高等学校 情報

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社会と情報 情報の活用と表現「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~(第1学年)
2020.09.23
高等学校 情報 <No.003>
社会と情報 情報の活用と表現「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~(第1学年)
埼玉県立蓮田松韻高等学校 教諭 長澤昇一

1.はじめに

 前任校の埼玉県立浦和高等学校ではPBL(課題解決型学習)を意識し、作品制作とプレゼンテーション、相互評価を繰り返しながら、生徒の主体性と問題解決能力、また批判的に情報を読み解く力の育成に取り組んできた。たとえば画像や音、映像等のメディアの特性を学習する場面では、基本的なメディアの特性について学ぶとともに、あえて「情報操作」を意図した作品をつくり、その作品を生徒同士で評価し合うなどの実践を展開してきた。
 平成27年公職選挙法改正により、選挙年齢が18歳に引き下げられ、高校生における主権者教育も求められており、政治・経済などの授業で本格的に取り上げられている。情報科でも何かできないかと考え、情報のディジタル化の単元で行うポスター制作のテーマを「選挙ポスターの制作」とし、プロジェクト型学習を意識した授業設計を行った。

2.単元名

情報の活用と表現
「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~
(実施学年:第1学年)

3.単元の目標

・情報のディジタル化の基礎的な知識を理解させるとともにディジタル化された情報が統合的に扱えることを理解させる。
・情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解く力を向上させる。
・問題解決の手法を理解させる。

4.単元の評価規準

ア 関心・意欲・態度

イ 思考・判断・表現

ウ 技能

エ 知識・理解

・表現し伝える活動に対して積極的に取り組むことができる。
・他者のコンテンツを適切に評価しようと努める。

・適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案を企画書にまとめることができる。

・コンテンツを作成するためにコンピュータを活用することができる。
・分かりやすく情報を表現することができる。

・情報のディジタル化の意味を理解できる。
・情報を統合したコンテンツは多様であり唯一の正解はないことを理解する。

5.単元の指導と評価の計画

 本単元は10時間構成である。本プロジェクトの概要を説明し、画像編集ソフトの使い方や情報のディジタル化の基本的な知識を抑えた上で、選挙ポスターを企画し、制作する。合わせてレポートも制作し、発表を行い、相互評価を行うことで、情報には発信者の意図が存在することなどに気付く場面を設けている。

(ア:関心・意欲・態度/イ:思考・判断・表現/ウ:技能/エ:知識・理解)

学習内容・学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・プロジェクトの概要を理解する。
・過去の作品例を見る。
・問題発見/解決策の検討をする。

行動観察
ワークシート
リフレクションシート

2

・画像編集ソフトの練習をする。
・情報のディジタル化の基本的な知識を理解する。
・企画を検討する。

行動観察
リフレクションシート

3

・企画を検討する。(前時の続き)

行動観察
企画書
リフレクションシート

4
5
6

・ポスター/レポートを制作する。
・発表に向けて準備をする。

行動観察
作品
レポート
リフレクションシート

7

・発表/投票/相互評価(グループ)

行動観察
相互評価シート(班)
リフレクションシート

8
9

・発表/投票/相互評価(クラス)

行動観察
相互評価シート(クラス)
リフレクションシート

10

・振り返り

行動観察
プロジェクトのリフレクションシート
リフレクションシート

6.発表、質疑応答、相互評価で目指すこと

 10時間の単元のうち、8時間目と9時間目が作品の発表、質疑応答、相互評価などを通した生徒どうしの意見交換と気付きの時間になる。生徒は相互評価を通じて情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き表現することや、質疑応答を通して情報発信者の考えを適切に引き出し、思考を深めることを経験する。本時の具体的な流れは、次項の表の通りである。

7.本時の流れ(8時間目)

時間

学習内容・学習活動

指導上の留意点

評価の方法

導入
10分

・前時の振り返り(リフレクションシートより)
・発表時の流れを確認する。

・質問することの意義を改めて説明し、積極的に質問することを促す。

・行動観察

展開
35分

・発表/質疑応答/相互評価を行う。(1~6班)
・具体的に記述する。

・質問に対して、誠実に、正対して答えるように促す。
・回答に納得いかない場合は、踏み込んで問い返すよう促す。
・必要に応じて、発表、作品、質疑応答についてコメントする。

・行動観察
・相互評価シート(クラス)

まとめ
5分

・本授業の振り返りをリフレクションシートに記入する。

・今日の授業の振り返りの中で、次回の発表、評価に向けて課題を記述させる。
・評価活動が創作活動へ繋がることに気付かせる。

・リフレクションシート

8.まとめ

 本プロジェクトは、情報のディジタル化の単元に問題解決とメディア・リテラシーの内容を組み合わせたものとも言える。選挙ポスターという題材は、問題の発見や解決策の提案を創造的かつ主体的に行う上で興味深いテーマとなった。生徒は常識にとらわれず自由な発想でストーリーを考え抜き、それを形にする楽しみ(苦しみ)も経験した様子である。相互評価や質疑応答を繰り返す中で、情報受信者は、情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き、論理的に表現することで、情報受信者として成長することができる。また、情報を効果的に分かりやすく伝える情報発信者の成長にも繋がっていると考える。
 「情報Ⅰ」においても「問題解決」をあらゆる単元、場面において繰り返し実践していき、生徒たちの問題解決力の向上を図っていきたい。そして、情報の授業で学んだことを他教科や日常のあらゆる場面で活用できるよう授業設計/計画をしていきたい。

【関連資料】