高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

2011.06.01
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高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.024>
「グレーの森」 浅井忠作
「高校美術2」P.15掲載 泉屋博古館分館蔵
「高校美術2」P.15掲載 泉屋博古館分館蔵
明治洋画界の草創期を考えると、高橋由一は第一世代、浅井忠は、黒田清輝とともに第二世代に位置づけることができます。また、浅井と黒田は、対照的な作風の展開を見せますが、教育面の指導では両者ともに優れ、後世に大きな影響を及ぼしています。
浅井は、安政3年(1856)江戸に生まれ、最初日本画を学びますが、工部美術学校でアントニオ・フォンタネージから洋画を習得します。明治22年(1889)、わが国最初の洋風美術団体の明治美術会を創設し、同会主催の明治美術会展に「春畝」「収穫」(いずれも重要文化財)を出品。脂ぎった褐色を主とする重厚で写実的な画風―脂派(やには)と呼ばれることとなります―を確立しました。
しかし、浅井は、その地点に留まることをせず、さらなる画境の深化を求めてフランスに留学し、そこで風光明媚な地、グレー=シュル=ロアン村に出逢うのです。浅井は、グレー風景を数多くの珠玉の油彩画、水彩画で残していますが、グレーは、日本人洋画家にとって聖地といってもよく、黒田やほかの画家たちも訪れています。
浅井の水彩画技術はとても優れていますが、それは、技巧に走り過ぎるものではなく、対象の真の姿を自己の琴線に共鳴させ、水彩絵の具の持つ透明感を最高度に発揮させて表現できる技術でした。
「グレーの森」は春浅い時期なのでしょう、樹々の多くはまだ芽吹いていません。しかしそれだけに、薄緑色の葉をつけた樹に眼が惹かれ、その緑色が古城のお濠の水面に反映し、たゆたっています。暖かな陽光も感じられますが、この透明感が浅井の水彩画の特質をよく物語っています。
(泉屋博古館分館 分館長 川口直宜)
■泉屋博古館(せんおくはくこかん)分館
- 所在地 東京都港区六本木一丁目1-5-1
- TEL 03-5777-8600(ハロ-ダイヤル)
- 休館日 月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)・展示替え期間・年末年始
※今夏の電力供給状況によっては、変更になる可能性があります。
<展覧会情報>
- 書斎の美術 ―明清の玉・硝子・金工を中心に― 〈特別陳列〉内藤湖南博士旧蔵の中国書籍
- 2011年7月16日(土)~9月25日(日)
展覧会概要
- 洋の東西を問わず、書斎という言葉には、特別な思いが込められた感があります。特に中国においては、書斎=文人の概念と結びつき、その空間は、一種の聖域ともなっています。本展は、その書斎を彩った美術工芸品―玉器など―を展示します。
その他、詳細は泉屋博古館Webサイトでご覧ください。