高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「朱漆花鳥堆錦合子」
2011.05.02
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.023>
「朱漆花鳥堆錦合子」
「工芸Ⅰ」P.49掲載 浦添市美術館蔵

漆/直径14.5㎝

漆/直径14.5㎝

 琉球漆器の朱漆の丸い合子(ごうす)です。合子とは、身と蓋だけの小さな容器のことで、用途は大きさや使う人によって変わります。この作品は径が14.5cmあるので、ちょっとした菓子入れなどに使われたのかもしれません。
 蓋には桜の花と枝に止まる鳥が、堆錦技法で表現されています。堆錦技法とは、文様を付けるのに用いられる技法の一つで、顔料(色の粉)と漆を混ぜてこね、叩いて餅状の材料(堆錦餅)を作ります。それを文様の形に切り取って、漆で器物に貼り付け,鳥の羽や葉脈のような細部は金属棒で線を刻み、表します。このように堆錦技法は凹凸のある文様を作ることができ、さまざまな色の堆錦餅を組み合わせることでカラフルな表現ができます。この作品では、黄色や緑、茶色、白といった色の堆錦餅が使われています。
 ところで、「漆が乾く」という現象は、実は漆の酵素が空気中の水分から酸素を取り込んで硬くなるという反応です。そのため、漆が硬くなるためにはある程度の温度と湿度が必要です。堆錦技法は文様部分に厚みがあるため、自然の状態で完全に硬くなるには高温多湿の気候が不可欠であり、昔からこの技法を使っていたのは自然条件の合った琉球だけでした。18世紀にこの堆錦技法が改良され発展し、琉球王国の外交上重要な徳川将軍家への贈答品などに用いられるようになりました。その後盛んに製作されるようになり、明治以降は全国へ売り出した一般向けの製品に使われ、琉球漆器独特の技法として広く知られるようになります。この作品も、明治から昭和の初め頃に作られたものと考えられます。
 堆錦技法は、現在では他の地域でもわずかながら作られるようになりました。しかし琉球漆器の代表的な技法として、今も多くの品に用いられていることは変わりありません。

(浦添市美術館学芸員 岡本亜紀)

■浦添市美術館ico_link

  • 所在地 沖縄県浦添市仲間1-9-2
  • TEL 098-879-3219
  • 休館日 毎週月曜日(公休日は開館)

<展覧会情報>

  • ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン
  • 2011年6月10日(金)~7月24日(日)

展覧会概要

  • 19世紀後半に活躍したイギリスのデザイナー、ウィリアム・モリス。機械化の進んだ時代に手仕事の復権を主張、活動し「近代デザインの父」とも呼ばれました。そのモリスの思想や、壁紙や内装用布地、家具などの作品約90点を展示紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 光の視覚 サーカス展
  • 2011年7月29日(金)~9月11日(日)

その他、詳細は浦添市美術館Webサイトico_linkでご覧ください。