小学校 道徳

小学校 道徳

道徳ことはじめ 第10号(学年共通)
2018.04.19
小学校 道徳 <No.032>
道徳ことはじめ 第10号(学年共通)
東京都小金井市立東小学校 指導教諭 田上由紀子

今回のテーマは、「評価をどのようにやっていけばいいのか」についてです!

日頃の道徳科の授業の中で評価をどのようにしていけばいいのでしょうか?

前号の「道徳科の評価の目的」「評価の基本方針」を復習してから、考えていきましょう。

「道徳科の評価の目的」

 授業のねらいに即して、児童の「学習状況」や「成長の様子」を把握し、それを児童に確かめさせたり、それをもとに教師自らの指導を評価したりして、結果的に指導方法の改善に努めることが目的である。

「易しく、深く、面白い 道徳科学習指導案作成入門」(後藤忠先生著)より引用

◇評価の基本方針
数値による評価は行わず、記述式であること。
・相対評価はせず、個人内評価であること。
・個々の内容項目ごとの評価ではないこと。

上記の下線部分を考えても、まずは継続的に児童の実態を把握することが一番重要になってきます。また、評価は記述式であることから、子どもの成長を具体的に把握していないと記述するのは難しいことが分かります。

 平成28年度に私は、通信簿の各学期の所見欄に児童一人一人の「道徳の時間の様子」を書きました。1学期は何とか書けるのですが、毎学期となるとかなり苦戦しました。そこで思ったことが3つあります。
 1つは、ねらいをしっかりもって授業をすることです。そうしないと、授業そのものが迷走となり、評価どころの問題ではなくなってしまうことがありました。
 2つ目は、振り返りでのワークシートをファイリングしておくことです。これはとても有効です。しかし、毎時間書かせることができない場合もありました。→道徳ノートの活用が効果的です。(別掲)
 3つ目は、児童の実態を常につかむ努力をすることです。このことは評価する上で最も重要ですが、授業の展開を考える上も、とても大切です。
 4つ目は、1時間の中で全員の評価を行うことは無理だと理解しておくことです。評価の基本方針に「個々の内容項目ごとの評価ではないこと」とあります。1時間の中で着目して見ていく児童3~4人を決め、1年間の中で全員の評価が複数回できるようにしていく工夫をすればよいと考えます。

児童の実態をつかむにはどうしたらよいかを考えてみましょう。

 平成28年度の反省を踏まえ、私が今実践していることを紹介します。年間指導計画をもとに1学期に行う「内容項目」についてアンケートをとりました。

☆これは、ありのままの自分をみつめてみるシートです。今の素直な気持ちを書いてください。
【例】
①時間を守って生活できるほうですか?
自信をもってハイ! どちらかというとそうなかなかできない
②係や委員会の仕事はどんな気持ちでやっていますか?(記述させるスペース)

ここには、5年生の修了式に「こんな自分になっていたい」と思うことを自由に書かせました。

 このアンケートは道徳的諸価値の理解(価値理解、人間理解)に関する実態把握のためのものです。自分に甘い子や厳しい子がいるので、回答は「目安」としてみています。回答は、3択か4択にし、○をつけるものと、内容項目によっては、記述式にしてあるものがあります。この回答は、名簿等を活用し、一覧にしておくと、授業を作る上でも、とても役に立ちます。このアンケートをもとに、授業で意図的に指名したり、児童の発言や表情に特に注目したりすることでその児童の道徳的諸価値の理解の把握に生かすことができます。

自己を見つめるワークシートや道徳ノートの活用も評価に有効です!

 道徳科の授業があった日に自己を見つめるワークシートとは別に、道徳ノートの記入の宿題を出しています。私が使っている道徳ノートは、1回分が5行程度の罫線を引いた枠の中に、その日の道徳の授業について思ったこと、感じたこと、考えたことを自由に書かせています。そこには教材についての思いや主題に対して思ったこと、授業の時の気持ちなどが書いていて、子どもの素直な思いを知ることができます。

では、「学習状況」や「成長の様子」をどのように書けばよいか、参考文例を見てみましょう。

参考:「易しく、深く、面白い 道徳科学習指導案作成入門」(後藤忠先生著)

◇評価の観点
(1)道徳的諸価値の理解(価値理解、人間理解、他者理解)に関して
【学習状況の評価……1年生 A節度・節制「かぼちゃのつる」】
・まわりの人がどんな気持ちで注意をしているか、友達の考えを聞いて、「そうか」とつぶやいた。自分の考えを広げ、価値の理解を深めることができた。
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・友達の考えに頷いたり、つぶやいたりする姿が多くなり、価値についての理解を深められるようになった。

(2)自己を見つめるに関して
【学習状況の評価……5年生 B友情・信頼「友のしょうぞう画」】
・「ぼくは、友達の気持ちを深く考えないで『たぶん、こうだろう。』と勝手に思ってしまうところがある。」と主人公に自我関与して考えることができた。
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・登場人物に自我関与して、自分の関わりで考え、自分自身の今までの行動について振り返り、自己を見つめることができた。

(3)物事を多面的・多角的に考えるに関して
【学習状況の評価……5年生 A正直 誠実「手品師」】
・手品師が友達の電話が来て、「大劇場に行くか」「男の子との約束を守るか」で迷っている場面で、手品師は、男の子との約束を守ると考えたが、他の児童の「夢だった大劇場に行く」という意見にも耳を傾け、真剣に考えていた。
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・判断の根拠は人によって違うことに気付くなど、多面的・多角的に考えるよさを感じていた。

(4)自己の生き方についての考えを深めるに関して
【学習状況の評価……3年生 C家族愛、家庭生活の充実「ブラッドレーの請求書」】
・「今までは面倒だなと思って家の仕事をしていたが、これからは大好きな家族のためにと思って仕事をしていきたい。」と自己の生き方についての考えを深めていた。
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・登場人物に自我関与して、今までの自分を振り返って考えていく中で、自己の生き方について考えを深めていた。

(5)授業への関心・意欲・態度に関して
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・友達の考えに真剣に耳を傾け、自分にはない考え方に出会う学習を楽しみにする姿があった。

(6)学習課題に対する思考・判断・表現に関して
指導要録等の記入例(「成長の様子」の評価)
・友達の話をよく聞き、共感するとうなずく姿が多く見られた。対話的な学びの中で価値についての理解を深めていた。