高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「ポモナ(トルソ)」オシップ・ザッキン作
2011.04.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.022>
「ポモナ(トルソ)」オシップ・ザッキン作
「美・創造へ1」P.20掲載 石橋財団ブリヂストン美術館蔵

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黒檀/高さ131cm/1951

 ザッキンは、旧ソ連(現在のベラルーシ)出身の彫刻家です。1905年に母親の実家のある英国サンダーランドの美術学校で造形学を学びました。その後、大英博物館で古代彫刻を研究し、1909年にパリにわたってエコール・デ・ボザールで学ぶとともに、ピカソらエコール・ド・パリの芸術家たちと親交を結び、新しい美術のあり方を吸収しました。こうして、ザッキンは、ヨーロッパの伝統的な芸術が持つ古典的な造形美と、アフリカ彫刻などが持つ簡潔かつ素朴な要素を融合して、新しい表現に昇華させることとなりました。
 「ポモナ(トルソ)」を見てみましょう。ザッキンは健康的な若い女性を対象とした彫刻を生涯にわたり繰り返し制作しました。「トルソ」とはイタリア語で「胴体」を意味します。彫刻においては、頭や四肢などのあるべき部分が失われて提示される作品をこう呼びます。思いきって省略された頭部を、鑑賞者は無意識に頭の中で補完しながら見ることになるので、美的効果を増幅する効果を持っています。また、この作品は真っ黒で鋳造されているように見えますが、よく見るとそれが黒檀(こくたん)を彫り出したものであることがわかります。触れずとも視覚的に伝わる木の柔らかな質感は、金属とは異なる人間的な温もりを見る者に伝えます。
 「ポモナ」とはローマ神話における果実、あるいは豊穣の女神です。左胸のあたりに細い線で彫られて示される右手には、この像が何者であるかを示すように果実が握られています。

(石橋財団ブリヂストン美術館 学芸課長 新畑泰秀)

■ブリヂストン美術館ico_link

  • 所在地 東京都中央区京橋1-10-1
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始

<展覧会情報>

  • コレクション展示「なぜ、これが傑作なの?」
  • 2011年1月4日(火)~4月16日(土)

展覧会概要

  • マネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ、クレー、藤島武二…。収蔵品を代表する約12作品を取り上げ、なぜ優れた作品だとされているのか、なぜ多くの人に愛されてきたのかをあらためてわかりやすく紹介。

<次回展覧会予定>

  • 特別展「アンフォルメルとは何か?―20世紀フランス絵画の挑戦」
  • 2011年4月29日(金・祝)~7月6日(水)

その他、詳細はブリヂストン美術館Webサイトico_linkでご覧ください。