学び!とシネマ

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マエストロ6 サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2010.07.28
学び!とシネマ <Vol.52>
マエストロ6 サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
世界の名指揮者とオーケストラ、6作品が集結!
二井 康雄(ふたい・やすお)
(c)Euro Arts Music International

(c)Euro Arts Music International

 『マエストロ6(シックス)』というタイトル通り、現在のクラシック音楽界の最高峰ともいえる指揮者たち6名のオーケストラ演奏が、相次いで映画公開される。その第一弾が、サイモン・ラトル指揮のベルリン・フィルハーモニー。その人気、実力は、世界屈指といわれている。
 映画ではあるが、コンサート会場にいる雰囲気が、存分に体感、味わえる。
 ふつうの映画より料金は割高だが、じっさいの公演チケットは、いずれも、おそらく数万円はする指揮者たちであり、オーケストラである。それを、映像、音響とも、最新設備の映画館で鑑賞できる。ちなみに学生料金は2500円。
 第二弾は、8月公開で、ヘルベルト・フォン・カラヤンの後任としてベルリン・フィルハーモニーの芸術監督を務めたクラウディオ・アバド率いるルツェルン祝祭管弦楽団。曲は、チャイコフスキーの幻想曲「テンペスト」ほか。
 以下、9月は、リッカルド・ムーティ指揮によるベルリン・フィルハーモニーで、ヴェルディの歌劇「運命の力」序曲、シューベルトの交響曲第8番。

 10月は、ピアニストとしても著名なダニエル・バレンボイムがベルリン・フィルハーモニーを指揮した、エルガーの「チェロ協奏曲」。バレンボイムの亡き夫人、チェリストのジャクリーヌ・デュプレが得意とした曲。そして、ブラームスの交響曲第1番。
 11月は、ロリン・マゼール指揮のニューヨーク・フィルハーモニック。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」ほか。
 そして12月は、ベネズエラの若者たちのオーケストラ、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラを率いるグスターボ・ドゥダメル。ドゥダメルは、ベートーベンの交響曲第5番「運命」と第7番でCDデビュー、たちまち世界で大ヒットを記録した。1981年生まれの、まだ若い指揮者である。曲は、ラヴェルの「ダフネスとクロエ」、レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド物語」から「マンボ」。
 いずれも、名曲揃い、そして、現代最高の指揮者、オーケストラばかり。これらのクラシック演奏の数々は、見る価値じゅうぶんと思う。

 サイモン・ラトルはイギリスの生まれ。バーミンガム交響楽団を一流のオーケストラに育てあげ、若くして、サーの称号を授与される。ベルリン・フィルハーモニーには、クラウディオ・アバドの後任として、2002年9月から芸術監督を務めている。
 2年ほど前に公開されたドキュメンタリー映画「ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて」では、伝統を守りながら、常に新しいことにチャレンジし続けるサイモン・ラトルと、世界一のオーケストラに所属する自負を持ちつつ、プレッシャーのかかる日々を生きる団員たちの姿が、あますところなく描かれていた。
 このほどの映画は、毎年末に開催されるベルリンのジルべスター・コンサートの2009年のもの。この年のコンサートは、ロシアのレパートリーから、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ピアノは、天才と称されている中国の若手ラン・ラン。そして、チャイコフスキーのバレエ曲「くるみ割り人形」の第二幕の音楽。
 もう、居ながらにして、ベルリンのフィルハーモニー・ホールにいるようである。
 ラフマニノフの第2番は、1945年のイギリス映画「逢びき」で使われて、一躍、有名になった曲である。ここでのラン・ランは、いささか派手なアクションではあるが、その華麗な技巧は定評あるところ。叙情たっぷりに、ラフマニノフの難曲を弾ききる。
 後半は、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」と並ぶチャイコフスキーの3大バレエ曲のひとつ「くるみ割り人形」の第二幕。ハープが美しく弾かれ、どこかで聴いたことのあるメロディがたくさん。「葦笛の踊り」、「花のワルツ」などで有名なバレエ曲である。ラトルは、楽しそうな表情で指揮する。
 アンコールは、意表をついたもの。ラン・ランのピアノによる曲は…。オーケストラのアンコールは、小さな子どもたちがコーラスで参加する。これまた、意表をついた曲。どちらもお楽しみに。

(c)Euro Arts Music International

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 もちろん、CDで聴くことのできる音楽ではあるが、映像では、指揮者やソリストの表情が、きめ細かく捉えられる。音楽によって異なるさまざまな表情は、より、その音楽への理解を助けてくれるはずである。
 ベルリン・フィルハーモニーのコンサート・マスターは、1979年生まれの樫本大進。安永徹の後をついで、堂々と務める。
 夏から秋冬と、いい音楽でいっぱいの映画を楽しんでください。

2010年7月31日(土)より、新宿バルト9ico_link ほか全国順次ロードショー!

マエストロ:
1.サイモン・ラトル
2.クラウディオ・アバド
3.リッカルド・ムーティ
4.ダニエル・バレンボイム
5.ロリン・マゼール
6.グスターボ・ドゥダメル
オーケストラ:
1.ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(作品:Simon Rattle・100分)
2.ルツェルン祝祭管弦楽団(作品:Claudio Abbado・95分)
3.ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(作品:Riccardo Muti・98分)
4.ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(作品:Daniel Barenboim・90分)
5.ニューヨーク・フィルハーモニック(作品:Lorine Maazel・95分)
6.シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(作品:Gustavo Dudamel・84分)
配給:ティ・ジョイ