小学校 社会

小学校 社会

「わたしたちのまちに伝わる祭り」(第4学年)
2023.09.21
小学校 社会 <No.043>
「わたしたちのまちに伝わる祭り」(第4学年)
聖マリア学院小学校 教諭 田中希歩

1.単元名

「わたしたちのまちに伝わる祭り」(第4学年)

2.目標

地域の伝統と文化について、人々の生活との関連を踏まえて理解する。
社会的事象の特色や相互の関連、意味を考える力、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力、考えたことや選択・判断したことを表現する力を養う。
社会的事象について、主体的に学習問題を解決しようとする態度や、よりよい社会を考え、学習したことを社会生活に活かそうとする態度を養うとともに、思考や理解を通して、地域社会に対する誇りと愛情、地域社会の一員としての自覚を養う。

3.評価規準

【知識・技能】

たくさんの時間と大変な思いをかけて準備している様子を的確に読み取り、学習問題をつくり、予想を立てている。
文化財や年中行事に込められた地域の人々の思いや、それらを保存し、受け継いできた人々の工夫や努力を理解している。
聞き取り調査をしたり、資料から的確に読み取ったりして、長崎くんちについての必要な情報を集めてまとめている。

【思考・判断・表現】

文化財や年中行事に込められた人々の思いを考え、適切に表現している。
聞き取り調査や資料から読み取ったことと合わせて、新たな課題を見出し、自分なりにその課題を表している。

【主体的に学習に取り組む態度】

文化財や年中行事に関心をもち、意欲的に調べている。
課題に対して向き合い、解決策を考えることを通して、伝統芸能に対する興味・関心を高めている。

4.本単元の指導にあたって

①教材について
 本小単元では、地域の人々が受け継いできた県内の祭りや年中行事として長崎くんちを取り上げる。380年ほどの歴史をもつ長崎くんちは、長崎県で初めて重要無形民俗文化財に指定され、43の踊り町のうち、その年の決められた踊り町が諏訪神社に出し物を奉納している。現在では出し物の準備期間の長さやお金の問題、後継者問題などの課題も抱えている。
 このように長崎くんちは、長崎県を代表する祭りであること、保存・継承に携わる人々がたくさんいること、そういった人々への調査活動が可能であることから、地域の人々の姿を通して地域の発展やまとまりなどへの願いを捉えることができる教材である。
 長崎くんちをもっと宣伝したり、大人になって実際に参加したりするなど、自分たちにもできることがたくさんあることを考えることで、地域社会に対する誇りや愛情、地域社会の一員としての自覚を育むことができると考える。

②指導上の工夫・留意点
 単元の展開にあたっては、まず「つかむ」段階で長崎くんち当日の太鼓山の動画を提示し、長崎くんちへの興味・関心をもたせる。また長崎くんちの写真や等尺年表、長崎くんちの歴史や踊り町が分かる資料を提示し、長崎くんちに関わる方々の取り組みを紹介することで、地域の方々の長崎くんちへの思いに関する学習問題を設定する。
 「調べる」段階では、長崎くんちを保存・継承するための取り組みについて、長崎くんちに関わる方々に話を聞く活動を取り入れる。ゲストティーチャーを招き、実際に話を聞いたり衣装を見せていただいたりすることで、学習問題に対する予想が正しいかどうかを確かめる。
 「まとめる」段階では、これまで学習してきたことをもとに、予想に対する答えを自分なりにまとめる。気付かなかった見方や考え方に触れ、一人一人が考えをさらに深めることができるように、意見交換の場を意図的に設定していく。
 「広げる」段階では、長崎くんちの課題について一人一人が解決策を考え、意見交換を行うことで、一番実現可能で効果的な方法を選択・判断させ、自分たちも地域社会の一員であるという意識を高めさせる。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容



1

2

○学習問題を設定し、予想する。

○長崎くんちの動画や年表から、関わっている人数の多さや、本番を迎えるまでにどのようなことに取り組んでいるのかなどを知り、長崎くんちの歴史や人々の思いを捉えて、学習問題を設定する。

【学習問題】
長崎くんちに関わる人たちは、どのような思いでくんちをつくり上げているのだろうか。

○担ぎ手や裏方などそれぞれの思いを考え、自分なりに根拠のある予想を立てる。

【予想】
・伝統を守り、受け継いでいきたい。
・もっと多くの人(県外や外国の人など)に知ってもらいたい。

3

○予想について話し合い、調べる計画を立てる。

○予想を順番に発表し、全員の予想が出た時点で、分類して仲間分けする。
○全員で同じ予想をもって学習を進めていけるように、学級で予想をいくつかに絞る。
○予想が正しいかどうか調べる方法を考えて、「思い」を知るためにはどの方法が一番適しているかを選択する。
・教科書や図書室の本で調べる。
・町でインタビューする。
・長崎くんちに関わっている人に話を聞く。

調

4

○予想が正しいかどうか調べる。
・ゲストティーチャーへの質問を考える。

○ゲストティーチャーとの質疑応答に備えて、長崎くんちへの思いにつながりそうな質問を考え、役割分担する。

5

○予想が正しいかどうか調べる。
・ゲストティーチャーに質問し、予想が正しいかどうか確かめる。

○ゲストティーチャーに伝統文化の継承と保存に向けての工夫や努力、今後の課題について聞き、予想が正しいかどうか確かめ、まとめる。
○質疑応答を通して、長崎くんちに関わる人の思いをより深く知る。




6

○中心概念をまとめる。
○長崎くんちへの「思い」の中には、今後の課題も挙がっていることを確認し、解決策を考えるきっかけとする。

○予想の答えや、質疑応答で新たに分かったことを、自分なりの学習問題の答えとしてまとめる。

【中心概念】
長崎くんちに関わる人々は「伝統を守りたい」「町のつながりを大切にしたい」「多くの人に知ってもらいたい」といった思いをもって長崎くんちに参加している。
でも、資金や後継者などの心配も出てきた。



7

○長崎くんちの課題の一つ「人手不足・後継者問題」の解決に向けて考える。

○解決策を個人、ペアで考える。

○前時であがった課題をもとに、解決策を個々に考える。
○「自分だったら、どんな策があれば長崎くんちに出たいと思うか」という視点で、解決策を考える。
○個人で考えた解決策をペアで共有し、より効果的な解決策を考え選ぶ。
○ペアどうしの意見交流を通して、気付かなかった見方や考え方に触れ、課題解決への意欲を高める。
○ペアどうしで決めた解決策をカードに書く。

8

○解決策を発表する。

○一番実現可能な解決策を選択し、理由とともに発表する。

○ペアで決めた解決策を発表し、同じような解決策を考えたペアは、付け加えで意見を発表する。
○全部の解決策が出た時点で、それぞれの解決策に対して反論や疑問を投げかけ、それに対してさらに考えを答えることで、解決策の説得力を強くする。
○全体で出てきた解決策の中で、一番実現可能で効果的な解決策を選び、理由とともにノートにまとめる。
○効果的な解決策を踏まえて、自分自身にもできることはないか、長崎くんちへの関わり方を考える。

6.本時の学習

①目標
 長崎くんちの課題について、自分の考えを発表したり、友だちの話を聞いたりして、一番実現可能で効果的だと思う方法を選択・判断することができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

○前時の学習を振り返り、新たな問題を確認する。

○前時前時までに作成した資料を提示しておき、想起しやすいようにする。
○授業開始前の1分間で「振り返り活動」ができているか確認し、授業開始とともに全体の「振り返り活動」ができるようにする。
○「人手不足・後継者問題」の課題解決のための話し合いを行うことを伝え、【新たな学習問題】として確認する。

※掲示資料
○ゲストティーチャーに聞いた話の内容
・参加、見る
・グッズ、撮影
・出し物の勉強

【新たな学習問題】
踊り町の人手不足を解決するために、どのようにしたらよいだろうか。

○長崎くんちの課題について、個人の考えをもとに、ペアで話し合った解決策を発表する。
「人手不足・後継者問題」
・他の町にも募集をかける。
・体験活動を取り入れる。
・宣伝活動をする。
・テレビ放送。
・芸能人を呼ぶ。
・ポスターやチラシを作る。

○解決策を書いたカードを掲示しながら、ペアで役割分担をして協力して発表させる。
○友達の発表と自分たちの考えを比較しながら聞くように声をかけ、同じような解決策を考えたペアは、付け加えで発表をさせる。
○意見を比較しやすいように、分類して構造的に板書をする。

○おくんちとは
・388年前から
・10月7日~9日
・語源
・43の踊り町
・7年に一度

○解決策を比較し、実現可能かどうか考えながら話し合う。(全体)

○課題解決の方法として実現的かどうかを考えながら、反論や疑問を考えるように促す。
○「~さんペアの解決策について、意見があります。」と指定することで、どの解決策への意見なのかをはっきりさせる。
○話し合いの中で出た意見を、項目ごとに教師が板書して、意見を比較しやすくする。

○前時までのまとめ
・多くの人に知ってほしい
・「自分たちの町の伝統を守り、受け継いでいきたい」という思いをもってくんちをつくり上げている

○長崎くんちをこれからも長く受け継ぐ方法として、一番実現可能で効果的なものを選択する。(個人)

○出た意見を踏まえて、踊り町の人手不足を解決するための方法として、一番実現可能で効果がある解決策は何かを問い、ネームプレートを動かして自分の考えをはっきりさせる。
○選んだ解決策について理由を加えて発表させ、その意見を聞いたうえで、もう一度ネームプレートを動かす時間をとる。
○全員の意見が出た時点で、解決策として有効なものを全体で確認する。一つに絞るのではなく、自分たちの考えとして認め合う。

○自分にできることは何かを考えて、学習の振り返りをする。

○これから大人になっていく中で、自分自身にもできることはないかを考え、自分たちも受け継いでいく一員であることを自覚させる。

③評価

長崎くんちを受け継いできた人々の思いや努力を理解している。
意見交流を通して、一番実現可能で効果的な方法を選択・判断することができる。
長崎くんちを受け継いでいく一員であるという自覚をもって、課題に対する解決策を考えている。

④板書計画

資料

写真① ゲストティーチャーに質問して、予想が正しいかどうか確かめる。

写真② 課題解決の方法として、一番実現可能で効果的なものを選択する。