学び!とシネマ

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手のひらの幸せ(2009・日本)
2009.12.21
学び!とシネマ <Vol.45>
手のひらの幸せ(2009・日本)
両方の手に幸せをもらうと涙がふけないよ…
二井 康雄(ふたい・やすお)
ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

©ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

 知り合いの長岡市長 森民夫さんの「ほっと一息」というブログで、「手のひらの幸せ」という映画を長岡のあちこちで撮影しているということを知ったのは、7月である。
 幼いころから不幸な境遇の兄弟が、いたわりあって生きている。また、周囲のいろいろな人たちが兄弟に善意の手をさしのべる、といった映画のようである。原作は、歌手の布施明。歌手生活40周年記念のコンサートで朗読して、感動を呼んだという童話「この手のひらほどの倖せ」に基づいている。
 このほど、映画「手のひらの幸せ」(ゴー・シネマ配給)が出来上がった。

ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

©ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

 昭和33年の新潟県の長岡。母親を亡くし、父親は出稼ぎに出たままの幼い兄弟が、唯一の身寄りである祖父を亡くしたというところから映画は始まる。兄弟は希望苑という施設に引き取られる。
 昭和48年。兄の田中健一(河合龍之介)は大工見習いとして東京で働いている。高校生になった弟の龍二(浅利陽介)は施設にいた小さいころに、三条で印刷業を営む竹林家の養子となり、家業を継ぐつもりでいる。音楽の好きな龍二は高校の吹奏楽部に所属、フルートを吹いている。
 毎年の夏、龍二のことを心配する健一は三条に戻ってくる。竹林夫妻は、龍二をなんとか大学に行かせたいと健一に話す。健一もまた、龍二に大学に行くように勧める。

 入学の前祝いとして、健一はなけなしの給料から、龍二にフルートをプレゼントする。健一は出稼ぎに行ったまま帰らない父親の消息を調べている。やがて、高速道路の工事に出かけたまま、事故で死んだことを知る。兄弟は田中家の先祖の眠る墓に父の遺骨を埋葬し、龍二は「アメージング・グレイス」を吹く。

ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

©ドリームワンフィルム/ドロップオブスター/ランテル・メディエール/シージェイネットワークス/T―artist

 二人は、希望苑にいたころを回想する。施設を抜け出して、祖父と暮らした家に向かったときのことなどを。
 大学受験を直前に控えた龍二に、悲しい知らせが届く・・・。

 美しい風景が描かれる。長岡の栃尾地区など、小高い山並み、棚田が続き、わらぶき屋根の残る場所である。施設を抜け出し、祖父と暮らした家に向かう兄弟。お腹がぺこぺこ、柿をとろうとするが、西田敏行扮する家主に叱られる。訳を知った家主はおにぎりと柿を兄弟に与える。「両方の手に幸せをもらうと、涙が拭けないね」と健一。
 時代は、高度成長を遂げ、さらに豊かさを求めていたころである。純朴に、健気に生きる兄弟を見て、幸せとはいったい何かを、じっくりと考えさせられる。

 音楽をあきらめないようにと龍二に言う先生役に仲間由紀恵、健一の務める工務店の大工の棟梁に永島敏行、龍二の養母に生稲晃子が扮し、脇を固める。
 奇をてらわず、正攻法な演出は加藤雄大。黒澤明監督の下で長く撮影助手を担当、本作が監督としての第一作となる。

2010年1月23日(土)有楽町スバル座ほか、全国ロードショー!

「手のひらの幸せ」公式Webサイトico_link

監督:加藤雄大
プロデューサー:佐藤ヒデアキ
脚本:桑田健司
撮影:三栗屋博
音楽:伊藤ひさ子
編集:太田義則
出演:浅利陽介、河合龍之介、村田雄浩、生稲晃子、角替和枝、仲間由紀恵(友情出演)、西田敏行
2009年/日本/103分/ビスタサイズ/カラー
配給:ゴー・シネマ