教育情報
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3月11日の東日本大震災から9ヶ月になろうとしている。被災を受けた地域の子どもたちは元気な生活を送っているのだろうか。
国立青少年教育振興機構は、大災害を受けた福島の子どもたちが少しでも元気になるように、今年の夏休みに那須甲子青少年自然の家と磐梯青少年交流の家で三泊四日のリフレッシュキャンプを実施した。
■ 参加した動機
そのキャンプは子どもたちにどんな効果をもたらしたのだろうか。事前事後の調査結果が発表された。参加した児童生徒は2,258名。子どもたちの参加の動機は多様である。その中で、6割を超す子どもたちは次の理由から参加している。
1位…キャンプの活動内容が面白そう(75.6%)
2位…外で体を動かしたかった(66.5%)
3位…夏休みなのでどこかに行きたかった(65.6%)
4位…プールで泳ぎたかった(61.1%)
友達に誘われてや親や先生に勧められてという、消極的な動機ではなく、安心安全な場所で体を動かしたい、という積極的な意図を持って参加している。
参加する前、子どもたちはどんな生活行動をしていたか。
子どもたちが夏休みになる一週間前、学校の休み時間で取った行動は、次のとおりである。
1位…友達とおしゃべりをしていた(78.1%)
2位…トランプやオセロ、将棋などをした(42.8%)
3位…読書をした(39.9%)
友達とのおしゃべりがダントツ。それに屋内遊びや読書という教室内に限定された行動が続く。「鉄棒・滑り台で遊んだ」(9.3%)、「縄跳びをした」(10.5%)など屋外遊びは1割にとどまる。
放課後もやはり屋内行動が主流である。「テレビをみた」(75.4%)、「勉強した」(75.3%)、「ゲームをした」(61.9%)。「学校や公園にいって遊んだ」(25.2%)や「友達とボール遊びをした」(23.6%)は四人に一人にとどまる。
■ 三泊四日のキャンプの成果
キャンプに参加する前と後では子どもたちの心と体はどう変化したのだろうか。結論を先に言えば、事後の方が数値が上がっている。
□「いろいろなことにやる気がある」
〔よくあった〕50.2%(後) > 31.8%(前)
□「やろうと思っても、なかなか手がつかない」
〔全くなかった〕36.9%(後) > 17.7%(前)
□「からだから、力がわかない」
〔全くなかった〕68.9%(後) > 59.5%(前)
これらの項目は「無気力」を測定したものである。キャンプ後には無気力の数値が少なくなり、意欲を取り戻している。
□「ワケもなく悲しくて何もしたくない」
〔全くない〕76.6%(後) > 70.3%(前)
□「味や痛さを感じない」
〔全くない〕87.2%(後) > 80.3%(前)
これらの項目は「うつ反応」を測定したものである。キャンプ後には「うつ」的な気分は低下し元気になっている。
□「むしゃくしゃしてすぐかっとする」
〔全くない〕61.7%(後) > 44.1%(前)
□「頭痛や腹痛など体の具合が悪い」
〔全くない〕66.3%(後) > 55.0%(前)
これらの項目は「精神的な混乱」を測定したものである。「かっとすること」や精神的な影響から生じる「頭痛や腹痛といった体調の悪さ」は減っている。
□「心配でイライラして落ち着かない」
〔全くない〕68.4%(後) > 56.3%(前)
□「小さな音にびっくりする」
〔全くない〕70.4%(後) > 61.7%(前)
これらの項目は「不安反応」を測定したものである。イライラが少なくなり、小さな音にびっくりしなくなっている。
事後にプラスの効果をもたらしている。
なかでも、「無気力」を測定しているカテゴリーの上昇が著しい。キャンプの後、子どもたちはやる気を取り戻し、前向きになっている。
三人に二人(73.5%)の子どもが「リフレッシュキャンプは楽しかった」〔とてもそう〕と答えている。〔まあそうであった〕を加えると96%に達する。この種の調査ではかなり高い評価をもらっている。
「教室」と「家」の中に閉じこめられた生活を余儀なくされた子どもにとって、自然の中で友達と自由に伸び伸びと活動できたことは貴重な体験となっているようだ。キャンプという自然体験を通して元気になり、新しい思い出づくりができている。