小学校 図画工作
小学校 図画工作

提示型デジタル教材『みる美術』を使って
※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.基礎データ
題材・単元名 |
○○なシーサーをつくる。 |
|
---|---|---|
時間数 |
5時間 |
|
題材・単元の |
・主題をもつことによって、自分や身近な人のことを考える。 |
|
授業環境 |
活動環境 |
美術室 |
教材や用具 |
粘土 |
|
コンピュータ |
使用デジタル教材 |
『みる美術』 |
OSバージョン |
Windows XP |
|
使用周辺機器 |
プロジェクタ |
|
その他 |
できれば、電子黒板やデジタルテレビの方が望ましい。 |
2.活用事例及び展開
①ねらい
手の感覚を十分働かせて粘土による立体をつくる。今回は、材料から発想するのではなく、「○○なシーサーをつくる」といった主題を決め、シーサーに限定することでそれに向かってどのように試行錯誤をすることができるかをねらいとする。
②本デジタル教材利用の意図
導入の段階で児童の発想が生まれてくるように、写真による鑑賞をして興味をもたせる。
なお、鑑賞するために使う写真であるが、自分が撮りためているコレクションを活用する。
また、美術にかかわりのある者は、日頃から一般的にはゴミになりそうなものでも授業に役に立つかもしれないと集めたり、興味があるものについて写真をとっておいたり、新しい素材を試してみたりと収集癖が少なからずある。しかし、ためておいた写真等は、的を絞り込んで扱わないと焦点がぼけてしまい有効に活用できないことが多い。
そこで、今回は『みる美術』の「マイコレクション機能」を活用して授業を組み立ててみた。
③評価について
◆造形への関心・意欲・態度
身近な場所に立体作品があることを知り、自分らしい見方や感じ方で味わおうとしている。○○から守ってくれるといった主題を考え、自分の考えたイメージを粘土で形にすることを楽しもうとしている。
◆発想や構想の能力
自分の表したいことを、粘土でどのような形にするかを考えている。
◆創造的な技能
粘土の特徴を捉え、つくる順番を考えながら工夫してつくっている。
◆鑑賞の能力
感じたことを話すなどよさや面白さなどを感じ取っている。
④指導計画
学習活動の流れ |
指導上の留意点、評価方法※ |
||
---|---|---|---|
<鑑賞> 30分 |
|||
日本の建造物には、災いから建物を守るために獅子や狛犬などが置かれている。 |
まず、先生が興味をもち、日頃からアンテナを広げておくことが必要。 |
||
<構想をねるためのスケッチ> 60分 |
|||
|
自分の主題を決める。 立体であるため、見通しをもってつくれるように構想を練る。 ※スケッチの中で、様々な表し方のよさを見る。 |
||
<粘土で工夫しながらつくる> 90分 |
|||
|
焼成しない粘土であるため、土粘土のような手応えでないのが残念。特に接着については、「どべ」で細かい部分を接着するだけでは弱いため、粘土をなじませせるような技術面についてアドバイスをする。 ※大まかなパーツをつくっておいてからはりあわせたり、胴体が長くなりすぎて、短く切ってつなげたり、先のとがったもので毛並のような筋をつけたりしている工夫の過程を見る。 |
||
<教室前の廊下に展示する。> |
3.本時の展開
①目標
児童が形のイメージを広げられるようにするため、様々なことを見つけられるようにする。
②本デジタル教材を活用した授業の展開
主な学習活動・内容 |
指導の工夫や |
---|---|
準備 |
|
導入 |
|
○近くの熊野神社にもあるよ。 |
写真を撮ったときの、季節や場所の光、風の感じなどを交えて紹介する。 |
●なにか見つけたことがあったら教えて。 ○なにか頭の毛がカールしている。 |
児童は、自分の思考の回路に写真をつなぎ、自分の経験の中から「○○で見た」などの事実や「○○のように見える」などの見立てをしながらイメージをふくらませていく。 ※ |
○カールの形が波みたい。 |
全体像の写真が左側にあるために、児童が見つけた箇所がどこなのか、児童全員と「もうちょっと右」などと言いながら具体的に共有することができる。 自分が感じたイメージの発言が見られたら、そこから「どうしてそう思ったか?」などと対話を深めていく。 ※ |
●次を見ましょう。実は、狛犬はもう一頭いて、向かい合って建っているのね。さあ、似ているけど、ちょっと違うところを見つけられるかな。 |
一対の写真を比べることにより、今度は違いを見つける。 |
○左側は口を開けていて、右側は口を閉じている。 |
※左右の両方に |
●何で口を開けているのと閉じているのがあるのでしょう。 |
具体的に「なんて言っているのか。」を聞くと、「あー」じゃないかと言葉がでるので、場合には阿吽の話などを取り混ぜる。 |
●次に口を両方開けているのを見てね。これは、東京大学の東洋文庫の前で見つけたものです。 |
○鼻が豚みたい。 |
●次は、出雲で見つけたものです。 |
○耳がたれているからかわいい。 |
●次は、沖縄の首里城の入り口で見つけたものです。 |
※沖縄では、シーサーと呼ばれている。 |
●最後に沖縄の博物館・美術館で見つけたものです。 |
※沖縄の一番古いシーサーで「シーシ」という。風化してぼろぼろだが、大切に博物館の庭に保存されていることも伝えたい。 ※日本各地にある狛犬やシーサーについて、いろいろな形があること知ってほしい。 |
※ ※大きさをくらべたいときは、おおよその実物の大きさを「高さ(比較用)」に入れておくとくらべることができる。 |
|
●いろいろ見つけられましたね。日本中にあるのも分かったよね。それでは、何のためにあるのでしょう。 ●そこで、これから、自分のシーサーを粘土でつくります。 |
<評価> ※対話をしている中で、参加していればおおむね満足と捉える。大事なことは、児童の関心を引き出し意欲をもたせられたかどうかという教師側の問題。見せる作品等の選び方や、間合い、順番はどうだったか反省する。 |
③指導のポイント
「シーサーをつくりましょう」といっても、見たことがない子もいる。たいてい教師は過去の作品をもってきたり、教師が沖縄でシーサーつくりの体験をし、そのスキルを児童に教えたりして、出来映えを重視してしまうことが多い。ここで大事なのは、児童の関心をどう引き出すかであると考える。日頃、教師自身が収集したコレクションは、片寄った見方を押しつけるのではないかと思われそうだが、様々な視点から足を運んで集めたものは魅力的なものであるとも言える。児童の発想を膨らまし引き出すためには、教師の柔軟なものの見方や考え方が必要である。また、児童の日常にも面白い立体がたくさんあることを知り、自分の見方を通して感じることの大切さを育てたい。
4.感想
『みる美術』の「マイコレクション機能」は、操作がシンプルなだけに使いやすい。今回のように有名な作家の作品ではなく、日頃見つけたコレクションを生かしたり、児童の作品をコレクションして鑑賞できるようにしたりするのも有効であると考える。