教育情報

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協調学習
2010.11.05
教育情報 <日文の教育情報 No.95>
協調学習
宮崎県五ヶ瀬町教育長 日渡 円

■ 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)

 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)とは、「小・中・高等学校の先生方に大学から生まれる新しい考え方を発信し、みんなで教育の質を高めること」及び「その目標に賛同する大学・機関でつくるコンソーシアムの活動を推進すること」の2つの目標の達成に向けて、2008年11月東京大学に設立された機構です。

■ 新しい学びプロジェクト

 現在五ヶ瀬町の呼びかけで全国9つの市町の教育委員会(和歌山県有田市、有田川町、広島県安芸太田町、福岡県香春町、熊本県南小国町、大分県竹田市、宮崎県宮崎市、国富町、五ヶ瀬町)が連携し、東京大学と「新しい学びプロジェクト~市町村と東京大学による協調学習研究連携~」を立ち上げて研究活動を行っています。
 具体的には、東京大学が進めている「協調学習」を国語科、社会科、算数・数学、理科の4教科で実際に授業でどのように使えるかを本年度と来年度2ヶ年かけて研究しようというものです。各自治体から1~3名の教諭を研究推進員として指名し、各教科毎のグループごとに実践研究を進めています。各自治体内での実践や広め方は、研究指定校方式、研修センター方式、市町研究テーマ方式等々それぞれ自由に行っています。

■ 協調学習

 さて、「協調学習」ですが、従来の学習指導方法では、教師はその時間に教えるべき情報を基本的に一斉に全ての児童生徒に伝えていました。その中で、板書の方法、設問の工夫、教材の工夫等々、または、グループ別学習、TT、少人数等々工夫を凝らしてきましたが、教える情報の全てを全ての児童生徒に伝えるという授業方法は従来から一貫した同じ方法でした。
 「協調学習」は、子どもたちの「学びあい」を中心として、習得、活用、探求の要素を取り入れた授業方法です。その時間の授業の内容にそって、3~4の資料を用意し、3つの資料であれば、全体をABC3つのグループに分けて、それぞれAグループにはAの資料、BにはBの資料、CにはCの資料とグループ毎に内容の異なる資料を提示し、児童生徒による学びあいにより学習させる(エキスパート)。次に、グループを入れ替えて、ABCから1人ずつの3人でグループを作り、それぞれ(エキスパート)で学習した内容を説明し合いながら、本時の学習内容を考え(ジグソー)て、最後に全体で発表(クロストーク)を行う、というものです。
 エキスパートの時間では、教師の児童生徒に対する一方通行の情報の提供から、児童生徒どうしによる学びあいによる学習が習得の効果をあげ、ジグソーの時間では学びあいによって深く習得された知識をいかに他の2人に分かりやすく伝えるかの工夫が児童生徒の活用力を促し、3人の情報をつなぎ合わせて本時の内容を考える時間では活用力と探求力が発揮されます。

■ 指導方法論「観」

 学校は、または教師は日々児童生徒に学力をつけるために、言い換えれば児童生徒の知識(情報)の習得率を高めるためにいろいろな工夫をしてきました。しかし一方、OECDの報告以降、児童生徒の能力「観」、学力「観」に変化を求められていることも確かです。いわゆる、知識習得型から習得、活用、探求型への変化です。
 一方その根底となる指導方法論が変わってきたでしょうか。知識習得に対応する知識伝達型から、習得、活用、探求の能力育成型に変化してきているのでしょうか。
 協調学習は従来の全ての情報を全ての児童生徒に伝える事を絶対視してきた指導方法論と認識を別にするものです。協調学習も新しい指導方法論の1つに過ぎませんが、指導方法論も新しい「観」への認識の変換が求められているのではないでしょうか。
 この9つの自治体による研究も半年を過ぎ、それぞれの研究員である教師は教科毎に普段はネットを利用しながら、定期的に東京大学等に集まり研究を進めています。来る2月10日(木)、11日(金)には福岡市において本年度の研究発表を行う予定です。日文の教育情報ロゴ