ることができました。
 そして、春には池の端に生えてきたヨモギを摘んでヨモギもちをつくって食べ、夏には園長先生手づくりのシソジュースで喉をうるおします。収穫の秋になると、落ち葉をかき集めてお芋を焼いたり、軒につるしてある干し柿を食べたり…。
 消費社会に育つ娘にとって、こうした体験は貴重なものでした。スーパーに並んでいるのは、季節を問わない「食材」であり、命の営みとは切り離された存在です。この頃は、そうした「食材」を料理するのさえ、家庭から工場へととって代わり、口に運ぶものは、冷凍庫から電子レンジという二つの魔法の箱へ移せばできてくるものになっています。
 それだけではありません。そうした「食材」を購入する「お金」もまた、電子マネーやクレジットカードの普及により、見えにくくなっています。お家の人の働く姿も、働いて手にしたお金も、使うお金も…すべてのつながりを、子どもが想像するのは、ますます困難になっています。
 つながりが見えないと、様々な感謝の気持ちが失われるような気がするのです。命をいただくことへの感謝、調理していただくことへの感謝、働いて収入を得させていただいていることへの感謝…。いろいろなことが「ありがたいなあ」と思える、しあわせな大人になるためには、見失われたつながりを、一つひとつ取り戻す体験を、大人が工夫して子どもに与えなくてはいけないのではないかと、このごろ強く感じます。
 今、娘は小学3年生になりました。毎年、秋風を感じる季節になると、甘い幼稚園の干し柿を、そしてその柿を根気強くつるしてくれたり、取ってくれたりした幼稚園の先生方の手を、恋しがっています。

あんびるえつこ

あんびるえつこ

1967年、神奈川県横須賀市生まれ。
新聞社で生活経済記事を担当しながら、日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。退職後は、新聞や雑誌の家庭経済に関する記事の執筆、全国各地の小学校、中学校でワークショップや講演活動などを行っている。
一男一女の母。
神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事。
著書は『「お金」のしつけ 子どもの「困った行動」に親はどう対処すべきか?』(PHP文庫)ほか。
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