学び!とシネマ
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愛する妻が死にました――だから私は旅に出ます

(C)WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
世のなかには、いろんな出会いもあれば、さまざな別れもある。長く生きた老人はもちろん、幼い子どもでも実の親との別れがある。
人は、どのような立場にあっても、いろんな人とつきあい、愛し、希望を持って、生きていかなければならない。
そんなメッセージが伝わる映画が、「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」、「レミーのおいしいレストラン」などを製作したピクサーの新作アニメーション「カールじいさんの空飛ぶ家」(ウォルト ディズニー スタジオ ピクチャーズ ジャパン配給)である。
カールじいさんは78歳の一人暮らし。幼いころは、シャイで無口、いつも飛行帽とゴークルを愛用する冒険好きな子どもだった。知り合ったエリーは、おてんばで活発、カールと性格は違っているが、冒険好きは同じである。
やがてふたりは結婚、幼いころの秘密基地を改造した家で、ずっと幸せに暮らしていた。カールは動物園の風船売りで、風船の扱いは得意である。子どものいないふたりの夢は、南アメリカにあるという伝説の滝パラダイス・フォールに飛行船で出かけること。
エリーは病気で死ぬ。ひとり残されたカールは、エリーとの思い出の詰まったアルバムを見ては、ため息のつく日々である。
そこに宅地開発が始まり、カールは立ち退かざるをえなくなる。カールは、家にたくさんの風船をつけて旅立つ決心をする。
近所に住む8歳のラッセルが、飛び立った家のドアを叩く。不幸な身の上のラッセルもまた冒険好き。自然探検隊に入っていて、たくさんの表彰バッジを持っている。欲しいバッジは、「お年寄りのお手伝いをした」というバッジだ。
カールとラッセルは、旅立っていく。
カールは、エリーと夢見たパラダイス・フォールを目指すが、その行く手には、とんでもない状況が待ち受けている。
ほのぼのとした前半に、コミカルでスリリングな冒険ストーリーが展開する。カールじいさんとラッセル少年の関係が、きめ細かく描かれ、やがてふたりは、かけがえのない間柄になっていく。
ずんぐりとしたカールや、太っていて可愛いラッセル以外にも、個性的で愉快なキャラクターがズラリ。また、カールの憧れの冒険家が悪役で登場し重要な役割を果たす。途中から旅に加わる犬のダグ、ジャングルに住む色あざやかな鳥のケヴィンたちのしぐさやセリフは、爆笑ものである。
これは、大人も子どもも楽しめる、ディズニー映画の王道。笑って笑って、ハラハラしながら、ちょっぴり涙。それぞれの世代が、正しいこと、生きること、愛することの意味を、深く考えさせてくれる。
2009年12月5日(土)全国ロードショー!
■「カールじいさんの空飛ぶ家」
監督:ピート・ドクター
共同監督:ボブ・ピーターソン
プロデューサー:ジョナス・リヴェラ
製作総指揮:ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
原案:ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン、トム・マッカーシー
脚本:ボブ・ピーターソン、ピート・ドクター
音楽:マイケル・ジアッチーノ
編集:ケヴィン・ノルティング
プロダクション・デザイナー:リッキー・ニエルヴァ
スーパーバイジング・テクニカル・デイレクター:スティーヴ・メイ
スーパーバイジング・アニメーター:スコット・クラーク
キャラクター・スーパーバイザー:トーマス・ジョーダン
原題:UP
2009年/アメリカ/ドルビーSRD-EX/ビスタサイズ/123分
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン