学び!とシネマ

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タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
2011.11.30
学び!とシネマ <Vol.68>
タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
二井 康雄(ふたい・やすお)
(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 スティーブン・スピルバーグ監督の映画を初めて見たのは、1973年の「激突!」だった。もう、38年前になる。車が大型のタンクローリーを追い抜く。逆に車はタンクローリーから執拗に追われることになる。ただこれだけの状況を、サスペンスたっぷりに描き、その鮮やかな語り口に驚いたものだ。2年後、「ジョーズ」でスピルバーグは大ブレイクする。
 その後、80年代には「インディ・ジョーンズ」のシリーズ、90年代には「ジュラシック・パーク」のシリーズなどなど、大ヒット作を連発したのはご存知の通りで、その活躍ぶりは、凄まじいものがある。「E.T.」や「未知との遭遇」、アカデミー賞の作品賞と監督賞などを受賞した「シンドラーのリスト」も、スピルバーグ作品だ。

(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 このスピルバーグの新作「タンタンの冒険」(東宝東和配給)は、現在の映画製作がたどり着いた技術の、ほとんどすべてと言ってもいいくらいの精緻な映像。アニメーションと実写が結合、ベルギーのエルジェの手になる傑作コミックの世界を、見事なまでに映像化、監督の力量を、これでもか、これでもかと見せつけてくれる。
 若いレポーターのタンタンは、フォックステリア犬のスノーウィと、世界中を舞台にスリル満点の冒険を続ける。原作は全部で24冊、日本でも翻訳コミックが出版されている。どれも、おもしろく痛快。夢があり、希望に満ちている。いままで、ジョージ・ルーカスやスピルバーグが作ってきた、一連のエンタテインメント映画の基になるような原作である。
 映画は、原作の「なぞのユニコーン号」と続編の「レッド・ラッカムの宝」に、サハラ砂漠を舞台にした「金のはさみのカニ」の合体したストーリーで進行する。
 タンタン(ジェイミー・ベル)は、白い犬スノーウィといつも一緒、骨董市でユニコーン号という船の模型を買う。ところが、怪しげな二人組から、買ったばかりの模型を、売ってくれないか、と迫られる。なにかあると思ったタンタンは、いろいろ調べたところ、ユニコーン号は、海賊に襲われた軍艦だったことが分かる。しかも、軍艦は、多くの財宝を積んでいたらしい。艦長のアドック卿は、「アドックの血を引く者が秘密を知る」という言葉を残していた。タンタンは、模型の軍艦のマストから、巻物になった羊皮紙を発見する。 

(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

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 これがきっかけに、タンタンとスノーウィは、ユニコーン号の秘密を解明しようとするが、大変な事件に巻き込まれて、とんでもない冒険を経験する。舞台は海、砂漠、空中と変化し、目まぐるしいスピードで進行する。
 広大な砂漠のシーンが、一瞬にして、大海原に切り替わる。思わず息を飲む。
 よく見ないと分からないが、タンタンをつけ狙う悪者役サッカリンに、007でおなじみのダニエル・クレイグが扮している。これまた、見せてくれる。
 もう、理屈抜きに面白い。タンタンもスノーウィも、優れた能力があるわけではない。ふつうの若者、犬である。ドジを踏みながらも、迫る危機に挑戦し続ける。やがて、夢や希望を決してあきらめないタンタンとスノーウィの活躍に、思わず拍手を送ることになる。
 3Dである。ことさら、飛び出してこなくても、迫力はじゅうぶん。美しく、きめ細かい映像に、素直に驚く。
 原作コミックの面白さに、映画の最先端の技術が加わる。たまには、理屈抜きで楽しまれてはいかが。まだ二作ほど、映画になるらしい。
 「タンタンの冒険」シリーズだけでなく、「スピルー」など、ベルギーには、優れたコミックが多い。映画を見て興味を持たれたら、ぜひ原作のコミックも見てください。

2011年12月1日(木)より、TOHOシネマズ スカラ座ico_linkほか全国ロードショー

■「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

監督・プロデューサー:スティーブン・スピルバーグ
脚本:スティーブ・モファット、エドガー・ライト、ジョー・コーニッシュ
プロデューサー:ピーター・ジャクソン、キャスリーン・ケネディ
製作総指揮:ケン・カミンズ、ニック・ロドウェル、ステファン・スペリー
編集:マイケル・カーン
共同プロデューサー:キャロリン・カニンガム、ジェイソン・マッガトリン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
シニア視覚効果スーパーバイザー:ジョー・レッテリ
出演:ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ
2011年/アメリカ・ニュージーランド/上映時間1時間47分/スコープサイズ/ドルビーSRD/日本語字幕:戸田奈津子/字幕協力:ムーランサール ジャパン
原題:THE ADVENTURES OF TINTIN:THE SECRET OF THE UNICORN
配給:東宝東和