教育情報

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学校支援地域本部は学校を活性化する
2010.02.03
教育情報 <日文の教育情報 No.83>
学校支援地域本部は学校を活性化する
千葉大学 明石 要一

■ 学校支援地域本部とは

 各地で学校支援地域本部の取り組みが行われている。しかし、都道府県や政令都市では温度差が見られる。
 青森県のように生涯学習課と社会教育センターが一丸となって、全県下で本部構想を推進しているところはあるが、周りの様子を伺っているところもある。
 それはなぜだろうか。学校支援地域本部は学校を助ける、というミッションが理解されていないからである。生涯学習課の担当者のなかでもこのミッションを正面から受け止めていないものがいるのではないか。
 とりわけ、学校教育関係者は生涯学習課が余分な仕事を押しつけてきた、と思いがちである。実際仕事を仕切る教頭先生は、殊の外そう思うのである。
 子どもの教育はもはや学校だけに任せる時代は終わった。地域の人たちの底力を借りて行わなければ、学校は役割を果たせなくなっているのである。
 こうした認識を前提に、学校が地域に開かれ様々な人材を受け入れる仕組み作りが地域本部構想なのである。
この仕組みが動くと学校と教師は本当に助かる。本来の教師の仕事に専念できる。

■ 学校支援地域本部がうまくいく方策

 学校支援地域本部でよく知られているのは杉並区の和田中学校が中心となった活動である。これは個性のある当時の藤原和博校長がリーダーシップをとって行ったものである。「夜スペ」だけがマスコミに取り上げられたきらいがある。PTA を廃止したことは賛成できないが、学校と地域がコラボレートしたユニークな実践である。
 二つ目は千葉県の習志野市立秋津小学校の実践である。学校に本部の空間を設置し、地域の人の力を借りながら、パソコンを修理したり、図書室を改装したりしている。圧巻は地域の人たちが千葉県で有名な上総掘りで校庭に井戸を掘ったことである。
 三つ目は、木更津市の教育委員会が12 年前から行っている学校支援ボランティアである。
 木更津市は小中学校合わせて31 校ある。すべての学校に校務分掌として学校支援ボランティア担当教員を委嘱している。また、ボランティア・コーディネーターも各学校に一人置いている。さらに、年1回、学校支援ボランティアサミットを開催している。そして、コーディネーターの研修はサミットへの参加を含めて年4回行っている。
 学校支援ボランティアの所管は、生涯学習課ではなく、学校教育課が行っている。これまで生涯学習課と学校のつきあいは少なく、隔たりがあった。その点、学校教育課は学校とホットラインを持っているので意図が伝わりやすい。
 木更津市の特徴は、教育委員会が全権を掌握し、学校支援ボランティアを「点」ではなく「面」として行ったことである。どの学校にも担当教員とコーディネーターを置いたのである。
 杉並区の和田中学校と習志野市の秋津小学校の実践はユニークですばらしいものである。しかし、その実践はなぜ同じ市や区の中学校、小学校に広がっていかなかったのだろうか。

■ 参考になる群馬県の教育事務所の取り組み

 群馬県のある教育事務所の試みは、これから学校支援地域本部を立ち上げようとするものにとって参考になる。
 ここがまず行ったことは、学校に理解してもらうことであった。まず、教育事務所が所管する全小中学校の教
頭を対象に学校支援地域本部とはどんなものか、の講習会を開いている。そこでは、群馬県のユニークな取り組みを紹介する。例えば、学校とボランティアの両方でコーディネーターを決めている。学校は教務主任が担当する。教務主任が各クラスの先生方から挙がった支援して欲しいリストをボランティア側のコーディネーターに伝える仕組みである。また、教材作成にかかる経費については、地域本部は財政的には豊かでないので、PTA から支援をしてもらっている。
 こうした人的、財政的なボランティアの支援があるので教師から好意的に受け止められている。
 学校支援地域本部は地域の底力を学校教育とコラボレートして、学校を助ける働きをする仕組み作りである。

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