高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「デイヴィッド・ホックニー展」
2023.09.26
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.067>
「デイヴィッド・ホックニー展」
東京都現代美術館

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 © David Hockney
左《両親》1977年 テート
右《ジョージ・ローソンとウェイン・スリープ》1972-75年 テート 撮影:編集部
 高校の美術の教科書ではデイヴィッド・ホックニーの作品を数多く掲載しています。今回は東京都現代美術館で2023年7月15日から11月5日まで開催されている「デイヴィッド・ホックニー展」に合わせて、学芸員の楠本愛さんにホックニーの作品の特徴や魅力、展覧会の構成などについてお話をお伺いしました。

――教科書では、作品を展示することの意義や、美術館を構成するデザインなど、展覧会や美術館に関する内容を取り扱っています。デイヴィッド・ホックニー展は、国内27年ぶりの大型個展で、約120点の作品を取り扱っていますが、この展覧会をつくる上で工夫したところや、ポイントを教えてください。

楠本:デイヴィッド・ホックニー(1937年、英国ブラッドフォード生まれ)は名実ともに現代を代表する画家と称されています。今回の展覧会では、1960年代の英国・ロンドンや米国・ロサンゼルスで制作された代表作から、近年の英国・イースト・ヨークシャーやフランス・ノルマンディーで制作された風景画まで、60年以上にわたる画業を網羅的にご紹介しています。

 東京都現代美術館は「現代・同時代(Contemporary)」、言い換えると「今」という時代と関わりのある芸術作品と出会える場所です。本展覧会も現存作家の個展のため、ホックニーが「今現在、世界をどのように見て、どのように描いているのか」をご紹介することによって、作家と同じ時代を生きる私たちひとりひとりが目の前にある世界を見つめ直す機会となることを願っています。

デイヴィッド・ホックニー 《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》2011年 ポンピドゥー・センター © David Hockney Photo: Richard Schmidt

――「高校生の美術1」では、ホックニーが1970年に発表した静物画《ピーマンと3本の色鉛筆》や、1982年に写真を組み合わせて制作した、《ぼくの母、ボルトン修道院、ヨークシャー、1982年11月#2》といった作品を掲載しています。ホックニーは絵画や写真などを用いて様々な表現を行っていますが、今回の展示におけるホックニーの作品の特徴や、見どころを教えてください。

楠本:今回の展覧会では、油彩画、版画、写真、iPad作品など、さまざまな技法や表現で描かれたホックニーの作品をご紹介しています。《ぼくの母、ボルトン修道院、ヨークシャー、1982年11月#2》と同じ「フォト・コラージュ」と呼ばれる100枚以上の写真を貼り合わせた作品《龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都》(1983年 東京都現代美術館)が展示されています。また、本展の見どころは近年制作された幅90メートルにもなる風景画《ノルマンディーの12か月》(2020-21年 作家蔵)です。

デイヴィッド・ホックニー 《龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都》1983年 東京都現代美術館 © David Hockney Photo: Richard Schmidt

――学校現場では、ICTを用いた活動が急速に増えてきています。ホックニーも2010年からiPadを用いて制作を始めたとのことですが、制作の背景や、鑑賞のポイントなどを教えてください。

楠本:ホックニーは「絵画」という歴史と伝統がある分野で仕事をするなかで、「どうすればこれまでにない絵を描くことができるか」ということを長年考え続け、さまざまな探求を重ねてきました。そのため、2010年に発売されたiPadをすぐに入手し、絵を描きはじめるということは、作家にとって自然な流れでした。ホックニーはiPadを戸外に持ち出して、多数の風景画を制作しました。本展覧会では大きなサイズの作品が展示されているため、iPad特有の生き生きとした色彩や筆跡をじっくりと細部までご鑑賞いただけます。

デイヴィッド・ホックニー 《ノルマンディーの12か月》(部分)2020-21年 作家蔵 © David Hockney

展覧会情報

■「デイヴィッド・ホックニー展」
会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
公式サイト:https://www.mot-art-museum.jp/hockney
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般2300円  大学生・65歳以上1600円  中高生1000円 小学生以下無料

【デイヴィッド・ホックニー作品 教科書掲載情報】

  • 令和4年度版「高校生の美術1」p7.
    ピーマンと3本の色鉛筆[色鉛筆・紙/35.5×43cm] 1970
  • 令和4年度版「高校生の美術1」p13.
    ぼくの母、ボルトン修道院、ヨークシャー、1982年11月#2[コラージュ(写真)/120.5×70cm] 1982