教育情報

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携帯電話に関する指導の徹底
2009.09.09
教育情報 <日文の教育情報 No.77>
携帯電話に関する指導の徹底
東京女子体育大学名誉教授、言語教育文化研究所代表理事 尾木和英 

■ネット上のいじめと携帯電話

 子どもたちの間に携帯電話が急速に普及し、次のような問題を生じるようになった。
(1)携帯電話によるメールの送受信件数が非常に多い場合。(2)携帯電話の過剰な使用が生活面に悪い影響を及ぼす場合。(3)携帯電話の使用マナーに関して問題を生じる場合。(4)有害サイトなど、携帯電話の使用にかかわる危険についての認識に乏しい場合。(5)いわゆる学校裏サイト等を利用し、特定の子どもに対する誹謗中傷を行うなどの場合。
 平成19年12月27日に出された、「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」アピールでは、「ネット上のいじめ問題」に対してとして、次のような呼びかけをした。
(1)携帯電話・ネットの危険性を、知っていますか? 教えましたか? (2)情報モラルについて約束しましたか? 親子で学びましたか? (3)お子さんがネット上のいじめで悩んでいないか聞いてみましたか? 学校と連携していますか? (4)学校と相談していますか?
 この内容を見ても分かるように、携帯電話はネット上のいじめにも深いかかわりがあり、その点に関する指導・対応は特に緊急性を持つものといえる。

■携帯所有に関する指導

 携帯電話の取り扱いをどうすべきかについては様々に検討され、それぞれの地域の状況、子どもの実態に応じて適正に指導・対応が行われている。
 携帯電話対応に関する意見を大きく分類すれば、「原則所有・使用自由」「使用禁止」「学校への持ち込み禁止」「所有禁止」ということになるが、多くの小・中学校では、文部科学省の通知(平成21年1月)の内容を踏まえて、学校の実態に即して対応しているようである。
 こうした措置・指導によって、少なくとも学校での教育活動に支障が起きる様なことは防げるものと思われる。しかし、ここで留意すべきは、その処置をとったとしても、それで抜本的な問題解決ということにはならないということである。
 携帯電話等に関する問題は次のように整理することができる。
(1)携帯電話等の学校への持ち込みに関する問題。(2)「ネット上のいじめ」やインターネット上の誹謗・中傷、違法・有害情報への関与の問題。(3)携帯電話の異常な使用や、関連しての交友関係上の問題等。(4)個人情報の流出の問題など。
 こうした問題について、すべての子どもが正しく認識し、情報モラル、適正な携帯電話等の使用のあり方を確かに認識し、いじめ等を許さない、危険に関与しない正しい行動がとれるようにならない限り、問題解決とはいえないのである。
 学校としては、携帯電話、インターネット等に関する指導の基本、中傷やいじめなど、深刻な問題への対応・指導の留意点を確かに押さえる必要がある。平成21年1月の文部科学省通知にある情報モラル教育、具体的な問題への対応、家庭との連携といった重点を押さえ、指導指針を明示して、適正かつ効果的な指導を行うことが課題になっている。

■学校における指導・対応の実際

 まず求められるのは、平成20年7月、平成21年1月に相次いで出された、文部科学省からの通知の趣旨を、全教職員の間で共通理解を図ることである。適切な指導に向けて、すべての教師が、携帯電話の使用のあり方、望ましい能力・態度に関してどの機会にどう指導を行わなくてはならないか、主体的な課題意識を持つことが大切である。
 携帯電話の学校への持ち込み、「ネット上のいじめ」に関する対応などの具体的な取組を中心に、平成20年11月に文部科学省が作成した『「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集』などの内容も視野に入れて自校の指導の在り方について協議する。その協議に基づいて、自校の指導指針を作成し、その内容を子どもや保護者に説明し、一体になって指導の徹底に努めることが求められる。
 例えば、学校への持ち込みの原則禁止、情報モラル教育、家庭との連携による携帯電話等利用のルール作りなどをばらばらに行うのでは効果が上がらない。子どもや保護者への趣旨の徹底、いじめや誹謗中傷を絶対にしない、様々な危険の被害にあわないための指導、望ましい態度の育成、問題の早期発見・早期指導のためには、全校的な指導体制の確立が欠かせない。
 学校としての指導方針を明確にし、自校の実態に立つこと、全校体制での取組、家庭・地域との連携という三つの側面を重視して携帯電話等に関する指導を推進することが必要である。
 これからの学校は、自校の目指す教育の目標をこれまで以上に明確に示し、具体的な指導内容を家庭・地域に十分に説明し、信頼関係に基づいて、ともに指導の徹底を目指すことが課題になっている。
 現在及び今後の社会を考えるとき、インターネット、携帯電話を排除することはとても考えられない。そもそも、携帯電話やインターネットというのはメリットとデメリットの両面を持った媒体である。携帯電話の機能、使用上の注意、情報モラル等の指導において、子どもたちに、もう一度しっかりと考えさせることが重要であるといえよう。

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