教育情報

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教育委員会制度を考える
2009.12.09
教育情報 <日文の教育情報 No.80 臨時号>
教育委員会制度を考える
宮崎市教育委員会教育長 田原健二

 「教育長と教育委員長はどう違うのですか?」と尋ねられることがある。また、「教育長の勤務時間は?」と問われることもある。その説明には、かなりの時間を要する。
 前者は「教育委員会」の理解の仕方によっては、かみ合わない説明となるし、後者は「教育長は、…委員としての身分と教育長としての身分とを併せ有する…」(教育法令コンメンタール)身としては説明しにくい質問である。
 そこで、教育委員会制度の在り方を整理し、教育委員会の存在意義を明らかにしたい。

■教育委員会制度考察の視点

 「教育委員会」制度の在り方を考える場合、(1)任命された複数の教育委員からなる合議制の教育委員会(狭義の教育委員会)の在り方、事務局としての教育委員会(広義の教育委員会)の在り方、両者の関係性及び首長部局との関係の在り方という視点、(2)県教育委員会と市町村教育委員会の関係という視点、(3)学校と教育委員会の関係という視点がある。ここでは、(1)の視点について整理してみたい。

■教育委員会活動の点検・評価

 「教育委員会」が、その職責を果たすには、狭義・広義の教育委員会それぞれに求められる役割を明確にする必要がある。地教行法では、教育委員会の職務権限を23条で示し、教育長に委任等できる事務(教育長は委任された事務等を事務局職員等に委任等させることができる)と、委任することができない事務を規定している。
 したがって、狭義の教育委員会は教育長に委任できない事務について大所高所から執行する役割を有することになる。
 また、狭義・広義の教育委員会の関係性は、教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検・評価(地教行法27条)によって明らかにすることができる。
 宮崎市教育委員会では、「教育委員会の活動」(教育委員の活動及び教育委員会の運営状況等)、「教育委員会が管理・執行する事務」(教育委員会の会議に諮られる事項)、「教育委員会が管理・執行を教育長に委任する事務」(事務局が実施する事務事業)の観点から評価項目を設定し、点検・評価を行うことによって狭義・広義の教育委員会の役割分担及び責任体制の明確化を図っている。

■教育委員会活動の活性化-改革プランの取組

 「教育委員会が管理・執行する事務」を「地域の実情に応じ」(地教行法1条の2)て推進するには、広い視野からの地域の要望を把握することや、事務局の教育施策の執行に関して進行管理をするなどの役割が狭義の教育委員会に求められる。そこでは、レイマンとしての教育委員の自己研修を含めた教育委員会の研修体制の充実が課題である。
 そこで、宮崎市では、「教育委員会改革プラン」(詳細は、「教育委員会月報」(平成20年12月号)「教育委員会の活性化に向けて」)を毎年度策定・実践することで教育委員会の活性化に取り組んでいる。平成21年度の改革プランでは、各種行事への各委員の積極的な参加及び定例教育委員会の地域開催による地域住民との意見交換、市長や教職員、社会教育委員等との意見交換会の実施や委員協議会の開催など自己研修等の充実や会議内容のホームページでの公開等に取り組んでいる。

■教育委員会設置の積極的意義

 教育再生懇談会第三次報告では、「教育行政の継続性・安定性、教育内容の政治的中立性の確保、…首長への過度の権限集中の防止」を教育委員会設置の意義としてあげている。また、「日経グローカル」が実施(2009.5.4)したアンケート調査では、県庁所在地の都市教育長の78%が市教育委員会を必置とする「現行制度」を肯定している。
 現行教育委員会制度は、市町村への教育分野における権限移譲に伴い、当然変化していく可能性を持っている。その方向性は、住民参加をいかに制度として保障できるかという事でなければならない。
 今後、教育行政への住民参加の拡充という観点から、教育委員会の設置及び教育委員のリーダーシップの発揮が、より積極的な意義を有することになる。
 また、教育委員会事務局職員の中立・公正な教育行政の執行とともに、複雑・多様化する教育に関する諸問題に対応するためにも、教育委員会事務局職員の専門性の確保も一層要請されるところである。

 教育行政は”ひとづくり”を目的としている。その施策は”まちづくり”に繋がっている。地域住民の教育に関する声を、レイマンコントロールとしての教育委員会が如何に組織化できるか、首長部局とどう連携していくかが、問われている。

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