小学校 生活

小学校 生活

「大すき! ○○小学校」(第1学年)
2013.06.24
小学校 生活 <No.002>
「大すき! ○○小学校」(第1学年)
山梨県 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

大すき! ○○小学校
15時間 1月~2月

2.単元のねらい

 本単元は,おうちの人から届いた手紙をきっかけに入学後1年間を振り返りながら,過ごしてきた学校での時間や出来事,場所や人への愛着と,そこでの自分の成長を実感し,今後の学校生活に意欲や自信をもつことができるようにすることをねらいとしている。個々の充実感や活動を学級全体で交流し共有する時間を設定することで,自分だけではなく,友だち一人ひとりにも満足感や達成感,大好きなものとの思い出があることに気付いてほしい。さらに,その気付きに共感することで,自分を取り巻く多くの人々や生活を共にする友だち,また,自分の成長につながる一年間の多くの体験に対する気付きへと広げていきたい。
 子どもたちは,今の自分を起点にして4月までを振り返り,今感じている思いや成長に至るまでに,どんな出来事があったのかを思い出しまとめてきた。そして,それを学習参観でおうちの人に教えたいという目標に向かって取り組むなかで,友だちの思い出に対する興味が出てきた。話し手は,自分自身が身につけてきた力とともに,毎日過ごした学校,クラス,仲間への愛着に気付くとともに自分への自信をもち,それを自分なりの方法で伝えていく。そして聞き手は,友だちの話を手がかりに,自分と「大好きなもの」とのかかわりを,より詳しく伝える方法に気付き,おうちの人にもっと伝えたい,これも教えたいという願いが膨らむ。また,友だちと自分との共通点や違いに気付き,様々な思い出があることを実感し,一人ひとりが満足感や学校生活の充実感をもてていることを感じながら「自分っていいな。あの子っていいな。このクラスっていいな。仲間と成長しながら来年もすごしていきたいな。」という実感をもってほしい。

3.単元の目標

 入学してからこれまでの学校生活について振り返り,自分だけではなく,友だち一人ひとりにも満足感や達成感,大好きなものとの思い出があることに気付くことができるようにするとともに,これからの学校生活に対する希望や期待をもつことができるようにする。

○生活への関心・意欲・態度
・入学後1年間を振り返りながら,過ごしてきた学校での時間や出来事,場所や人への愛着と,そこでの自分の成長を実感し,今後の学校生活に意欲や自信をもつ。

○活動や体験についての思考・表現
・おうちの人からの手紙をきっかけに,今の自分が得意なこと・好きなものを思い浮かべ,今を起点に一年間を振り返ることができる。
・振り返ったことをもとに,自分の伝えたいことを伝えたい内容にあった方法で表現し,おうちの人や友だちに教えることができる。

○身近な環境や自分自身への気付き
・学校生活や思い出を振り返ったり,伝えたいことを表現したり,おうちの人や友だちに教えたりする活動をとおして,友だち一人ひとりにも満足感や達成感,大好きなものとの思い出があることに気付くことができる。さらに,それぞれの気付きを共有することで,自分と仲間の成長に気付くことができる。

4.活動の計画

事前準備
 三学期が始まってすぐに,活動への意欲づけのため,おうちの方に手紙のお願いをした。手紙は,導入時だけではなく,活動全体に関わるものである。「手紙の返事をしたい。おうちの人に教えたい。」と子どもたちにとって本単元を通しての目標となるものにしたかった。そのため,学年便りで次のお願いをした。

~手紙のお願い~

1 入学の頃を振り返って
・入学を控えた3月や入学式の頃を振り返り,お子さんの様子(不安,喜び)やおうちの方の気持ちを書いてください。
例1「1年生になったばかりのころ,○○ちゃんは…だったね。」
例2「1年生になるまえ,おとうさんと おかあさんは,…きもちだったよ。もうすぐ○○小学校に にゅう学してから1年たつんだね。」

2 保護者の皆様が小学生だった頃の,学校での思い出
・小学校で好きだった,場所や時間,遊びなどを書いてください。
例1「おとうさんが小学生だったころ,○○のじかんが 大すきだったよ。」
例2「おかあさんが小学生のころは,いつも○○をしていたよ。」

3 お子さんへの質問・投げかけ
・お子さんが「おうちの人に教えたい。」と思えるような投げかけをお願いします。
例1「○○くんは,○○小学校で どんなことが すきになったの?ききたいな。」
例2「○○ちゃんの,おきにいりの○○(場所,遊び,人)を おしえてね。」
例3「おとうさんもおかあさんも しらない ○○小のおすすめの○○(場所,遊び,人)を見つけたかな?」

*いただいた手紙は,『大好き!○○小学校』の学習で子どもたち一人ひとりが開封します。保護者の皆様からいただいた手紙をきっかけにして,一年間の成長をまとめていく学習を展開していこうと考えています。 

環境設定
●「しょうかいしよう」(11/15時間) 場の設定

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おはなしグループ

・8~9名の4つのグループに分かれて,一人ひとりが大好きな○○小学校でのことを伝える。
・お話は3交代で,6分ずつ行う。
・6分間の中で,聞く側の子は,3人の話す子の所に自由に行き話を聞く

話し合いグループA(1・8班)
図書室(3)・友情の輪・なわとび・給食(2)・切り株・鉄棒

話し合いグループB(2・3班)
フラフープ・なわとび・折り紙・国語・給食(3)・なわとび(2)

話し合いグループC(4・7班)
なわとび(2)・給食・1年2組・あそび・フラフープ・切り株・先生・図書室

話し合いグループD(5・6班)
給食(2)・図書室(2)・なわとび(3)・ペントミノ

5.単元の流れ

活動[時数]
●内容 ★ねらい

子どもの活動の様子

1 手がみがとどいたよ
[1時間]
●お家の人から届いた手紙を読もう。
・僕の好きな場所を教えたい。
・私の一番好きなものって何だろう?
・大好きな人を紹介したいな。

★お家の人からの手紙を読み,学校のことを家族に教えたいと意欲をもつ。

1月16日(木)1校時(教室)
 お家の人から届いた手紙を手に,「早く読みたい。」「何て書いてあるのかなあ。」と子どもたちはとてもうれしそうにしていた。いざ,読むときになると丁寧に封筒を開き,真剣なまなざしで何度も何度も読み返していた。「お父さんも小学校でサッカーやってたんだ。同じだ。」「お父さんの小学校は給食があまりおいしくなかったんだって。ぼくたちと違うね。」「質問も書かれてる。」と口々に話し始めた。お家の人の子ども時代の遊びや好きだったこと,聞かれている質問を教え合った。
「返事の手紙,書きたい。」「書こう書こう。」「手紙だけはつまらない。」「サプライズしたい。」「学校に呼びたい。」などと話し合いが進み,お家の人に教えてあげたいと意欲をもつことができた。「先生,学習参観ある?」と聞かれたので,2月14日にあることを伝えると,「そこだ!」と目標の日が決定した。

2 大すきな○○小学校
[2時間]
●すきすきカードをかこう。
・場所・給食メニュー・人・時間・勉強・行事など,この1年間で好きになったを挙げていく。

★好きな場所,好きなものなどについて思いをふくらませ,自分の紹介したいものを決める。さらに,紹介する方法を考える。

すきすきカード。何を教えてあげようかな。

すきすきカード。何を教えてあげようかな。

1月16日(木)2校時(教室)
 「何を教えてあげようか。」という教師の問いかけに対し,「好きなこと」「じまんできること」「とくいなこと」が挙がり,①給食(メニュー,当番)②遊び(サッカー,なわとび,折り紙…)③授業(体育,生活,きれいな字…)④場所(遊具広場,友情の輪…)⑤時間(図書,掃除,下校…)⑥秘密(木の切り株,放送局…)⑦人(1年2組のみんな,友だち,先生)⑧行事(運動会,たてわり)などが積極的に出された。友だちの考えを聞いて「いいね!」「賛成!」などの言葉とともに,うなずいたり拍手をしたりする姿も見られた。
 本時はクラス全体で思い出すままに出し合ったが,次の時間には,自分が教えたいものを決めることを伝えると,腕組みをして表を見つめ,どれにしようかと考えている児童もいれば,「これ」と決まっている様子の児童もいた。

3 大すきな ○○小学校を もっと くわしく おしえて
[7時間]
●くわしくおしえるためには…。
・インタビューをしに行こう・改めて見に行こう。
・観察しよう・思い出そう・振り返ろう。
・練習しよう・調べてみよう。
・わかりやすく伝えるにはどうやってまとめようか。

★好きな場所や好きなものについて自分の気持ちを伝えるための方法を考え,調べたりインタビューしたりする。

教えるために必要こと。

教えるために必要こと。

1月30日(水)3・4校時(PR=プレイルーム)
 「今日の活動で,したいことは?」の問いかけに「絵の続きを描きたい。」「教えるときの言葉を書きたい。」「詳しくしたい。」「本物を見に行って描いてきたい。」といった思いが出された。実際にその場所へ行き,質問や観察に行く児童もいた。活動中,教えたいことや好きな理由を書きながら,さらに教えたいことに気付く児童がいた。「好きな給食を教えたい→理由は調理員さんが…だから→当番の仕事で…だから→調理員さんのことも教えたい→配膳がうまくなったことも伝えたい→やってみよう」「大好きななわとびの話をしたい→一緒に遊んだ友だちも描こう→友だちがアドバイスをしてくれたからできるようになったんだ→うれしかったときの気持ちも教えたい」というように広がりが見られた。その一方で,教えたいことや教え方に自信がもてずにいる児童には,教師が質問をしたり対話を繰り返したりしながら,その時間のことやそこでの出来事を聞き出し,表現できるようにした。

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1月31日(木)2校時(PR)
 「昨日よりもっとしたいことはある?」と問いかけると,「好きになった理由を書きたい。」「好きになるまでのことを書きたい。」「思い出を書きたい。」「今まで絵ばっかりだったから,話す文を書きたい。」などの意見が出た。選んだ対象とのかかわりや出来事に目を向けられる児童が増えてきた。好きな給食ランキングに取りかかっていた児童は,これだけではおうちの人を喜ばせることはできないと考え,給食室の見学や調理員さんとの会話をしたいと考え始めた。

さくせんタイム。おうちの人が聞きたいことって?おうちの人が知りたいことって?

さくせんタイム。おうちの人が聞きたいことって?おうちの人が知りたいことって?

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2月1日(金)1校時(教室)
 「おうちの人にお話ししたとき,どんなふうに思ってもらいたい?」その問いかけに対し,「喜んでほしい。」「わくわくしてほしい。」という考えが出た。「他に,こうなってほしいってことがある?」と考えていった。「がんばったことを知ってほしい。」「何をしてきたのかを知ってほしい。」「知ってほしいのは,一年間の思い出。」という考えから,自分のお話を振り返ることにした。「みんなのお話で,『おうちの人にこう思ってほしい。』が叶えられる?」班ごとに,足りないことやもっと書きたいことを話し合った。「対象と出会ったときのこと」「一緒に過ごした日のこと」「けんかや失敗」などの思い出や出来事,気持ちをもっとたくさん伝えたいとふくらんだ。

2月1日(金)2校時(PR)
 2校時の始め,好きな給食ランキングを書いていた児童から「給食の先生に話を聞きたい。そのこともおうちの人に教えたい。」と希望が出た。給食について教えたい児童同士誘い合って,給食室に行くことにした。戻ってきた児童は,好きな給食だけではなく,大好きな給食がつくられている場所やつくってくれている人についても教えたくなった。「一年間」という長い時間の出来事を伝えたいという意識が強く表れてきた。
 授業の終わりに近づくと,今日の活動でどれくらい教えたいことがふくらんだかを,2本の指や腕の幅で表す姿が見られた。初めのころと今を比べたり,友だちと比べっこをしたり様々である。次はもっと書こう,これを書こうと会話を楽しんでいた。「今日は何を書いたの?」「みんなのも聞きたい。気になる。」「ヒントになるかも。」「アドバイスをもらったり。」「僕も。聞いてほしいし。」「先生,今度見せっこしていい?」「いいね!」そんな会話から,来週,お試しでお話をすることになった。

2月4日(月)1校時(教室・PR)
 授業の始めに今日の作戦を考え,作戦が決まった児童から活動に取り組んだ。「見に行く・聞きに行く」「つくる」の他,「どこでだれと」「最初のころ」「楽しかったこと」「がんばったこと」「成功や失敗」を思い出すことに作戦は集中した。作戦に沿って熱心に取り組む様子が見られた。おうちの人に話す前に,お試しの話をすることに決まったことで,気持ちも高まったようだ。

4 ともだちにおしえてあげよう
[4時間]
●しょうかいしよう。
・「みんなの大好きを見てみよう」
・好きな○○は□□です
・どうしてそこがいいの?
・どうしてその人がすきなの?

★大好きな○○小学校のことを伝える交流活動を通して,友だちの気持ちに共感したり,自分との違いに気付いたりすることで,自分のやりたいことを見つけることができる。

友だちに紹介する様子。

友だちに紹介する様子。

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●バージョンアップをしよう。
・友だちからの質問への答えを書きたそう。
・友だちの良いところを参考にしよう。

★お家の人に,自分と「大好きなもの」との関わりや大好きな気持ちを詳しく伝えるために,絵や文を書き足す。

2月6日(水)5校時(PR)
 「今日の活動で楽しみなことは?」という問いかけに対し,「お話を友だちに聞いてほしい。」「友だちの話を聞きたい。」「話したり聞いたりして,アドバイスをもらいたい。」「バージョンアップできるかも。」という答えが返ってきた。みんなの大好きな場所や大好きな人の写真をパワーポイントで提示し,友だちの「大好き」に興味をもてるようにした。今まで個人での作業だったにもかかわらず,写真を見ただけでだれが選んだものか分かっている児童もいた。
 4つのお話グループに分かれ,お話を聞き合った。絵をのぞき込んで話を聞いたり,質問をしたり,ほめ合ったりしながら,自然と拍手が起こっていた。
 再び全体で集合し,振り返りをした。「お試しをして,どんな『すてき』があった?カード(7.教師の手立て参照)を使ってお話ししてみよう。」「選んだものは同じだったから,好きっていう気もちがわかった。でも,好きな理由が違ってびっくりした。」「○○くんに,そんな思い出があったなんて知らなかった。」「できなかった頃や,できるようになったときの気もちが,よくわかった。私にもそんな時があったなって思い出した。」「できなかったときのことを書き足したい。」「もっと思い出を書こうと思った。」
 友だちの話を聞いて,もっとしたくなったことが出てきたので,10分間バージョンアップに取り組んだ。

2月7日(木)3校時(PR)
2月13日(水)1・2校時(PR)
 前時に見つけた「もっとしたいこと」にそって,自分の作品をバージョンアップさせていった。思い出や失敗,成功したときの気持ちの他,二年生に向けての目標や友だちへのメッセージなども書き足された。時間さえあれば何時間でも続けられそうなほど熱中している。友だちに話したことで,「もっとわかりやすく伝えるためには。」と考えたり,話し方の練習をしたりと「お家の人に早く教えたい。」という気持ちもさらに強くなった。言葉だけではなく,実物や実際にやっているところを見せたいという思いも出てきた。


5 おうちの人におしえてあげよう
[1時間]
●ぼく・わたしの大すきをおしえてあげよう。
・大好きな○○を見つけたんだよ。
・こんなにがんばったんだよ。
・すごいでしょ。
・こんなことをしてすごしてきたよ。

★紙芝居や絵本,模造紙を使って,大好きな○○小学校のことをお家の人に伝える。

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2月14日(木)5校時(教室)
 授業の導入として,「しょうかいしよう」で使った写真に加え,手紙が届いてうれしそうに読んでいるときの様子や,今日まで準備してきた日々の写真をパワーポイントで紹介した。その後,生活班分かれて班ごとにお家の人にお話を始めた。
 友だちに話したときに比べ,相手の見やすさを考えた伝え方ができていた。模造紙は壁に貼って指し棒を使い,絵本は相手に絵や文が見えるように持って話をしていた。友だちやお家の人を大好きな場所に連れて行き,なわとびやフラフープ,鉄棒などは,テラスで披露する姿が見られた。

2月15日(金)3校時(教室)
 活動の振り返りをした。今までのがんばりや工夫したことを話す友だちに対し,「そうだったね。がんばっていたね。」「そのアイデアは僕もまねっこしたよ。」「○○ちゃんすごかったよね。」などと相づちをうっていた。
 「大好きな○○小学校のことを考えながら一年間を振り返ってみたけど,この一年はどんな一年だった?」と問いかけた。「大好きなものをいっぱい見つけた。」「得意なことが増えた。」「初めは全然知らなかった学校のことが,今はいっぱい知っていて,家の次にほっとする。」「僕もすごく成長したけど,みんなも同じくらい成長していた。」という答えが返ってきた。
 「これからみんなは二年生になるんだね。どんな二年生になるんだろうね。」と投げかけると,「今よりパワーアップするよ!」「ちょうどまた一年たったら,もっとすごくなってるね。」「早く二年二組になりたい。」と口々に話していた。

6.成果と課題

 子どもたちは,自分はもちろん,友だちにも大好きなものや大切な思い出が様々にあることに気付き,一人ひとりが満足感・充実感を持てていることを感じ取ることができた。
 クラスの中には「伝えたいことはあっても表現が苦手」「表現できてもお話が苦手」「したいことがあり理想が高くても力が伴わない」などといった子どもたちがいる。しかし,どの子も手紙がうれしく,お家の人が大好きで,自分が成長したことを感じており,それを伝えたいと思っている。本活動では,自分の選んだ方法で,その思いを目に見える形に表し伝えることができた。手紙が届いたこと,友だちと見せ合うこと,友だちやお家の人と対話すること,だれかにほめられること,その繰り返しで意欲は生まれ,願いが広がっていった。
 本活動は,個人での活動が多い内容であった。子どもたちの意欲が強まり,また,持続するためにも,教師の目・気付く心・伝える言葉がいかに必要なことで難しいことかを感じた。今後も一人ひとりを大切にし,子どもを見つめる目を養っていきたい。

7.教師の手立て

 友だちの話を聞いて,感想や意見を言うときに3枚のカードを活用している。

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 1.共感 自分にもそんな経験あるよ。気持ちがわかる。

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 2.驚き びっくりしたよ。知らなかった。すごいね。

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 3.感心 そうだったんだ。なるほどね。