高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「寝椅子(シェーズロング)」 ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン作
2010.12.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.018>
「寝椅子(シェーズロング)」 ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン作
「高校美術3」 P.36掲載 豊田市美術館蔵
金属パイプ、金属板、キャンヴァス布地/塗装/<br />42.7×162×53.7cm/1928年ころ
金属パイプ、金属板、キャンヴァス布地/塗装/42.7×162×53.7cm/1928年ころ

 金属パイプにより人間の身体に合わせて曲げられたカーブと、それを支える優雅な曲線のコントラスト。《寝椅子》はル・コルビュジエ(本名:シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ、1887-1965)と従弟のピエール・ジャンヌレ(1896-1967)、そしてインテリア・デザイナーのシャルロット・ペリアン(1903-1999)によって共同制作されました。
 「住宅は住むための機械である」と語った近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、今世紀初頭に新しい造形システムと機能主義を掲げ、厳密な建築理論に基づく数々の名作を残しています。本作は家具における機能性の追求から生まれた作品で、4本脚の土台のクロスバーに乗せる金属パイプの角度をかえることにより、椅子の傾きを自由に設定できます。またこの椅子は土台を取り除くことでロッキング・チェアにもなるのです。身体を横たえる椅子の上面は、人間工学に基づく有機的なカーブに曲げられており、直接土台に触れないように、曲線の部分がそれを支える構造となっているのです。上面に張られた弾力性のあるキャンヴァス地は、それのみで身体を快適に支えるために両側の金属パイプに直接巻きつけられています。この時代の合理的思想に基づいてル・コルビュジエは、人間工学や機能主義の徹底というコンセプトを厳密なまでに追求しました。彼が具体化した新しい家具のあり方は、私たちに「座るための機械」のような印象すら与えるのです。

(豊田市美術館学芸員 北川智昭)

豊田市美術館ico_link

  • 所在地 愛知県豊田市小坂本町8-5-1
  • TEL  0565-34-6610(代表)
  • 休館日  月曜日(祝日は除く。振替休館はなし)

<展覧会情報>

  • 石上純也 - 建築の新しい大きさ
  • 開催期間 2010年9月18日(土)-12月26日(日)

展覧会概要

  • 建築家、石上純也の極大と極小の両極に向かう無限の空間の広がりを、5種類の模型を通じて紹介。
    谷口吉生による豊田市美術館の展示空間と石上の構造建築との共鳴、新たな建築の可能性を体感下さい。

<次回展覧会予定>

  • Art in an Office - 印象派・近代日本画から現代絵画まで
  • 2011年1月8日(土)-3月27日(日)

その他、詳細は豊田市美術館Webサイトico_linkでご覧ください。