教育情報

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学校安全点検の重要性
2012.07.06
教育情報 <日文の教育情報 No.116>
学校安全点検の重要性
東京女子体育大学名誉教授 言語教育文化研究所代表理事 尾木 和英

■ 緊急課題としての安全教育

 これも外部評価委員として学校に寄せていただいた折のことである(113号「学校多忙化の改善」参照)。保護者や地域の方々が口々に、昨年3月11日の際の対応に関連して、学校安全への大きな不安を話された。
 学校の安全が守られなければ、安定した効果的な教育は成立しない。安全教育の充実によって危機を防止・回避する。事故・事件発生に際して被害を最小限にとどめる。このことが緊急の課題となっていることを、改めて実感させられた。
 東日本大震災をはじめ、各地で深刻な災害があり、様々な事故・事件が発生しており、子どもや保護者に動揺を与えている。各学校においては、何に重点をおきどう安全教育を展開するかを見直し、安全な学習環境を確保することが問われている。

■ 「学校安全の推進に関する計画」の策定

 平成24年4月27日、閣議によってこの計画が決定された。東日本大震災をはじめとする災害の教訓なども踏まえ、生活安全、交通安全、防災教育を含めた災害安全強化のための内容が盛り込まれており、各学校においては、これを参考にして自校の指導を見直すことが重要な課題となっている。
 学校における指導の充実という点からは、つぎのような内容を中心とする、学校安全を推進するための方策に着目することが求められる。

①安全教育における主体的に行動する態度や共助・公助の視点
②教育手法の改善
③安全教育に係る時間の確保
④避難訓練の在り方
⑤児童生徒等の状況に応じた安全教育
⑥情報社会への対応
⑦原子力災害への対応

■ 各学校の留意点とは

 学校安全に関しては、学校経営の観点からは組織的な安全管理が重要になる。その対応・指導の重点としては、学校安全の指導体制を整え、すべての子どもに対し安全な生活を営むのに必要な事柄について理解させ、安全な行動ができるための態度・能力を身につけさせることが大切である。
 従来と同じ計画、指導内容では、予測を超える緊急事態には対応しきれない。
 全教職員の間で、いま求められる安全教育について、多角的に検討を加えることがまず必要になる。その上で、指導・対応の改善・充実に取り組むのである。
 各学校では、自校の実態に即して適切に全体計画を立て、これに基づいて体育・保健体育などの各教科、特別活動、総合的な学習の時間などの指導充実を図り、組織的、計画的に効果的な安全教育を行うことが必要である。
 子どもに対する安全教育は、将来につながる安全意識・能力の基礎を培うものである。
 各学校においては、学校内の施設・設備の点検や安全確保のための様々な取組を効果的に進める。それとともに、子どもに対する計画的な教育によって、緊急時に率先して避難行動をとるなど、安全に対する考え方、行動の仕方を定着させるようにする。そのための指導・対応に関する創意工夫が当面の課題である。

■ 指導推進に際しての留意点

 安全教育の計画・実施に際しては、次のことに留意し、指導の万全を期したい。

①安全教育に関する重点目標に即して基本計画を策定し、同時に具体的な事例、突発の事態に対する対応策についても整備をして、指導の充実を図る。
②自校の実態の的確な把握、他校、他地域における指導・対応の教訓を生かし、絶えず自校の安全教育計画、実施体制を見直す。
③安全教育に関する評価の結果を、指導改善、指導・対応体制の強化に結びつける。
④子どもが安心して学び、活動できる学校づくりを教育目標に位置づけ、保護者や地域の関係者と連携して地域に開かれた学校を目指す。

 また、実際の取組を進める際には、次のような点について創意を生かすことが望まれる。

①校長が学校経営の重点を周知する際に、関連資料を配布し、その趣旨の徹底を図る。
②安全教育を主題とする研修機会を設定し、子どもの事故や災害の現状、安全な行動の仕方について理解を深め、効果的な指導・対応の在り方を検討する。
③事例協議の機会を設定し、具体的な場面に即して、自校の安全計画や指導の在り方に関して話し合いをし、指導の改善を図る。

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