高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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上町祭屋台天井絵「男浪図」葛飾北斎作
2011.02.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.020>
上町祭屋台天井絵「男浪図」葛飾北斎作
「高校美術3」P.34掲載 北斎館蔵

板着色/118×118.5㎝/1840年代中期

板着色/118×118.5㎝/1840年代中期

※葛飾北斎の「葛」という字は、PCの性質上、教科書紙面と違う表示になっています。ご了承ください。

 葛飾北斎は1840年半ば頃、80歳代で小布施を訪れたときに、上町(かんまち)祭屋台の天井絵を制作しました。「男浪(おなみ)図」は「女浪(めなみ)図」と一対で、それぞれ縦横およそ118cmの桐の板に描かれています。
 紺碧(こんぺき)の波はしぶきをあげながら、激しく渦を巻いています。その様子はまさに北斎の代表作「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を思わせます。波の描線に力強さがあり、見る者を飲み込んでしまうような勢いさえ感じられます。
 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」はヨーロッパから渡ってきた顔料のベロ藍(あい/プルシアン・ブルー)を本格的に用いた作品として有名です。「男浪図」の波の青色もこれと同じ顔料を、さらに細かなしぶきは胡粉(ごふん/貝殻から作られる白い顔料)を用いたと考えられています。
 波の周囲に金箔の地の縁絵(ふちえ)があり、獅子や孔雀などの動物や数種類の花が所狭しと描かれています。これらの花鳥や動物たちはどことなくエキゾチックな雰囲気を漂わせています。なお、「女浪図」縁絵は下絵が現存し、一ヶ所のみ実物と絵柄が異なるものの、ほぼ忠実に描かれています。
 小布施滞在中の北斎に、地元の豪農・豪商である高井鴻山(たかいこうざん)の多大な協力があったと伝えられます。これにより、北斎は「男浪図」「女浪図」の他にも、東町祭屋台天井絵「龍図(りゅうず)」「鳳凰図(ほうおうず)」や岩松院(がんしょういん)天井絵「鳳凰図」を制作することができたのかもしれません。現存する鴻山宛ての北斎の手紙からも、当時の二人の親密な交流をうかがい知ることができます。

(北斎館 学芸員 池田憲治)

北斎館ico_link

  • 所在地 長野県上高井郡小布施町大字小布施485
  • TEL 026-247-5206
  • 休館日 12月31日(大晦日)

<展覧会情報>

  • 「冬と新年の肉筆画・摺物(すりもの)名作選」
  • 現在開催中 ※2011年2月2日(水)まで

展覧会概要

  • 肉筆画では、雪の風景や新年のおめでたい作品を中心に紹介します。版画では、彫師(ほりし)・摺師(すりし)の技術の高さが見られる摺物とのどかな江戸の風景が描かれた狂歌絵本について紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 「北斎と葛飾派の門人たち」
  • 開催期間 2011年2月3日(木)~平成23年4月18日(月)

その他、詳細は北斎館Webサイトico_linkでご覧ください。