高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

2010.12.28
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高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.019>
「画人像」 小倉遊亀作
「美・創造へ1」P.16掲載 滋賀県立近代美術館蔵
「美・創造へ1」P.16掲載 滋賀県立近代美術館蔵
鏡を見ながら描いた画家の自画像です。画家はこの作品について、「私は何度となく人物を描いてきたが、どうも顔が拙い。一番大事な顔が描けていないのだ。自分の顔をモデルに一つ苦心しようと決心した」と制作の動機を語っています。
画面一杯に上半身をとり、太い墨の線で体の輪郭や着物がかたどられます。無駄のない厳しい線描によって、作者の内面までもが描きだされるかのようです。バックは、左から射し込んだ光線が、画家の着衣や部屋の片隅を照らし出しているところが、プラチナ箔の下地の上の、微妙な着彩の変化で表現されます。
「鏡を見ながらスケッチを何枚もする。見れば見るほど変な顔である。間のぬけた、好人物的で、怒ったように表情を作っても笑った顔になってしまう。似なければ自画像にならない。削り削り、うんと省略してしまいたいのだが、『私』がぬけてゆく。とてもむつかしくていい勉強になった」と、画家は制作の感想を語っています。
何気ない、どこにでもあるようなものを作品のテーマに選び、一見無造作な、奇をてらわない画面構成をしていますが、実は周到に計算し尽くされて描かれている、というのがこの画家の特徴です。この作品についても、これと同じ大きさの下絵が残っており、綿密に練られた絵づくりの足跡を知ることができます。
(滋賀県立近代美術館 主任学芸員 國賀由美子)
■滋賀県立近代美術館
- 所在地 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
- TEL 077‐543‐2111
- 休館日 月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、
冬季休館日(2010年12月20日~2011年2月4日)
<展覧会情報>
- 襖と屏風-暮らしを彩る大画面の美-
- 2011年2月19日(土)~4月10日(日)
展覧会概要
- 日本の絵画は、欧米の絵画以上に建築と密接な関係をもち、発展を遂げてきました。本展覧会では当館の館蔵品から、江戸時代から近代に及び、座敷の美から展覧会芸術の華へと転じた、襖や屏風の様相を概観します。
<次回展覧会予定>
- 珠玉のヨーロッパ絵画展~バロックから近代へ~
- 2011年4月16日(土)~6月12日(日)
その他、詳細は滋賀県立近代美術館Webサイトでご覧ください。