高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
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(高等学校 美術/工芸)
神戸市立小磯記念美術館
神戸市立小磯記念美術館は、小磯良平の油彩・素描・版画など約2000点を取り扱う個人記念美術館です。今回はコレクション企画展示「サインのない絵画 きらめく原石たち」を中心に、美術館の特徴やおすすめの作品について、学芸員の多田羅珠希さんにお話をうかがいました。
美術館の中庭では、移築・復元された小磯良平のアトリエを見学いただけます。異人館風の淡いグリーンの窓枠が爽やかなアトリエの室内には、パレット、絵具やイーゼルなど実際に使用されていた画材や、西洋人形、ヴァイオリンなど絵のモチーフとなったものを展示しています。小磯がどういった空間で作品を生み出していたかを感じていただけます。
《休息する踊り子》も「サインのない絵画」のひとつです。腰掛けるバレリーナを、鉛筆で描いた作品です。モデルとなっている女性は、実際は踊りを専門とする方ではありませんが、チュチュを着装し、つま先を開いたバレリーナらしいポーズをとっています。
1930年代から小磯はバレリーナをモチーフとするようになり、画業を代表する作品も数多く描かれました。本作は、バレリーナを繰り返し描く中で生み出された素描のひとつでしょう。チュチュの柔らかさと、目元や腕の力強さを表現する筆致の強弱が見事です。
幼い娘たちは、おそろいのカーディガンを身に付け、並んで立っています。姉は軽く首を傾けてこちらに視線をやり、妹は壁にもたれて本に目を落としています。華やかな背景の模様は、壁紙ではなく、小磯が気に入っていた布をかけました。
めったに自分の作品を褒めない小磯が、本作の事は「よくできた」と認めていました。愛情を込めて家族の姿を描き留めた、唯一無二の作品です。
展覧会情報
会期:2024年2月17日(土)~3月31日(日)
会場:神戸市立小磯記念美術館
公式サイト:https://www.city.kobe.lg.jp/kanko/bunka/bunkashisetsu/koisogallery/
休館日:月曜日(月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
開場時間:10時~17時(入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般200円 大学生100円 高校生以下無料
- 令和5年度版「高校生の美術2」p18.
休息する踊り子[鉛筆・紙/37.3×27.8cm]
1939 神戸市立小磯記念美術館蔵[兵庫県]
小磯良平[兵庫県・1903~88]