小学校 道徳

小学校 道徳

道徳ことはじめ 第4号(第4学年)
2018.04.17
小学校 道徳 <No.026>
道徳ことはじめ 第4号(第4学年)
東京都小金井市立東小学校 指導教諭 田上由紀子

今回のテーマ①は、「席を譲るという行為から見えるもの」についてです!

 先日、4・6年生のたてわり活動で高尾山に行きました。40分近く電車に乗っていました。帰りのバスでは、6年生が席を4年生に譲り、ヘトヘトになりながらも6年生は立っていました。中には、立ちながら寝ている子もいました。この光景は、今年の6年生に限ったことでなく、毎年見られる光景です。登る時は、4年生のリュックを何個も持って登っていた子もいます。
 これは、先生方の指示でやっていることではありません。自分たちが4年生の時に、6年生にやってもらったことを覚えていて、「大変な思いをしている時、助けてくれた6年生のようになりたい。」と一人一人が思っているからです。「6年生だから、4年生のリュックを持たなくてはいけない。」「6年生は、席を譲らないといけないから。」「先生にそうしないと叱られるから。」という義務感でやっている行為ではありません。毎年の6年生がこのように義務感ではなく、「心」でこういう行動をしているからこそ、「ぼくたちも6年生になったら、4年生のために頑張るぞ!」と思うのでしょう。まさしく、教育活動全般で行う道徳教育そのものです。

 その帰りの電車での出来事です。4年生の女の子2人が、座席に座っていました。だんだん電車が混んできて、お客さんが乗ってきました。席を譲るように声をかけようかと私が迷っている間に、その2人はすっと立って、入って来たご婦人に、「ここに座ってください。」とはっきりした声で声をかけていました。しかも、とってもいい笑顔でした。その笑顔から、この2人も、「席を譲らなければならない」ではなく、「席を譲らずにはいられない。」という気持ちが強かったと感じました。

この新聞記事は、2016年5月19日(木)読売新聞に掲載されたものです。この小学4年生の女の子も、「乗ってくる時、両手でおなかを触っていて、つらそうだったから。」とさっと譲った理由を言っています。
他のエピソードを読んでも、心で動いているのが分かります。

(「第3章 特別の教科 道徳」の「第1 目標」)
 第1章総則の第1の2に示す道徳教育の目標に基づき、よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳諸価値についての理解を基に、自己をみつめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度をそだてる。

【小学校学習指導要領(一部改正)から】

 上記のように、平成20年の小学校学習指導要領と「道徳的な判断力、心情」の部分の順序が変わっていることから、「特別の教科 道徳」においては、「心情よりも判断力を養わなくてはいけない。」という風潮があります。しかし、改正学習指導要領の道徳編の解説には、「道徳諸様相には、特に序列や段階があるわけではない。」と書かれてあります。また、道徳的心情については、
「道徳的価値の大切さを感じ取り、善を行うことを喜び、悪を憎む感情のことである。人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であるとも言える。それは、道徳的行為への動機として強く作用するものである。」
とあります。このように、人間が道徳的行為を行う時に重要であると言えます。順序が変わったからと言って、心情を育てることを疎かにしていいということではありません。

今回のテーマ②は、「役割演技」についてです!

第4章 第2節 道徳科の指導 3 学習指導の多様な展開 (4)道徳科に生かす指導の工夫
オ 動作化、役割演技など表現活動の工夫
 児童が表現する活動の方法としては、発表したり書いたりすることのほかに、児童に特定の役割を与えて即興的に演技をする役割演技の工夫、動きや言葉を模倣して理解を深める動作化の工夫、音楽、所作、その場に応じた身のこなし、表情などで自分の考えを表現する工夫などがよく試みられる。

【小学校学習資料要領(一部改正)解説 特別の教科 道徳編】

まず、役割演技と動作化の違いをしっかり理解することが大切です。

役割演技は……

 特定の場面・役割の中で、自発的・即興的に演技をするものです。相手の言動に対してすぐさま反応をしなくてはいけません。したがって、演技はどうしても日常生活で繰り返されている自己の体験に頼るか、今までに培われてきた価値観に頼るしかありません。一般論ではなく、児童は本音を語ることになるのです。まさに、役割演技とは、演技を通して「自らを見つめる」「自らに問いかける」ことのできる指導法です。
 役割演技を取り入れる際は、以下のことを考慮して行います。

 (1)場面は具体的に示す。
 (2)役割を明確にする。
 (3)役割交代を行う。 →これを忘れないようにしましょう!

 場面や条件設定はなるべく具体的に簡潔に示さなくてはいけません。複雑な場面状況や条件設定では、演じる場面の共通理解が図れず、演技者の即興的・自発的な表現活動ができません。
 また、役割を交代することで、相手の立場や価値観を知る手がかりをつかめます。役割演技は、自ら演じたり、友達の演技を観察したりすることにより、これまでの自分を振り返り、自分自身の価値観を自覚することができます。

動作化とは……

 自分自身が資料の登場人物がした動作をまねて行うことです。道徳的価値にそって登場人物のとった行動を、心をこめてなぞります。そうすることで、登場人物の思いを自ら体験することができ、道徳的心情が養われていきます。

【東京都小金井市立東小学校H27年度研究発表冊子より】

 役割演技は、単に平板な授業の打開策としてのみを意図すると、授業者が役割演技のねらいを明確にもっていない場合は、授業のねらいから外れてしまいます。授業者は、役割演技を通して児童に何を考えさせたいのかを、明確にしておくことが必要です。