教育情報
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■ 今、小学生が荒れている
今、小学生が荒れている。中学生の暴力件数は減少傾向にある。文部科学省の平成21年の調査によれば、小学生の学校内外の暴力は7,115件で前年度10%増加。児童・生徒の暴力は、件数の8割を中学生が占め小学生の件数は少ない。中学生は前年度比では2%増加、高校生は3%減と微増か減少傾向にある。小学生の増加が目をひく。
「あなたの学校で、平成15年度に“少年非行”に関する問題がありましたか。それはどんな内容でしたか」(小学校校長会調査)
その結果、一番多いのは万引きで、次が悪戯・物品破損、それに火遊び、喫煙が続く。また、それを14年度と比較してみると暴力・傷害が前年度の3倍、万引き、喫煙、家出、無断外泊、盛り場・深夜徘徊、恐喝はいずれも2倍強の増加となっている。そして悪戯・物品破損、火遊びも増加の傾向が見られる。
これまで中学生の定番といわれていた非行が小学生にまで降りてきている。
■ ギャング・エイジが消えた
今、小学生の荒れは無視できない状況に来ている。なぜこうした事態が生じたのであろうか。この背景には子どもたちの育ち方が変わってきていることがあげられる。
小学生の子どもの育ちに欠かせないギャング・エイジを体験しなくなったのである。小学3,4年生の時に「ちょい悪」文化を学んでないのである。
子どもたちは「おりこうさん」になっている。そして一人ぼっちにもなっている。子ども同士が徒党を組んで遊ばなくなっている。集団行動をとらなくなっている。
30年前までの子どもたちは放課後、近くの空き地で子ども同士で徒党を組み秘密基地づくりをして遊んだ。それが大学生たちでさえ、その経験をした者は半数に達しない。
秘密基地づくりは次のような作業が伴う。
①基地の設計図を描く ②チームの名前を決める ③掟・暗号を決める ④メンバーシップを高めるためにそろいのバッチ、手帳などをそろえる ⑤遊びのルールを自分たちで決める
ギャング・エイジの体験はなぜ必要か。それは遊び集団でのつきあい方を身につけるからである。
小学校3、4年生ではじめて家や教室からのルールから解放される。自分たちだけのルールとマナーとモラルをつくり出す。
家の経済状態や学校の成績はそれほど影響しない。どの空き地なら安全か、秘密基地に必要な材料をどれだけ集められるか、面白い遊びをどれだけ知っているか、うまい設計図をどれだけ描けるか、一発芸でどれだけ人を笑わせられるか、という才能が評価される。
それぞれが持ち味をだし、議論を戦わしたり、けんかをしながら物事を決めていく。その中から決め方の段取りを身につけ、仕切り屋が生まれる。大人に頼らず自分たちの力で物事を解決していく方法を体験する。
■ ギャング・エイジはゴールデン・エイジ
スポーツの世界でゴールデン・エイジという言葉が指摘される。一流の選手になるには練習を始める最適の時期があるという。9歳から12歳といわれる。中学生になってはじめてもよいが、それでは遅すぎる。手遅れになるらしい。
確かに、プロで活躍するそれぞれの分野の選手のキャリア・パターンを見ると小学生の中学年あたりから覚え始めている。
私は、ギャング・エイジを子どもの成長のゴールデン・エイジと呼びたい。
中学生や高校生、それから大学生でギャング・エイジを体験するとすでに遅い。本当のギャングになってしまう可能性が強い。
「啐啄の機」という言葉がある。ヒナが孵る際わずかな音がする。それを親鳥は聞き漏らさず外側から突き返し殻を割る。親と子、両者の絶妙なタイミングの一致によって、無事に新しい生命が誕生する。
ギャング・エイジは子どもたちが独自の文化をつくり始める時期である。親と教師、それから地域の人はヒナが孵るのを温かく見守って欲しい。
学級崩壊の原因の一つに、子どもの集団力の衰退がある。集団生活で欠かせないルールとマナーとモラルを身につけていない。やんちゃのままの子どもが学級に入ってくる。だから、3,4年生の担任は集団づくりに苦労する。ベテランの教師でも学級をまとめるのに二ヶ月かかるという。
学級集団だけでは子どもの集団力の育成には無理がある。集団力の育成には放課後、子どもたちに「ちょい悪文化」を含んだギャング・エイジの体験をさせるのが近道である。