高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「相馬の古内裏」 歌川国芳作
2010.07.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.013>
「相馬の古内裏」 歌川国芳作
美・創造へ1」P.9掲載 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵

高校教科書美術館vol13

錦絵(大判三枚続き)/36.7×76㎝/1844‐48ころ

 相馬の古内裏は、相馬小次郎こと平将門が下総国猿島郡に内裏を模して建てた屋敷が、将門の乱の兵火で廃屋となったもの。将門の娘、滝夜叉姫(たきやしゃひめ)が父の遺志をつごうと、この廃屋で妖術を使って味方を募り、やがて妖怪が出没するようになりました。噂を聞いた大宅太郎光国(おおやのたろうみつくに)が妖怪退治に向かい、滝夜叉姫と対決する場面がこの絵には描かれています。
 これは文化3年(1806)に出版された山東京伝(さんとうきょうでん)の読本『善知安方忠義伝』(うとうやすかたちゅうぎでん)に載る話を題材にしていますが、原作では複数の骸骨が現れて合戦を始めるところを、国芳は1体の巨大な骸骨に置き換えています。しかも横に3枚の紙を並べたワイド画面を大胆に横切って描く、その奇抜な構図には驚かされます。破れた御簾越しに腰をかがめて登場する骸骨は、自分でもその大きさを持て余しているようで、不気味さの中にもとぼけた愛嬌があります。骸骨は解剖学的に正確な描写であることから、西洋の医学書の挿絵を参照したのではないかと言われています。
 作者の歌川国芳(1797~1861)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師。出世作は水滸伝に取材した武者絵だったので、「武者絵の国芳」とよばれて人気を集め、物語や歴史上の人物、西洋風な表現を駆使した風景画、美人画などにも筆をふるいました。 
 天保の改革で、浮世絵にもさまざまな規制がされると、国芳はユーモアに富んだ風刺画や明るい笑いを誘う戯画といった、規制にふれない新機軸を打ち出して話題をさらいます。つねに新奇な趣向を取り入れ魅力的な世界を作り出した国芳のバイタリティーは、権力におもねることのない反骨の精神と人を喜ばせたいという情熱に支えられていたのです。

(山口県立萩美術館・浦上記念館学芸課主任 吉田洋子)

山口県立萩美術館ico_link

  • 所在地 〒758-0074 山口県萩市平安古586-1
  • TEL 0838-24-2400
  • 休館日 月曜日 ただし7月19日(祝・月)は開館

<展覧会情報>

  • 棟方志功 祈りと旅 
  • 2010年6月12日(土)~8月15日(日)

展覧会概要

  • 民芸運動の思想に影響を受け、神話的あるいは仏教的な主題をダイナミックに表現して、国際的な評価が高い版画家、棟方志功(1903~1975)の板画・肉筆画・挿絵・書・陶芸など多彩な作品を紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 陶芸館開館記念Ⅰ 龍人伝説への道 三輪休雪展
  • 9月11日(土)~10月24日(日)

その他、詳細は山口県立萩美術館・浦上記念館Webサイトico_linkでご覧ください。