教育情報

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年度始めの文書管理
2010.04.08
教育情報 <日文の教育情報 No.85>
年度始めの文書管理
東京女子体育大学名誉教授  言語教育文化研究所代表理事  尾木和英

■ 特色ある学校づくりと学校文書

 地域に開かれた特色ある学校づくりのためには、社会の変容や学校への期待に応じる教育活動のための情報収集と活用が欠かせない。また、効果的に情報を発信し、自校の目標実現に向けて全教職員の協働体制を確立する、あるいは家庭・地域に理解と協力を促すことがこれまで以上に重要になっている。年度始めには、改めて教育情報・学校文書の果たす役割を確認する機会をつくりたい。
 学校が目指す目標にはどのような側面があるか。それぞれの教職員が担う役割、家庭・地域の果たす役割としては何が求められるのか。そうしたことについて共通理解を持つ。適切な文書を作成・活用し、一体になって取組を行う。そのことによってより効果的に教育活動が展開され、教育力が発揮されることを認識したい。 
 こうした基本認識のもと、新しい年度の学校教育目標や教育活動の重点を踏まえて次のことに留意し、文書管理の体制を整えることが必要になっている。

■ ますます重要になる連携体制

 これまでの学校には、ややもすれば情報はなるべく校内にとどめ、すべての問題を校内で解決しようとする傾向があった。学校の責任、信頼感の確保への配慮があったのだが、最近は、家庭・地域、関係機関との連携抜きで問題を解決することが難しくなっている。また、説明責任を果たすことと信頼関係を重ねてとらえるようにもなっている。
 今後は、家庭や関係機関とネットワーク化を図り、同時に学校としての説明責任を果たすという、新たな考え方に基づく学校経営の展開が重要になっている。
 学校経営については、その成果と課題を公表する基本姿勢が求められる。学校評価であれば、評価結果に加えて今後の改善方策についても公表することが望まれている。
 課題の共有、連携体制の構築のためには、そこに機能する文書の工夫が重要になる。年度始めにあたって、保護者、地域の連携のもと、これからの学校を築くための学校文書をどう工夫するかが課題になる。

■ 課題解決に向けての取組と学校文書

 新学習指導要領のもと、新しい実践の展開が必要になっている。地域社会や家庭の構造・機能の変化によって、様々な課題を抱える子どもが増え、その面でも指導改善が大切になる。
 実際の指導に際しては、①全教職員が学校の当面する課題を受け止め、組織的に指導に当たる、②学校での指導・対応の基本姿勢を保護者・地域住民に公表し、一致協力して指導を進める、③困難な問題については学校だけで抱え込むことなく、保護者や関係機関等との連携のもとに対応することが重要になる。そこでは、こうした指導・対応のための情報の収集と活用、そこに機能する文書の整備が大きな意味を持つ。 
 パソコンの普及によって、昨年までのデータを引き出し、必要な修正で文書を作成することが可能になった。それだけに、機械的な操作ではなく、新たな課題意識をもって文書を作成する基本姿勢を持つようにしたい。

■ 学校文書の果たす役割

 課題を共有すること、説明責任を果たすことが大切になり、どのような内容を盛り込んで配布文書を作成するかがますます重要になっている。
 一般的に文書といえば、通知・通達、照会などの学校が受け取る公文書、また、通知、回答、報告、申請などの学校が発する文書などが中心となるが、学校づくりにかかわって重要度が増しているのは、校内・校外での共通理解、活動推進のための各種情報・文書である。
 特に新学習指導要領対応に関しては、その趣旨を踏まえての新しい取組について教師の創意を促す、その内容を保護者に伝えることに機能する文書の工夫が求められている。

■ 文書の取扱に際しての留意点

 基本的に言えば、文書の収受と作成については一定の手順を定めて適正に行うことが原則である。文書管理については思いがけない事態を招くことのないよう、十分な配慮を持って厳正に行われることが必要である。
 文書の取扱が情報機器を通じて行われた場合、これまではありえなかったような事故が発生することが懸念される。年度始めには、管理体制を点検することが大切である。
 情報管理、文書の取扱においては、守秘義務の履行と個人情報の保護に関して厳守する基本姿勢が重要である。
 個人情報保護などの配慮を欠くとき、学校への信頼は一挙に崩れることになる。十分な配慮のもと、家庭、地域等との信頼関係を重視する学校づくりに機能する、適正かつ効果的な文書を作成、管理する。年度始めには、全職員の間でそのことを徹底することが求められる。

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